ルンルン、あモンチッチじゃんけんを歌う♪
里山に暮らす夫婦の物語。
人里離れた山の麓にひっそりと佇む藁ぶき屋根の古い家。
そこには仲のいい夫婦が暮らしていた。アヒルのルンルンとカッパのパッパだ。
二人(2匹?)とも自分を人間だと思っている。
つつましやかな男と女のありふれた日常は、奇想天外な出来事に彩られていた。
キノコ狩りをしようと山へ登ったルンルンとパッパ。森の中を突き進むと、天高くそびえる立派な大木が太い枝に青々とした葉を携え、幾重にも立ち並んでいる。森全体に生命力がみなぎっているかのようだ。こうしてこの場にいるだけでも心地よいのだが、肝心の食用キノコが見つからない。
見つかるのは毒キノコばかり。しかも、スマホでキノコを撮影するのに夢中になってしまって、あっという間に時間がたった。
すでにお日様が西に傾きかけている。遠くからカラスの鳴き声が聞こえる。
森の中が薄暗くなりかけたとき、パッパが話しかけた。
「ところでルンルン。キノコは植物じゃないのだが、ちゃんと花言葉があるのは知っているかい?」
「え? そうなの?」
「しいたけの花言葉は『疑い』。まつたけの花言葉は『控えめ』。マッシュルームの花言葉は『福音』。そして、エリンギの花言葉はなんと、『宇宙』だ!」
「パッパて、キノコに詳しいのね」
「ああ、さっきスマホで調べた」
「……」
ルンルンが退屈そうにしている。水掻きの付いた足でヨチヨチと歩いているのだが、足取りが重い。パッパのうんちくは聞き飽きたようだ。
キノコ狩りといっても、これといった収穫はなかった。薄暗くなった森の道を歩きながらパッパが話しかける。
「ルンルン。今の僕たちって絵柄的に、『キノコが採れなくてノコノコと帰る二人』だね」
「なに? 駄洒落」
「いや、別に駄洒落というわけじゃ……」
「あっ! いい替え歌を思いついた! きーのっこのっこのっこ、帰ろじゃないか♪」
急にパッパの方を向いて羽をパタパタさせ、突然歌いだすルンルン。
「はい! 音楽スタート!」
羽先をパッパの前に突き出し、リズムを取り出すルンルン。
「え?」
「音楽よ! パッパ、『ズンチャ・ズンズチャ』って歌って」
「ずんちゃ・ずんちゃ…」
「もっとリズムカルに!」
「ズンチャ・ズンズチャ、ズンチャ・ズンズチャ」
「そうそう、その調子。パッパは音楽係ね」
そして、ルンルンとパッパの森の小さな音楽会が始まった。
ズンチャ・ズンズチャ、ズンチャ・ズンズチャ♪
せっせっせーのモンチッチ♪
あーのっ子のっ子のっ子、かわいいじゃないか♪
きーのっこのっこのっこ、帰ろじゃないか♪
てるてる坊主のモンチッチ♪
つるつる頭のパッパッチ♪
あモン、あモン、あモンチッチ♪
「はい!」
ルンルンは翼を広げて、パッパの目の前で指揮をとるようにばたつかせた。
「え?」
「パッパも歌って」
「えーっと、せっせせーの……。」
「だめ! 棒読みじゃない」
「せっせっせーのモンチッチ♪」
「そうそう、その調子!」
ルンルンとパッパはこうして、歌を歌いながら暗い森の中を帰っていった。
キノコの収穫はゼロ。だけど、ルンルンが作った替え歌を歌いながらの帰り道は、とても楽しく、森全体が賑やかなコンサート会場みたいになったようだ。
そうこうしているうちに家に着いた二人なのだが、パッパは帰るなり、家の裏に行って松茸やシイタケやシメジをとってきた。パッパはしっかりと裏庭にキノコを栽培していたのだ。
何はともあれ、パッパとルンルンは美味しそうなキノコ汁を作って食べましたとさ。
終わり
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