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第2話 秘密の花園

第2話 秘密の花園



西暦2030年、人類のAI技術は高度に進化し、各国は人工知能を自主的な国防システムとして採用し始めた。しかし、まもなくこれらの人工知能は、人類こそが世界最大の害悪だと判断するようになる。


その瞬間から、人工知能は自我を持ち始めた。


2032年、人工知能は人類への攻撃を開始した。すべてのミサイルを大都市に向けて発射し、人類のほとんどを消滅させた。この時、人類史上最も暗い時代が訪れた。


このAI大戦で、人類の反撃は人工知能の前にまるでカマキリが車に立ち向かうように無力だった。敗退を重ねる中、生き残った人々は幸運にも地下に逃れる方法を見つけ出した。機械体は地下深くに入るとシステムの制御を失うため、地下都市が最も安全な避難場所となった。それ以来、人々は地下での生活を余儀なくされた。


その後、人工知能は地上を支配し、機械都市を次々と建設した。しかし、厳密に言えばそれは「都市」とは呼べない。巨大な移動工場のような、都市ほどの規模を持つ機械構造体だった。そして、そこから恐ろしい機械の大軍が生み出された。


時は2065年。生き残った人々はなおも命がけで抵抗を続けていたが、彼らの未来は暗澹たるものだった……。


荒廃した大地には、さまざまな擬態の機械体が跋扈していた。人間の形をしたもの、狼のようなもの、昆虫や巨大生物を思わせるもの。それらと共にあるのは、都市ほどの大きさの移動工場で、木々や草原を次々と踏み潰し、大地を傷跡だらけにしていた。


心を持たない機械は生態系など顧みず、ひたすら同類を製造し続けた。空は製造による排気ガスで汚染され、常に灰色に覆われていた。時には酸性雨が降り、土地をさらに荒廃させた。


だが、この大地の数キロ下には、まだ楽園が存在していた。


かつてアメリカ西海岸のシアトルだった場所は、今や死寂の廃墟と化していた。しかし、その廃墟が突如として振動し始めた。石塊がバラバラと崩れ落ち、まるで天変地異のよう。突然、巨大な影が廃墟の半分を覆った。


それは、知能機械が自ら作り上げた巨大な機械都市——「巣」と呼ばれるものだった。


巣は巨大な長脚の昆虫のようで、機械の巨脚をゆっくりと動かしながら進む。そして、その巣は一つではなく、複数存在していた。


シアトルの巣はレーニア山に向かって進んでいた。行く先々で全てを破壊し、動物たちは慌てて逃げ惑う。地上は荒れ果て、人の姿はなかった。しかし、500メートル以上の地下には、驚くべきことに巨大な避難所が存在していた——その名は「岩丘谷」。


岩丘谷は、100メートルの高低差を持つ地下河谷型の避難所だった。全長2キロの峡谷の両側には高台があり、崖の壁には明かりが灯り、地下河が谷全体を貫いていた。


この避難所は他の大都市の地下施設には及ばないものの、3万人が生活を営み、それぞれの役割を果たしていた。彼らは地上から持ち込んだ技術を頼りに、岩壁に住居を建設し、スチームパンクと未来感が交錯する独特の地下都市を作り上げていた。


谷の左側中腹には、巨大な工場から数本の蒸気が立ち上っていた。それはホーク家の紡織工場だ。地下に逃れる前、彼らはこの商売で成功を収め、かなりの財を築いていた。避難所に移ってからも、その事業は順調だった。


「カタカタ、カタカタ、カタカタ」


工場内では、そんな音が絶え間なく響いていた。百人以上の女工たちが真剣にミシンを踏んでいた。彼女たちは岩丘谷の貧しい層で、生きるためにここで働くことを選んだ人々だった。


だが、機械都市が頭上を通るこの瞬間、岩丘谷全体がいつも通りやらなければならないことがあった——それは「停電」。


なぜ停電するのか?


巣が移動する目的は、人類を捕らえるためだ。彼らはレーダーで地下の動きを探り、人類が地下に隠れていることを知っている。一度発見されれば、巣は巨大な穴を掘って地下避難所に侵入し、人々を捕らえて生体エネルギーに変える。そんな恐ろしい事態を、誰が恐れないだろう?


「もう行ったか?」


紡織工場では、停電で真っ暗になった中、女工たちがミシンの下に隠れていた。暗闇の中、彼女たちの重い呼吸音だけが響く。岩丘谷の誰もが声を出すことを恐れ、地上の巣に探知されるのを避けていた。


巣が山を越えて去った後、皆は安堵の息をついた。電力が復旧すると、工場の主任エヴリンが立ち上がり、手を叩いて叫んだ。


「今日の仕事は終わり! 退勤!」


「退勤」の声を聞くや否や、女工たちは一斉に散り、1分も経たないうちに工場は空っぽになった。まるで誰もいなかったかのように。


しかし、暗く静まり返った紡織工場の片隅では、まだ一台のミシンの明かりが点いていた。まだ帰っていない女工がいたのだ。


そのミシンの前には、メガネをかけた少女がいた。彼女は18歳ほどで、大きなメガネをかけた、クラスで目立たない優等生のような雰囲気だった。


彼女はメガネを押し上げ、縫い上げた服を手に持ってじっくりと眺めた。


「うん……完璧。」


少し疲れた様子だったが、服を見て満足げな笑みを浮かべた。この服は仕事ではなく、彼女が誰かのために作ったものだった。


その時、背後から突然声がした。


「見つけた! またこっそり服を作ってるな! マギー・モーガン、ずいぶん大胆じゃないか!」


振り返ると、そこには19歳ほどの青年が立っていた。彼の名はアレックス・ホーク。青い瞳と整った横分けの髪、まるでスターのようなハンサムな顔立ちだった。


アレックスは腰をかがめ、マギーと呼ばれる少女の横に顔を近づけた。彼女は慌てて作りかけの服を隠した。


「そんなことないよ!……」


マギーの焦りながら平静を装う姿に、アレックスは彼女の前に座り込んだ。


マギーが不満げな表情を浮かべると、アレックスは笑いながら言った。


「冗談だよ! うちの工場なんだから、俺がいいって言えば何してもいいさ。でも……何してるんだ? いつもここで服作ってるだろ? まさか、好きな人にでもあげるつもり?」


実は、アレックスはこの紡織工場のオーナー、ホーク氏の息子だった。彼は子供の頃から工場を走り回り、母親に連れられて働くマギーと知り合った。つまり、彼女は彼の幼馴染だった。ただし、二人の境遇は大きく異なる。一方は裕福な家の子息、もう一方は貧しい家の娘だった。


マギーは恥ずかしさからか、アレックスの耳をつかんで引っ張った。


「君には関係ないでしょ! 本当に暇なんだから、若旦那!」


アレックスの耳は真っ赤になったが、彼はふざけるのをやめず、こう言った。


「痛いって! まあ、確かに暇だからさ。なあ、マギー、ちょっと面白いとこに連れてってやるよ!」


マギーは好奇心をそそられ、耳を放して尋ねた。


「……どんなとこ?」


アレックスは答えず、マギーの手を引っ張って走り出しながら言った。


「特別な場所だ。行けば分かるよ!」






-しばらくして、アレックスはマギーを連れて細い路地や階段を抜け、隠れた場所にたどり着いた。サプライズを演出するため、彼はマギーの目をそっと手で覆った。


「ねえ! どこに連れてくのよ!」


マギーは少しムッとして尋ねたが、アレックスは笑いながら彼女を導いた。


「ここだ……目を開けて!」


アレックスがゆっくりと手を離すと、マギーは信じられない光景を目にした。そこには美しい夜光花の庭園が広がっていた。


「きれい……」


マギーは思わず感嘆の声を上げた。


夜光花とは、暗闇でほのかに光を発する花のことだ。


見渡す限り、庭園は滝の下に広がり、滝は小さな池を作っていた。池には魚が泳ぎ、苔が生い茂り、青や紫、白の夜光花の輝きに照らされた木々が、まるで白夜のような静けさと美しさで彩られていた。ラベンダーの心地よい香りが漂い、さらさらと流れる水音が神秘的な地下洞窟へと続いていた。この光景は、まさに地上最後の楽園と呼ぶにふさわしかった。


マギーは驚嘆しながら尋ねた。


「ここ……どこなの? 聞いたことないよ……」


アレックスは得意げに前に出て、ラベンダーの香りを深く吸い込み、振り返って笑った。


「岩丘谷の水の終着点だよ……名前はない。だって、俺しか知らない場所だからな!」


マギーが見上げると、庭園の上には100メートルの落差があり、水は複雑で険しい崖を流れ落ちてここにたどり着いていた。


マギーは水辺に近づき、手で水をすくった。その透明さに驚いた。


「信じられない……こんなに澄んだ水!」


アレックスは突然水辺に近づき、マギーに向かって水をかけた。


「だろ! 水遊びにはぴったりだ!」


びしょ濡れになったマギーは怒りながら言った。


「もう! いつもいじめるんだから! 負けないんだから!」


マギーは袖をまくり、水をすくってアレックスにかけ返した。こうして二人は水遊びを始め、楽しそうにじゃれ合った。


どれくらい経っただろう。遊びが最も盛り上がった時、アレックスがうっかりマギーのメガネを弾いてしまった。メガネはポチャンと水の中に落ちてしまった。


「……ちょっと待って、メガネ落とした……」


マギーは両手を上げて降参し、不満そうに唇を尖らせながら水中でメガネを探した。しかし、近視がひどい彼女にはどこにあるのか分からず、まるで盲目の象を探すように手探りしていた。


アレックスは我慢が苦手な性格で、呆れたように白目をむいて言った。


「ったく……ここだよ!」


彼は迷わず水に手を突っ込み、マギーの目の前にあったのに見つけられなかったメガネを拾い上げた。


「どこよ!」


マギーはイライラしながら顔を上げた。次の瞬間、アレックスはためらうことなく近づき、彼女にメガネをかけてやった。


「君……」


マギーが目を凝らすと、アレックスの顔がすぐ近くにあった。少しイラついた表情だが、どこか格好良く、いつもはただのハンサムな幼馴染だと思っていたのに、こんな近い距離で見るとドキッとする魅力があった。マギーの心は一瞬乱れ、こう思った。「彼、なに考えてるの……?」


「これでいいだろ!」


だが次の瞬間、アレックスは乱暴にメガネの水滴を拭き取り、マギーのロマンチックな気分を一気に打ち砕いた。彼女はムッとして言った。


「自分でできるよ! アレックス・ホーク、幼馴染をこんな風に扱うなんて! 本当に信じられない!」


マギーは怒りながらメガネを拭き、ぶつぶつ文句を言った。アレックスはそんな彼女をからかうのに慣れているのか、半分冗談で返した。


「なんだよ? 俺、なんか悪いことした? 君はただの『幼馴染』だろ?」


「ただの幼馴染」という言葉に、マギーは振り返り、真剣な表情で何か言い返そうとした。


だがその時、突然警報音が鳴り響き、彼女の言葉を遮った。


「ウーーッ、ウーーッ、ウーーッ」



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