表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

第5話:結婚のあいさつ

【結婚のあいさつ】

人生における「絶対に負けられない戦い」のひとつ。

「娘さんを私に下さい」というのがテンプレートだが、そんなことを言えば「娘はモノじゃない」なんて怒られるのだろうか。では「娘さんと結婚させてください」だろうか。

ともかく、私にも人生最大の戦いがやってきた。

 妻との結婚が決まると、まず行わなければいけないのはお互いの両親へのあいさつだった。


 だが私の両親はどうでもいい。妻にも「何も問題ない」と伝えたし、第一、私が選んだ人を拒否なんてさせないし、万が一拒否したら親子の縁を切るまでだから。だが問題は妻の両親に私が気に入ってもらえるかどうかだった。


 これは入念なリサーチが必要だ。


 妻の実家の家族構成、両親の好物、好まれる話題、避けるべき事柄、いつでも言えるような妻の美点、万が一ケンカになった時の対応、それでも結婚する覚悟、トイレに行かなくても済むような体調管理・・・。


 それはもう、考えられる限りの準備をする。


「大丈夫だと思うよ、多分」


 笑顔の妻が言うが、多分があったら困るんだ、多分が。


「お父さん、昔は待つのがキライでね、回転ずしが混んでて入店に10分待たせたって大喧嘩して帰ったことがあるんだよ」


 え!? そんな人と対峙するの!? 全然大丈夫じゃないんだけどそれ。


「どんなに遅くなっても泊まりは許してくれなかったし、駅まで暗いからって毎回迎えに来てくれて」


 え!? かなり過保護なんじゃないの? これ、殴られるパターンもあるんじゃないの!?


 なまじ想像力があるだけに嫌な展開が頭をよぎる。


「大丈夫だって、昔は怒りっぽかったけど」


 一言多いよ!


 絶対に落としたくないとき、私は念には念を入れる。この時も妻にプロポーズするずっと前から計画を練っていた。なんならPCに書いたタイムスケジュールと挨拶文が今でも残っている。噛まないように何度も暗唱して言葉を体に叩き込む。原稿があるなどと微塵も悟られてはならない。


 そうして万端の準備を終え、妻の家のチャイムを鳴らす。


 なにしろ第1印象が大切だ。スーツも、ネクタイも、髪型もオッケー。「挨拶」「お土産を渡す」「靴をそろえて入る」「ご両親が揃ったところで改めて挨拶」、「挨拶」「お土産を渡す」「靴をそろえて入る」「ご両親が揃ったところで改めて挨拶」、「挨拶」「お土産を渡す」「靴をそろえて入る」「ご両親が揃ったところで改めて挨拶」、いかん挨拶文を忘れそうだ。結びの言葉は「娘さんをください」じゃなくて「娘さんとの結婚を認めてください」だ。私という人間を受け入れてもらうんだ、ぬかるなよ!


 扉が開き妻の父親が姿を見せる。


「おお~来たか! これから娘をよろしくな~」


「あ、え? ……はい」


 ここから改めて何を言えというのか。

もう2回続きます。次回、ジェントルメン。お楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「お父さんをボクにください!」だな。
[良い点]  ラスト最高です!  ちなみに、私もそんな感じでした(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ