27話 味の違い?
そうして、地球人が二つの紙風船を破ることができた。その時点で、10カウントが始まる。スアは、私の一言と始まった10カウントに焦りを覚えたようだ。
「え? いつの間にそんなに時間経ったの?」
「スア先輩が格闘している間にですけど!」
――ピッッ
そんな会話をしながらも、腕は動かしていく。スッと覗かせる頭に振りかざす。しかし、小さな天王星人はすばしっこく逃げる。スアが叩いたピコピコハンマーの上に、天王星人はジャンプをして乗っかる。
「な!」
スアは、ピコピコハンマーを振って飛び乗った天王星人を振り落とそうとした。
「何をなさいますか〜〜」
しかしガッチリと捕まっていて、そこから離れない。先程のように、モグラ叩き台をピコピコと叩き始めた。
「だから、これは! 違反でしょ!」
「3……2……1……終了です!」
そうして、地球人の悪ことができた数は二つ。対して、天王星人は三つだ。しかし我々地球人からしたら、天王星人はルールを無視しすぎなようにも感じる。
――パーン
そう音を立てて、煙が上がった。もちろん、紫色の煙で天王星人の勝利の合図だ。
「まあ、でも。あの煙が全てですからね〜」
ふふふ、と楽しそうに天王星人は笑う。噂だと、天王星人はこの地球の食べ物が欲しいようだ。
「じゃあ……我々、天王星人の勝利ということですね。なんでも要求ができるわけですね」
私は、ごくりと生唾を飲み込んだ。何を要求をされるのかと、ドキドキと胸がなる。もしこれで地球に危害が加われば、地球警備隊は何をしていたのかと言われかねない。
「何がお望みなんですか?」
ふわふわと宙を舞い始める。一回転をしてみたり、天王星人が集まって輪になって楽しそうにしている。
「簡単ですよ。太陽系の惑星みんなが、仲良くするのです〜! お互いに助け合いましょう? そのための、楽しい戦いだったのですから!」
(全く楽しさのカケラもなかったのですが? というか、平和に仲良くできてたら……今回の宇宙大戦争なんて起きなかった)
私は、なんとも言いようのない気持ちになった。ぐるぐるとした胸は、消化できないまま溶け残る。
「仲良くって、具体的には?」
「お互いに欲しいもの、やって欲しいことは異なります! それをもっと上手く活用しましょう」
というふわふわとした天王星人の希望を太陽系の惑星が聞くことで、この戦争は終わりを迎えることになった。
「まあ、まずは! 地球人をこの天王星にご招待します」
****
「やはり、地球の海藻は……美味しいですなぁ」
天王星に、我々地球警備隊が招かれた。天王星は、かなり寒い惑星で太陽の光がほとんど届かない。そのため、ウミウシの主食の海藻が手に入らないそうだ。
この地球の海藻と交換に、天王星のシリカと交換をする。乾燥剤や食品添加物と多様に使われる。かなり離れた天王星は、各惑星を巡って地球に帰還をすることもできる。
なので、戦争後すぐに天王星に向かった。
イアンが、ずっと不思議に思っていたことを聞いてくれた。
「美味しい海藻が食べられる地球に住む、とかもっと提案することがありましたでしょう?」
「地球よりも……私たちからしたら、この寒い天王星が住みやすいのです。それは、どの惑星人も同じです!」
****
宇宙船の中で食事を取る。シャケのおにぎりをいただく。銀のパウチをピリピリっと破ると、おにぎりが頭を覗かせた。
米粒が、重力のない宇宙船の中で漂い始める。それを私は、口でパックと追いかけた。米粒一つ一つに塩がついているかのようで米粒の甘みを引き出してくれる。
地球で食したときとは違って、米の硬さが緩和されていて柔らかな米を優しく握られたおにぎりのようだ。それに、地球上とは違って米の甘さが強く感じる。
シャケはさらにほろほろと崩れ、舌に乗せると溶け出す。
「な、何これ……美味しさが増してる……」
「うん、これは! うまい!」
毎度のように『まずい』と言っていたシンがついに『うまい』と称賛した。
「ようやく、大人の口になったね」
(こんな平和が叶うなら、あのとき負けでも良かったのかも)