ルンルン、お昼寝する
山奥にある藁ぶき屋根の家の大広間で、ルンルンはいつものようにテレビを見ていた。
画面には、お台場のほとりで楽しそうに水遊びをしている子供たちの姿が流れている。近くにあるビルは格子状の構造と光輝く球体があり、まるで西洋のお城みたいだ。
外は真夏日、とても暑い。だけどこの藁ぶき屋根の家の中には、近くの渓流に涼められた風がそよぎ込み、心地よいせせらぎが聞こえてくる。
テレビを見ていたルンルンは少し眠くなったようで、瞼が重くなってきた。
小さな声でパッパを呼ぶ。
「パッパー。ちょっと眠くなってちゃったー」
パッパが広間に行くと、テレビの前にしかれた小さな絨毯の上でルンルンがうつらうつらとしている。
しょうがないなーと言いながらパッパはルンルンの寝床を作ってあげた。ルンルンの巣を作るのはパッパの仕事だ。
小屋から持ってきた藁を集めて丸くし、クッションのように広げてルンルンの体の大きさにぴったりと合ったくぼみを作る。パッパはルンルンをひょいと持ち上げて、藁の寝床にゆっくりと置いた。
ルンルンは羽をたたみ、首をすぼめて気持ちよさそうに眠っている。
ルンルンは夢を見た。それは絵本に出てくるような楽しい夢だった。
中世のヨーロッパの古いお城で舞踏会をしている夢だ。豪華な装飾を施した壁のあちこちに大きな絵が飾られている。天井高く吊るされた大きなシャンデリアの明かりが、鏡のように磨かれた大理石の床に反射して部屋中が輝いている。
夢の中にいるルンルンは、煌びやかな宝石をちりばめた衣装を身にまとい、レースのドレスは輝くほどに美しく、髪飾りに純白の水鳥の羽を付けている。
白いタキシードに身を包んだ王子様が、ルンルンの手をやさしくエスコートする。二人は軽やかな足取りで宮殿の中を舞うように踊った。
ルンルンは、ハッとして目を覚ました。嬉しくなって飛び起きると、急いでパッパのところに行った。
「わたし、王女様になって宮殿の中をダンスしたのよ! パッパにも見せてあげる!」
そういってルンルンは眼瞼を強く閉じ、ウーンとうなった。
どうやら自分の見た夢を頭の中で念じてパッパに送っているつもりのようだ。
パッパは水かきのついた手でルンルンの頭をなでる。
「良かったね、ルンルン。綺麗な翼を広げて宮殿の中を羽ばたいている姿が見えるよ。かわいいアヒルちゃん」
ルンルンは「ちょっと違うんだけど」と思いながら、そおっと目を開けて嬉しそうに羽をパタつかせた。
終わり
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