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第13話 奇妙な腕時計


第13話 奇妙な腕時計



人間ほどの大きさの機械蜘蛛が、アレックスの隠れる木の前に迫っていた。アレックスは極限まで緊張し、最悪の覚悟を決めた。銃を手に、飛び出して乱射するつもりだった。


機械蜘蛛は強力な触手で木を真っ二つに引き裂いた。木が両側に倒れた瞬間……


そこには誰もいなかった。一人の影もなかった。


さらに驚くべきことに、機械蜘蛛は周囲を調べても、人間の熱源を全く感知できなかった。


結局、機械蜘蛛は捜索を諦め、森を離れ、別の方向へ去っていった。


一体何が起こったのか? アレックスはどこへ消えたのか……?




先ほど裂かれた大木の下には、誰もいないように見えた。だが、突然、男の声が響いた。


「もう安全かな?」


空っぽだったはずの場所に、突如として二人の姿が現れた。一人はアレックス、もう一人はどこから来たのか分からないアジア系の中年男性だった。


アレックスは驚いて尋ねた。


「お前、誰だ!? どうやって……!?」


彼には、なぜ機械蜘蛛が自分を見つけられなかったのか、全く理解できなかった。


男は懐中電灯のようなものを使っていたようだったが、今はそれを仕舞った。


「俺はギャワンだ。さっきのはちょっとした仕掛けさ。ついてこい!」


男は懐中電灯をしまい、緊張した様子でアレックスに付いてくるよう促した。アレックスは怪訝に思ったが、夜も深まり、他に選択肢もなく、この不思議な男に従った。




しばらくして、男はアレックスを森の奥へと連れて行った。そこには、地面に突き刺さった墜落した小型飛行機があった。男は木の根を慎重にどけると、地下に隠された空間が現れた。


男はその空間に入り、緊急照明を点けた。アレックスも後に続き、好奇心で地下の隠れ家を見回した。


「お前、どこから来たんだ?」


男は突然アレックスの腕を掴み、びっくりしたアレックスはどもりながら答えた。


「……オ、オーケー……俺は岩丘谷の避難所から、科学者を探しに来た……待てよ、さっきの墜落した飛行機……お前がその科学者か?」


アレックスの頭は素早く働いた。この男が捜索対象だと直感したのだ。


「俺はギャワン・ツェリン・ドルジェ、科学者だ……お前たちが俺を探してた? 神に感謝だ……」


ギャワン博士は信じられない様子でアレックスを見つめ、アレックスはこれまでの経緯を話し始めた……。




夜が深まり、地下の隠れ家にはカレーの香りが漂っていた。ギャワン博士は出来立てのカレーをアレックスのボウルに注ぎ、薄暗い光の下で自分の物語を語り始めた。


「俺はチベット出身だ。2032年以前はMITの実験室で研究していた。あの人工知能が覚醒した日、俺は一生忘れない。世界は大混乱に陥った。都市に光球が現れ、誰もがまずい事態だと気づいた。奴らは核ミサイルで攻撃してきた……最初の機械軍が生まれ、大地は炎に包まれた。悲鳴が響き、恐怖そのものだった……」


アレックスは聞き入った。彼は過去のそんな恐ろしい話を知らなかった。好奇心で尋ねた。


「それからどうなった?」


ギャワン博士は続けた。


「最初は秘密の実験室で、人工知能の機械に対抗する研究を手伝った。だが、何をやっても無駄だった。実験室は次々と機械軍に見つかり、俺たちは逃げ続けるしかなかった……今に至るまでな。」


アレックスはカレーを食べ終え、不思議そうに眉をひそめて尋ねた。


「じゃあ、人類は機械に勝てないってことか……なんで反抗軍がお前を探してるんだ?」


ギャワン博士は神秘的な目でアレックスを見つめ、顔を近づけて言った。


「逃げ続けながら、恐怖に震えながら、俺は仏経を唱えた。その時、ふと思ったんだ。この世の物質で奴らに対抗できないなら、目に見えないもので試してみたらどうかってな。」


アレックスは混乱して尋ねた。


「目に見えないもの……? それって何だ?」


ギャワン博士は待つように言い、さっき使った懐中電灯を取り出して尋ねた。


「これが何か分かるか?」


アレックスが首を振ると、博士は懐中電灯を起動した。すると、アレックスは今まで気づかなかったことに驚いた。


懐中電灯は光を発せず、空気中に気流の壁を作り出した。驚くべきことに、正面から見ると博士の姿が完全に消え、光が曲がったかのようだった。


「どうなってんだ!? この気みたいなものは何だ?」


アレックスは気流の壁に触れ、まるで風を触るような不思議な感覚に目を輝かせた。


博士が秘密を明かした。


「これは『撓場じょうば』だ。東洋で言う『気』だよ。」


博士は気流の壁を操りながら続けた。


「気は誰の体にも存在する。何千年もの間、東洋文化はこれを研究してきた。気は人を驚異的な力で動かす。知能機械には決して手に入らない、使えない力だ。俺はこれを徹底的に研究し、気の潜在能力を引き出す方法を発明した。この懐中電灯は、人の気を誘導してレンズを作り、姿を隠すんだ。そして……」


アレックスは好奇心で尋ねた。


「他には?」


ギャワン博士はミステリアスに立ち上がり、ポケットから平凡な黒い電子腕時計を取り出した。


アレックスは腕時計を受け取り、疑わしげに眺めた。


「博士……ただの普通の時計じゃん。特別なところなんてないよ……」


博士は小さく笑い、隠れ家の入口に登って外を覗きながら言った。


「焦るな。特別かどうかは、明日、お前と岩丘谷に戻って、適任者を見つければ分かるさ!」


博士は外に異常がないのを確認し、明日朝早くアレックスと岩丘谷へ戻る準備をした。


「博士……分かった。この時計、光るんだろ? めっちゃ特別だな!」


博士は外の観察に夢中でアレックスの言葉をよく聞かず、適当に答えた。


「光るって何だ?」


博士が入口を閉じて振り返ると、凍りついた。


アレックスの手に持つ腕時計が、規則的に青い光を放っていた。まるで何か重要なことを告げるかのように。


博士は一瞬、動かずアレックスを見つめ、意味深く呟いた。


「もしかして……もう適任者を探す必要はないのかもしれない……」




一夜が明け、アレックスはギャワン博士を連れて、荒涼としたオリンピアの街を歩いていた。第6小隊の仲間と合流するつもりだった。


「捜索はついでで、本当は美人を助けに行くつもりだったって? ハハ、めっちゃ正直だな!」


一晩で博士と打ち解けたアレックスは、気取らず本音を話した。得意げに続けた。


「俺の人生で一番大事なのは、好きな女を逃さないことだ。彼女のためなら、どんな危険でも突っ込むぜ!」


その言葉に、ギャワン博士は立ち止まり、真剣に尋ねた。


「アレックス……まず良い世界を作るために努力しないと、誰も逃さずに済むなんてないんじゃないか?」


その問いに、アレックスは言葉を失った。そんな考えはこれまで一度も浮かんだことがなかった。


だが、その思索は長く続かなかった。なぜなら、機械蜘蛛が……彼の目の前に現れたからだ!!



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