モグラは自称スパイ
里山に暮らす夫婦の物語。
人里離れた山の麓にひっそりと佇む藁ぶき屋根の古い家。
そこには仲のいい夫婦が暮らしていた。アヒルのルンルンとカッパのパッパだ。
二人(2匹?)とも自分を人間だと思っている。
つつましやかでありふれた日常は、奇想天外な出来事に彩られていた。
子ダヌキはよっぽどお腹がすいていたのか、ルンルンが作ったふわふわ卵とキノコの中華スープを三杯もお替りした。
あまりにもおいしそうに食べてくれるのでルンルンもご機嫌だ。
子ダヌキは名前はまだ無いそうだ。住んでいるのは川の向こうにあるキノコ狩りに行った山なのは分かった。問題はそこからどうやって子ダヌキの家をさがしあてるかだ。
パッパは片手を頬にあて、その手の肘をもう一方の手で支えてしばらく考えた。
「よしっ! あいつに頼もう」
「えっ? なに、パッパ。何か思いついたの?」
「ああ。ちょうどいいヤツがいるのを思い出した。確かあの山もそいつの縄張りだ。あいつだったら分かるかもしれない」
「ええっ!? どんな人?」
「まあ、人というか、なんというか。MI6で諜報活動をやっている地下組織の、まあ、生き物ではある」
「パッパ、変な説明」
パッパとルンルンと子ダヌキはキノコ料理をたらふく食べた後、早速、子ダヌキの家をさがしに出発した。
子ダヌキはまだちっちゃく、手のひらに乗るくらいの大きさだ。ルンルンの背中に乗って移動した。
先日、キノコ狩りに行った山に入ると背の高い大木が空を覆い山道は薄暗くなっている。パッパは先頭を歩きながら、こっちだとみんなを引率した。
その後ろをペタペタとした足取りでついていくルンルン。
子ダヌキはルンルンの背中に乗ってなんだか楽しそうだ。
「ルンルンさん。ルンルンさんの背中ってふわふわしていて、暖かくて、気持ちいいですね」
「あら? よかったわ。喜んでいただいて」
子ダヌキはルンルンの羽に頬をうずめている。ルンルンもまんざらでもなさそうだ。
しばらく歩いていくと、急に開けた高台に出た。ちょっとした広場になっていて明るい日差しが降り注いでいる。
背の短い芝に覆われた広場の端っこに、モコモコと土が盛り上がったり、所どころ穴が開いている場所があった。
パッパはそこの地面をどんどんと踏みしめるようにして何かを探している様子だ。
「パッパ、何やってるの?」
「ああ、確かここら辺のはずだ。あいつの住み家があると思うんだけど」
「ふーん」と言いながら、ルンルンも地面をペタペタ踏みしめた。
しばらく地面を踏んでいると突然地面が盛り上がってきた。
「パッパーっ! 地震よ! 地面が動いた!」
「うん?」
パッパがルンルンの足元を見てみると、ルンルンの踏みしめている土がもっこりと盛り上がっている。
のんびりとした気持ちで読んで頂ければ幸いです。
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