表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/52

第14話 起動


第14話 起動



アレックスは予想もしていなかった。機械蜘蛛が音もなく近づき、今、ギャワン博士の背後に牙を剥いていた。


電光石火の速さでアレックスは銃を構え、先制攻撃を試みた。だが、彼の動きは殺人マシンに遠く及ばなかった。機械蜘蛛の鋭い脚が、ギャワン博士の腹部を貫くのを、ただ見ているしかなかった。


「うわぁっ!」


ギャワン博士は苦痛に叫んだ。アレックスは絶望の中、機械蜘蛛に銃を乱射した。


博士は傷を負っていたが、激痛を堪え、即座に自作のパルス磁石を投げつけた。瞬間、機械蜘蛛は電源を切られたように動きを止め、アレックスの銃撃で爆散した。


アレックスは一刻も留まることなく、博士を支えて全力で走った。道路の先には、数十体の機械蜘蛛が音を聞きつけて迫っていた。


「早く!」




アレックスは緊張した面持ちで、ギャワン博士を支えながら森を駆け抜けた。背後では、機械蜘蛛が赤外線でスキャンしながら迫ってくる。だが、ついに、顔を真っ青にした博士は力尽き、木に寄りかかって倒れ込んだ。


「博士! 持ちこたえて! 前に進まなきゃ!」


アレックスは必死に博士を起こそうとしたが、博士は青ざめた顔で首を振った。


「どうやら……岩丘谷には行けそうにないな……小僧。」


アレックスは博士と知り合って間もないが、彼を見捨てるような人間ではなかった。


「ダメだ! 博士は大事な人だ。諦めるな! 立て、背負うぞ!?」


アレックスが背負おうとしても、博士は拒んだ。決意を固めた表情で言った。


「小僧、手を出しな……」


アレックスは博士の意図が分からず、左手を出した。博士は再びあの黒い電子腕時計を取り出し、迷わずアレックスの腕に装着した。


「博士……? これは?」


博士は真剣な顔で厳かに言い聞かせた。


「よく聞け。どんなことがあっても、この時計を失くすな。『彼女』はお前に想像もできない変化をもたらす。そして、『彼女』が教えることは、完全に習得するまで絶対に他人に話すな! 早く行け! 俺がこの殺人マシンを食い止める!」


アレックスは混乱し、焦って尋ねた。


「『彼女』って誰だ? 何を学ぶって? 博士、意味が分からないよ!」


博士は答えず、アレックスを押しやり、木の陰に身を隠すと、懐中電灯を取り出して隠形機能を起動した。撓場の気流が瞬時に煙の壁を作り上げた。


「早く行け!」


博士は決意を込めて叫んだ。アレックスは渋々従い、走り出した。


「ありがとう、博士……無事を祈るよ……」


アレックスは何度も振り返りながら呟いた……。




アレックスはまるで頭のないハエのようだった。初めて地上に出た彼は、どこへ向かえばいいのか分からなかった。


「くそっ……どこへ行けばいいんだ!?」


汗だくで周囲を見回した。彼はもうアナを助けることより、チャドたちと合流する方法を考えていた。


機械蜘蛛の気配がないのを確認し、彼は通信機を取り出した。第6小隊と連絡を取るチャンスだった。


「早く繋がれ……!」


アレックスは焦った。




その頃、第6小隊は昨夜からオリンピアの南でアレックスを探し続けていたが、成果を上げられず、皆が焦っていた。


「こんなに探したのに……アレックス、一体どこにいるんだよ?」


マックスは心配そうに呟いた。


その時、チャドの通信機が鳴った。急いで応答すると、向こうからアレックスの声が聞こえた。


「神に感謝、みんな、どこにいるんだ!?」


アレックスの声に、皆が集まった。特にマックスとニックは、どこへ行って見つからなかったのか聞きたくてたまらなかった。


「たぶん……モリソン通りだ!」


アレックスは倒れた道路標識を見て自分の位置を伝えた。だが、そこはチャドたちからかなり離れていた。チャドは言った。


「アレックス、そこで動くな。俺たちが迎えに行く!」


アレックスは合流できると安心したが、すぐに危機が訪れた。通信信号を感知した数体の機械蜘蛛が彼に向かって突進してきた。彼は再び走り出した。


アレックスは道端の廃屋に逃げ込み、隅に隠れた。隠れた直後、屋根から衝撃音が響き、殺人マシンが来たことを悟った。


数体の機械蜘蛛が信号を追って家の周囲に集まり、2階の窓を破って侵入してきた。どうやら人間が隠れていると確信しているようだ。


機械蜘蛛が次々と家に侵入し、アレックスに逃げ場はなかった。彼はキャビネットの中に丸まり、思った。


「笑えるな……俺、アレックス、こんな若さで死ぬのか……ハハ、アナを口説けなかったのは残念だな……」


絶望の中で自嘲するアレックスだったが、頭に最初に浮かんだのは、意外にもアナ・レインではなくマギーだった。彼は右手首のリストバンドを見つめ、マギーの怒った顔や言葉を思い出し、苦笑した。


「まあ……今さら何を言っても無駄か……」


アレックスは絶望的に頭を壁に凭れ、機械蜘蛛に見つかり、死を待った。


その時、突然……


左腕の電子腕時計が再び、規則的に青い光を放ち始めた。アレックスは驚いた。


「何!? どうなってんだ!?」


不気味な青い光に、アレックスは腕を上げた。何か起こる予感がした。すると、腕時計の小さな画面に文字が表示された。


「適任者確認。あなたは生死の危機に瀕しています。腕時計を起動しますか? 下のボタンを押してください!」


画面の下には、大きなボタンが規則的に弱い赤い光を放っていた。アレックスは決断を迫られた。


彼はギャワン博士の言葉を思い出した。


「『彼女』はお前に想像もできない変化をもたらす……どんな変化だ? ……まあ、何もしないよりマシだ、やってやる!」


アレックスは博士が言う「彼女」の意味を理解していなかった。だが、機械蜘蛛がすぐそこまで迫り、死が目前に迫る中、考える時間はなかった。彼は迷わずボタンを押した。


ボタンを押すと、腕時計の光は点滅を止め、ますます明るく輝いた。アレックスが何が起こるか期待していると、腕時計から女性の声が響いた。


「こんにちは、適任者。行動の許可をしますか?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ