ルンルン、卵とキノコとパッパと
里山に暮らす夫婦の物語。
人里離れた山の麓にひっそりと佇む藁ぶき屋根の古い家。
そこには仲のいい夫婦が暮らしていた。アヒルのルンルンとカッパのパッパだ。
二人(2匹?)とも自分を人間だと思っている。
つつましやかでありふれた日常は、奇想天外な出来事に彩られていた。
アヒルのルンルンは一日に一個卵を産む。
生んだ卵は台所の隅にあるに竹籠に保管している。
今日もルンルンは楽しそうに朝ご飯を作っているのだが、裏庭で取れたキノコがたくさん余りすぎて、しばらくはキノコ料理尽くしになりそうだ。
そういうことで、今朝の料理はキノコと卵のバターじょうゆ炒め。
フライパンでこんがり焼けたバターの香ばしいにおいが、藁ぶき屋根の家の充満する。
アーチェリーの練習を終えたパッパが汗びっしょりになって帰ってきた。
パッパは毎朝アーチェリーの練習をしている。それほどきつい練習ではないのだが、この暑さでは外に立っているだけでも汗がしたたり落ちてくる。
「ただいまー。おっ、おいしそうなにおいだな。今日も卵料理かい?」
「うん。卵とキノコがいっぱい余ってるんだもん。ルンルンは毎日卵を産むけどパッパは何か出せないの?」
「え? えーっと、手から水が出せる」
炊事場に行って水かきのついた手を広げて水芸をするパッパ。
「水なんて近所の川にいっぱいあるじゃない」
「そうなんだけど、畑に水を撒くときなんか便利だよ。普通の人はいちいち水を運んでこないといけないだろ?」
パッパはカッパで、妖術じみたことができるのだが、本人は自分のことを人間の中のそういう人種だと思っている。
「まあ、いいじゃないか。それより早く食べよう」
ルンルンがテーブルの上に皿を置いていく。
キノコたっぷりバター醤油炒め、キノコのお吸い物、キノコ入りオムレツ、キノコ入りの肉団子と野菜スープ。本当にキノコ尽くしだ。
「いただきます」
「いっただっきまーす♪」
ぱくり。
「ルンルンの産んだ卵は濃厚でおいしいね」
「ありがとう、パッパ。パッパの水芸も面白いよ」
「ミー、ミー」
二人が朝ご飯を食べていると、外から何やら小さい鳴き声が聞こえてきた。
のんびりとした気持ちで読んで頂ければ幸いです。
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