迷子の子ダヌキ
里山に暮らす夫婦の物語。
人里離れた山の麓にひっそりと佇む藁ぶき屋根の古い家。
そこには仲のいい夫婦が暮らしていた。アヒルのルンルンとカッパのパッパだ。
二人(2匹?)とも自分を人間だと思っている。
つつましやかでありふれた日常は、奇想天外な出来事に彩られていた。
パッパとルンルンが朝ご飯を食べていると、外で何やら鳴き声がする。
「パッパ。外でなんか鳴いてる」
「うん? あーそうだね。小さい声でミーミーって聞こえるね」
ルンルンが走って外に出てみた。
庭には何もいない。どうも鳴き声は庭の隅にある納屋の方から聞こえてくるみたいだ。
ルンルンが納屋の方へ行くと軒下の隅からその声が聞こえてきた。
ルンルンがのぞき込むと、小さなタヌキの子供がつぶらな瞳でルンルンを見ながらミーミーと鳴いている。
「パッパーっ! タヌキの赤ちゃんがいるよ。こっち来てー」
パッパが急いで納屋に行き、軒下をのぞくと子ダヌキはなんだかおびえている様子だ。
パッパが子ダヌキに話しかける。
「こんにちは。どうしたんだい? こんなところで」
「えーっと、あのー。ここってどこですか?」
「ああ、僕らの家だよ。この子はルンルン。僕はパッパだ」
子ダヌキは少し落ち着いたようで、パッパに話しかける。
「昨日ここに来たんですが、朝起きると弓を討っている人がいたので怖くてじっとしてたんです。でも、美味しそうな匂いがしてきたのでなんだかじっとしていられなくなって……」
「ああ弓か、僕がアーチェリーの練習をしていただけだよ。キミはどこから来たんだい?」
川向うにある山を指さす子ダヌキ。昨日ルンルン達がキノコ狩りに行った山だ。
「どうしてここまで来たの?」
「えーっと、あのー。森で遊んでいたら楽しそうな歌声がするので、ついていったら帰り道がわからなくなって、それであのー、この納屋で一晩泊まっていました」
どうも、子ダヌキは迷子になっていたようだ。
楽しそうな歌声がしたというのは、キノコ狩りの帰りにルンルンが森の中で歌っていたことだろう。
「そっか。まずはうちで朝ごはん食べなよ。美味しいキノコ料理がたくさんあるから」
ヨチヨチ歩きの子ダヌキが嬉しそうな顔をする。
つぶらな瞳が少し涙ぐんでいる。
「さあさあ、腹ごしらえが先だ。食べ終わったらキミのお家を探しに行こう」
「あ、ありがとうございます!」
子ダヌキはまた涙ぐんだ。
のんびりとした気持ちで読んで頂ければ幸いです。
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