第8話:スキンシップ
【スキンシップ】
夫婦にとってスキンシップは重要だ。例えば抱きついたりキスをしたり。
バカップルと言われようが、生暖かい目で見られようがこれは譲れない。こいつがなくなったら夫婦の危機だとさえ言える。
でもこのスキンシップ、妻は喜んでいる、のかな。
私は事あるごとに妻に抱きつき、キスをする。(それ以上のことは書くのが憚られるのでやめておこう)
恥ずかしい? いや、心は態度で示すべきだ。妻が居たら抱きつき、キスをするのが夫の義務であるとすら言える。全身全霊で愛を伝えなければ。
朝起きた時、朝食の準備中、食事の前、出かける時、仕事から帰った時、夕食の準備中、夕食前、食後の片付けをしている時、歯を磨いている時、お風呂の前、お風呂の後、洗濯物を干している時、寝る前、寝ている時……。
うっとおしい? うん、自覚はある。
とにかく四六時中抱きつき、キスをしている(おっと、冬場は静電気が走るので注意するように)のだが、妻はどう思っているのだろうか。ニコニコしてくれているが本当は嫌なのではないか。だが人は環境に慣れるものだ。毎日抱きついていればいつしかそれが当たり前になり、やがてそれがなくなった時、寂しく感じてしまうことになるだろう。
ふふふ、私が出張に行った時、寂しさに身悶えするがいい。
あるいは妻に「気になる男」が現れたとして、その男が毎日抱きついてこなかったら「物足りない」と感じることになりはしないだろうか。
ふふふ、私以外の男に満足できなくなる日は近い。着々と計画は進行しているのだ。
ある日の夕食時、「いただきます」の後、ついうっかり妻へのキスを忘れたときのこと、ふと妻を見ると「明らかにキスを待っている妻」がそこにいた。
キターーー!
ふふふ、計画通り!
これは決してエッチな気持ちからしていることではない、妻に愛を伝えるための行動だ。そこを勘違いしてはいけない。妻にもそれは伝わっているはずだ。
しかし、抱きつくたびに妻が言う。
「エロなの?」
「愛だよ」
正しく伝わっているか心配だ。
次回、夫婦で行く旅行。お楽しみに。