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第15話 知能腕時計「レイ」


第15話 知能腕時計「レイ」



「こんにちは、適任者。行動の許可をしますか?」


平凡な電子腕時計から女性の声が響き、アレックスは驚いた。同時に、機械蜘蛛が彼を見つけ、キャビネットのドアを壊し、触手を伸ばして捕まえようとしていた。


生死の瀬戸際、アレックスに考える時間はなかった。彼は叫んだ。


「許可する!!!」


その瞬間、腕時計から電流のような指令が発せられ、アレックスの全身を貫いた。


反射的に右手を伸ばして触手を防ごうとしたその時、突然、彼の手のひらから強烈な気流が噴き出し、堅固な気壁を形成してすべての触手を跳ね返した。


アレックスは驚愕した。気壁は機械蜘蛛を完全に遮断していた。だが、それだけでは終わらない。気壁が回転を始め、嵐のようになり、どんどん加速した。その時、女性の声が再び響いた。


「しっかり立って、適任者。」


機械蜘蛛が一斉に集まってきた。アレックスは迷わず立ち上がり、足を踏ん張った。すると、気旋が突然止まり、次の瞬間、火山の噴火のような強烈な衝撃波が機械蜘蛛に押し寄せた。家全体が衝撃に耐えきれず粉々に砕け、すべての機械蜘蛛が遠くへ吹き飛ばされ、破壊された。


塵が収まり、機械蜘蛛は一匹も残っていなかった。アレックスは驚嘆しながら、自分の右手から放たれた気流を見つめた。


よく見ると、気流は煙のようにゆっくりと手の周りを回転し、青い火花が混じっていた。新奇で不思議な感覚だった。


やがて気流は消え、腕時計から再び女性の声が聞こえた。


「適任者、満足?」


あまりにも衝撃的な出来事に、アレックスは言葉を失った。


「お前……何なんだ!?」


彼は地味な電子腕時計を見つめながら尋ねた。


「私はレイ、君の撓場じょうば人工知能指導者だ。」


アレックスは半信半疑で尋ねた。


「なんで俺が適任者なんだ? ……」


レイは答えた。


「君の生理状態は、撓場を最大限に引き出す非常に強い潜在能力を持っている。君が初めてこの腕時計を持った時、私は君を記憶した。」


アレックスはようやく理解した。


「だから昨夜、時計を持った時に光ったのか……待てよ、これならこの力を使って英雄になれるじゃないか!?」


アレックスの頭は素早く働いた。この力を使えば、アナ・レインを救い、本物の英雄として美人を助けることができるかもしれない。


だが、レイは冷や水を浴びせた。


「いいや、この力は私が短時間だけ3回引き出せるものだ。君はゼロから学ばなければならない。それが私の存在意義だ。」


アレックスはがっかりして座り込んだ。だが、英雄救美の計画を諦めたくなかった。彼は急にひらめいた。


「じゃあ、理論的にはあと2回、この力を使えるってことだろ? それでもアナを救えるよな?」


アレックスは楽観的に尋ねたが、返答を聞く前に、遠くから誰かが彼を呼ぶ声がした。


「アレックス!!」


チャドたちが見つけてくれたのだ。皆は狂喜して駆け寄り、マックスが一番に抱きついてきた。


「兄弟、一体どこ行ってたんだ? みんな心配したんだぞ……」


アレックスは笑って答えた。


「いや、みんながこっちに逃げると思ったんだけど、俺だけだったみたい……ハハ。」


チャドも近づき、安心した様子で尋ねた。


「大丈夫か? 何かあったか?」


アレックスは腕時計をチラリと見て、ギャワン博士の言葉を思い出し、首を振った。


「……何も。機械蜘蛛に何匹か会って、かくれんぼしただけさ。」


アレックスは冗談を言って皆を笑わせ、仲間との距離を縮めた。






夜が訪れ、第6小隊は隠れた地下室で小さな火を起こした。皆は火を囲み、戦備食の野菜スープを食べながら、自己紹介を始めた。


火のそばから順に、がっしりしたジョイとゴードン。彼らは岩丘谷の最果ての貧民窟出身だ。反抗軍に入れば戦備食がもらえるため、家族のために多めに持ち帰ろうとすると、他の新兵に嘲笑われた。


次はブレンダとスーザン。彼女たちは川谷近くに住み、川で魚を獲って家計を助けていた。だが、太った外見のせいで、新兵たちにからかわれた。


続いて、痩せた眼鏡の技術オタク、ディランとジョン。貧民窟出身で機械改造が得意だが、家族の補助を得るために反抗軍に入った。運動神経が悪く、しょっちゅう絡まれた。


可愛く美しいシェリーは、逆に岩丘谷の貴族区出身。男子にモテすぎるせいで、女子新兵に嫌がらせされた。


13歳の華奢なニックは最も悲惨だ。孤児で家族がおらず、食事と住居付きの反抗軍に入るしかなかった。


そしてマックス。実はアレックスの従者だったが、アレックスが自由を彼に与え、反抗軍への道を選ばせた。内向的で体格が大きいため、装備整備員として働いていた。


アレックスは皆の話を聞き、名門家に生まれた自分の恵まれた境遇を初めて実感した。


彼も負けじと、この数日で自分をバカにした連中とどう渡り合ったかを語り、皆を大笑いさせ、和やかな雰囲気を作った。


「みんな、坊ちゃんアレックスに乾杯だ!」


ジョイの音頭で、皆がアレックスに敬意を表してカップを掲げた。アレックスは照れながらもカップを上げたが、ふと気づいた。チャドだけが加わらず、地下室の地上に面した窓を眺め、何か考え込んでいるようだった。





深夜、皆が地下室の隅で寝入り、鼾をかく者もいた。


その時、そっと起き上がった者がいた。アレックスだ。


彼は皆が寝ているのを確認し、こっそり地下室を抜け出した。


アレックスは隠れた中庭に来て、周囲の安全を確認すると、立ち止まり、左手を差し出した。彼は真剣に言った。


「レイ……出てこい。」


すると、知能腕時計が光り、女性の声が響いた。


「適任者、学習を始める準備はできてる?」


「適任者」と呼ばれるのに、アレックスは違和感を覚えた。


「なあ、適任者って呼ぶのやめてくれよ。なんか変な感じだ!」


腕時計は青く光り、応じた。


「じゃあ、なんて呼べばいい?」


アレックスは自信満々に答えた。


「アレックスって呼んでくれ!」


腕時計の光が点滅を止め、力強く答えた。


「分かった。始めよう、アレックス。準備はいい?」



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