第18話 ルーザー戦術
第18話 ルーザー戦術
パトカーのような警笛が街全体に響き渡り、知能機械蜘蛛や機械生体兵が音の方向に引き寄せられ始めた。
「機械蜘蛛やロボットが音に釣られてるみたいだ……」
リオがその様子を観察し、アナも同じ光景を見てリオに視線を向けた。
「なら、突撃するよ! 準備はいい!?」
アナは振り返り、第4小隊の残り4人を見た。リオは銃を構え、軽傷の隊員が重傷者を背負っている。アナは迷わずドアを開け、リオと共に先頭に立ち、負傷した2人を守りながら街を移動し始めた。
警笛は街のあちこちで鳴り響き、知能機械たちは混乱して右往左往していた。一体何が起こっているのか?
空を切り裂くように、2匹のトンボのようなものが街を飛び回っていた。それが答えだ――小型ドローンだ。
市街地から少し離れた丘の上、木の陰に隠れた2つの人影がドローンを操縦していた。ディランとジョンだ。
2時間前、ディランとジョンはバックパックからトンボのようなドローンを取り出し、皆に見せた。それは彼らが自作したものだった。反抗軍に入る前、彼らは機械いじりが趣味だったが、家族のために仕方なく反抗軍に加わったのだ。
「ほら、言っただろ! これで殺人マシンを引きつけられるって!」
ディランとジョンはドローンが知能機械の注意を引きつけ、市街地から遠ざけることに成功し、互いにハイタッチした。これが作戦の第一歩だ。第二歩は、アレックスと他のメンバーが反対側から市街地に潜入することだった。
「急げ!」
第6小隊の残りはチャドの指揮で身を低くし、互いにカバーしながら家の影を利用して市中心へ進んだ。アレックスは通信機を取り出し、次の行動の準備をした……。
「シュッ!」
市中心では、牙を剥く機械蜘蛛が襲いかかろうとした瞬間、正確な銃弾がその動力中枢を貫いた。続いて燃焼矢が飛来し、爆発的な炎を巻き起こした。リオとアナの射撃技術の精妙さが光る瞬間だった。
負傷した第4小隊の隊員は、反抗軍のエースであるアナとリオの護衛の下、慎重に市街地を脱出する方向へ進んだ。
移動中、アナがふと軽い口調で言った。
「さっきの射撃、かなり良かったけど、私にはまだ及ばないかな……」
リオは泣き笑いのような表情で苦笑した。
「仕方ないよ。ある人が、自分より射撃が上手い男を嫌うからな……」
アナはその言葉の意味を理解し、ため息をついて何か言い返そうとした。だが、突然、横から猛烈な銃弾の雨が降り注ぎ、2人は建物に身を隠した。
リオがこっそり様子を窺うと、状況はかなりまずいものだった。
「くそ……やばいぞ……」
50メートル先の通りには、40体近い知能骸骨ロボットが重機関銃を手に迫ってきていた。ドローンに引きつけられず、輪番でアナたちの隠れる建物に猛烈な射撃を浴びせ、逃げる隙を与えなかった。
「バババババ!!」
建物は蜂の巣になりかけていたが、アナとリオは諦める気はなかった。2人は協力して骸骨ロボットを倒す策を考え出した。
骸骨ロボットの猛射の中、建物の屋上から草の塊が飛んできた。それがロボットの間に落ちると、爆音と共に手榴弾が炸裂し、近くのロボットを粉砕した。草には手榴弾が仕込まれ、投げたのはリオだった。
ロボットが反応する間もなく、草や泥の塊が次々と屋上から飛んできた。中には手榴弾が混ざっており、ロボットたちは大混乱に陥った。
アナはその隙を逃さず、弓を引き、数本の燃焼矢をロボットに放った。たちまち火が広がり、ロボットたちは進むも退くもできない状況に追い込まれた。これこそアナが狙った好機だった。
アナは素早く銃に持ち替え、驚異的な速さで1体を倒し、間髪入れず次の標的を仕留めた。反抗軍最強の射撃手らしい鮮やかな戦いぶりだった。
骸骨ロボットが爆破され、倒され、数が減っていく中、アナとリオは勝利の光を見ていた。
だが、2機の小型ドローンはついに機械蜘蛛に撃ち落とされた。これはまずい事態だった。引き離されていた機械蜘蛛が市街地に戻り始め、アナたちの戦場へ急行した。
他の知能機械の援軍により、戦況は一気に逆転した。
リオは体力に自信があったが、さすがに疲労が襲ってきた。手榴弾も尽き、ロボットを撹乱できなくなった。アナの弾も残りわずかで、2人は建物に退却し、知能機械の猛射を浴びるしかなかった。
建物は射撃で崩壊寸前だった。アナ、リオ、そして他の2人の隊員は互いに顔を見合わせた。次に何が起こるか、誰も分からなかった……。
「……第4小隊、応答願う……こちら第6小隊……」
かすかに、アナの胸元の通信機から声が聞こえた。
アナとリオは驚いた。第6小隊の存在も、他の援軍が派遣されたことも知らなかった。アナは半信半疑で通信機に応じた。
「こちら第4小隊。あなたたちは……?」
すると、通信機から声が響いた。
「アナ、君だろ!」
アナとリオは唖然とした。紛れもなくアレックスの声だった。信じられない事態だ。
「なんでお前が……!?」
アナが困惑して尋ねると、アレックスは無駄話をせず言った。
「もちろん君を救いに来た! 余計な話はなしだ。いいもの見せてやるよ!」
アレックスは格好良く言い放ち、アナを困惑させつつ期待させた。
タコマに残る約100体の骸骨ロボットと機械蜘蛛が、アナたちの隠れる建物に猛烈な銃撃を加えている中、突然、左右の空から奇妙な小球が飛んできた。
小球はロボットのそばで炸裂し、灯油のような液体が知能機械に飛び散った。直後、空から火のついた棒が降り注ぎ、「ボン!」と音を立てて灯油に火をつけ、一帯を炎の海に変えた。
これは第6小隊が両側に潜伏し、パチンコで投射したものだった。状況はさっきと似ていたが、知能機械はすでに警戒していた。だが、これは意図的なものだった。
知能機械が攻撃目標を両側に切り替え、追撃しようとした瞬間、20メートル先から謎の液体が噴射された。機械が反応する間もなく、火勢が「ゴオオ!」と一気に燃え上がった。それは――ガソリンだった。
知能機械は炎の海に飲み込まれた。この効果は、2時間前の作戦に遡る……。
2時間半前、第6小隊は作戦を立てた。まず、ディランとジョンの小型ドローンで知能機械を翻弄する。次に、2手に分かれ、市内の廃棄ガソリンスタンドを見つけ、灯油ボールを作ってパチンコで投射。ジョイとゴードンは小型高圧水鉄砲で遠くからガソリンを噴射し、火勢を増す。
炎の熱で知能機械は人間を感知できなくなる。これが作戦の核心だ。そして第3波、熱硬化樹脂の噴射だ。
チャドの援護と指揮の下、ブレンダ、シェリー、スーザン、ニック、マックス、アレックスが次々と飛び出し、熱硬化樹脂を噴射した。アレックスは密かに「気」を使い、樹脂を遠隔で複数の機械蜘蛛に同時に付着させ、効率を上げた。
たちまち、大半の知能機械の機械眼が樹脂で覆われ、一時的に人間を探す能力を失った。即戦力のない第6小隊にとって、この非直接的な戦法は完璧に機能した。
「急げ急げ!」
第6小隊は戦闘を長引かせず、アナとリオの元へ急いだ。特にアレックスは一番にアナの前に立ち、わざと格好つけて咳払いをして言った。
「君を救いに来たよ、アナの女神様。」