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第16話 チャドの秘密

 

 第16話 チャドの秘密

 


「準備できた。やってやろう!」


 アレックスは気功の修練を決意し、知能腕時計「レイ」が最も基本的な瞑想から指導を始めた。


 小さな中庭で、月光に照らされながら、アレックスはあぐらをかいて座った。表面上は何も起こっていないようだが、実際には「レイ」が彼の体内の撓場――東洋で言う「気」を少しずつ集め、導いていた。


「ゆっくりと、体内を流れる気を感じなさい。まるで見えない銀河が君の体を規則正しく巡り、絶えず流れているように。」


「レイ」の解説に従い、アレックスは徐々に体内で流れる力を感じ始めた。それはまるで新しい世界が開けたかのようだった。






 どれほど時間が経ったか、月光の下、アレックスは立ち上がり、右手を前に伸ばし、手のひらを上に向けた。彼は集中し、体内を流れる力を感じ、手に導いた。


「シュッ!」


 見えない気流が手のひらに形を成した。アレックスは興奮して叫んだ。


「やった!!」


 だが、次の瞬間、気流は消え、跡形もなく散った。


「もう消えたのか……」


 アレックスはがっかりして座り込んだが、「レイ」が励ました。


「落ち込むな。私が予想したより早く気を集められた。十分すごいよ。」


 アレックスは笑ったが、突然、背後から声がした。


「アレックス、こんな遅くに何してるんだ?」


 驚いて振り返ると、そこにはチャドがいた。


 チャドは知能殺人マシンの出現に常に警戒しなければならず、まともに眠れていなかった。アレックスがいないことに気づき、探しに来たのだ。


「……寝付けなくて、知能マシンと戦う練習をしようかと……迷惑かけたなら、すみませんでした。」


 アレックスは咄嗟に言い訳を考え、幸い銃を持っていたので誤魔化した。チャドはアレックスが何をしていたか知らず、信じた。


「もっと素早く狙う方法を学びたいのか? 教えてやる。」


 チャドが熱心に申し出ると、アレックスは断れず、チャドから知能マシンとの実戦のコツを教わった。






 少し後、チャドとアレックスは座って水を飲みながら休んだ。アレックスは食事中のことを思い出し、気になって尋ねた。


「チャド教官、なんだかここに来てから元気がない気がします。何かあったんですか?」


 チャドは感慨と無力感を滲ませ、ため息をつき、立ち上がって銃をいじりながら話し始めた。


「俺の妻はこの地区で捕まった……彼女とは反抗軍で知り合い、同じ行動小隊だった。だが、ある時、知能マシンとの戦いで、彼女は俺を庇って……俺を突き飛ばしたんだ。それで、俺はただ見ているしかなく、彼女が『巣』に連れ去られるのを……救えなかった。弾を全部撃ち尽くしても、彼女を助けられなかった……俺は自分が憎い。彼女を救う力がなく、こんな殺人マシンをどうやったら倒せるのか、考えても分からない……」


 チャドは話すうちに感情が高ぶり、最後には怒りに任せて石を拾い、力いっぱい投げつけた。やり場のない憎しみを吐き出すように。






「チャド教官、アナ・レインって知ってますよね?」


 チャドの話を黙って聞いたアレックスは、突然アナの名前を出し、何か意図があるようだった。


「もちろん知ってる。ホーク家の坊ちゃんが彼女のために反抗軍に入ったって話は聞いたぜ。」


 その話は岩丘谷中で話題になり、チャドも知っていた。アレックスはもう隠せないと立ち上がり、打ち明けた。


「俺、アナを救いたい……それがこの捜索任務に参加した本当の理由です!」


 アレックスはついに本心を明かし、チャドと長い間見つめ合った。意外にも、チャドは笑って言った。


「分かってたよ。あと数日で科学者が見つからなかったら、そっちへ向かおう。ただし、第6小隊全員の同意が必要だ。」


 チャドの理解ある言葉に、アレックスは何度も感謝した。


「ありがとう! 実は一人で行く覚悟だったんです……」


 チャドは軽く笑い、手を振って言った。


「早く寝ろよ、坊ちゃん……」


 アレックスは心の最初の関門を突破した。次は気功の修練だ。


「この数日で、絶対に気を少しでもモノにしてみせる!」


 アレックスは固く決意した。






 タコマ市は連日の大雨に見舞われていた。リオとアナ、そして負傷した2人の隊員は地下室に閉じ込められて3日が過ぎた。厳しい状況だったが、幸い食料はまだ十分で、食事をしながら雑談し、機械軍が去るのを待っていた。


 突然、奇妙なことが起きた。タコマ市を占拠する「巣」が巨大な汽笛音を発した。異様な現象に、アナとリオは地下室を抜け出し、何が起こっているのか観察しに行った。「巣」がなぜこんな大きな音を出すのか?


 不気味なことに、遠くの「巣」も同じく汽笛音を発した。正確には、この付近に陣取る4つの移動都市「巣」が次々と巨大な音を響かせた。


「なんだこれ? なんでこんな音を出すんだ?」


 リオがアナに尋ねると、アナは眉をひそめた。


「分からない……もしかして、何か目的を達成して撤退するつもり!?」


 アナの推測は正しかった。巨大な「巣」がその巨大な脚を動かし始め、街全体が揺れた。どうやら西の内陸へ向かうようだ。機械生体兵も召還され、地上には機械蜘蛛がわずかに残るだけだった。


「マジか? 奴らが去るのか? ってことは……」


 リオとアナは顔を見合わせ、不吉な予感に襲われた。彼らは急いで地下室に戻った。


 他の2人の隊員が通信機を手にしていた。通信機の向こう、ケイド司令官から悪い知らせが届いた。


「各反抗軍小隊へ。残念だが、傍受した情報によると、科学者は『巣』に見つかった……」


 この知らせは、捜索任務中の全小隊に伝えられた。もちろん、第6小隊にも。






「各反抗軍小隊へ。残念だが、傍受した情報によると、科学者は『巣』に見つかった……」


 第6小隊は通信機からの悪い知らせを聞き、皆が集まった。特にアレックスの心は重かった。ギャワン博士と過ごしたのは彼だけで、博士が自分を庇って逃がしてくれた時の覚悟を思い出した。博士が捕まった今、無事を祈るしかなかった。


 捜索任務が終わったため、チャドは皆の前で尋ねた。


「捜索任務は終了だ。本来なら岩丘谷に帰還するところだが、誰かが美人を救いに行きたいと言ってる……今、各自で選んでくれ。岩丘谷に戻るか、彼と一緒に行くか。強制はない。自分たちで決めろ。」


 チャドはアレックスを見た。アレックスは前に出て言った。


「みんなと知り合ってまだ日が浅い。だから、一緒に来てくれとは言えない……でも、俺は好きな女を救いに行きたい。彼女に認められたいんだ。こんな浅はかな考えに賛同できないなら、それでもいい。俺一人で行くよ……」


 アレックスが心からの言葉を語り終えると、皆は彼を見つめた。彼らがどんな決断を下すのか、誰も分からなかった……。



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