ルンルン、お料理をする
人里離れた山の麓にひっそりと佇む藁ぶき屋根の古い家。そこには仲のいい夫婦が暮らしていた。
夫は妻のことを”ルンルン”と呼んでいる。
妻は夫のことを”パッパ”と呼ぶ。
家の近くには清流が流れる小さな川があり、その下流には比較的広い湖が広がっている。
今朝早くパッパは湖の方へ魚を獲りに出かけ、お昼ごろ家に戻ってきた。
「今日は魚がいっぱい獲れた。ルンルンが喜ぶだろうな」
パッパは腰に下げたビクを持ち上げ、台所の隅にあるザルに魚を移した。
パッパの持っているビクは便利なもので、竹籠作りで小さいながらも大量の物を入れることができる。それこそ家一軒分の荷物くらいだったら簡単に収めることができる。
ザルに移された魚がピチピチと小さく跳ねている。アユが2匹、イワナが5匹、ヤマメに至っては15匹と大量だ。
近所の川に遊びに行っていたルンルンが帰ってきた。
アヒルのルンルンは自分のことを人間だと思っている。本人はいつも毎朝近所の川へ「仕事に行ってくる」と言って出て行くのだが、そこでは魚を捕まえたり日向ぼっこをしたりと、のんびり過ごしている。
川から帰ってきてニコニコと満足そうな顔をしているルンルン。ザリガニや小魚をいっぱい食べてきたみたいだ。パッパが話しかける。
「ルンルン、今日の川の水はどうだった? 気持ちよかったかい?」
「うん。活きのいいお魚がたくさんいて、獲るのが大変だったけど、私って、ほら、運動神経がいいでしょ。いっぱい獲まえて、もうお腹いっぱいよ」
ルンルンが台所に行って羽を洗おうとしたら、ザルに入った魚がピチピチと跳ねているのに気がついた。
「あっ! お魚がこんなにたくさん。パッパが獲ってきたの?」
「ああそうだよ。これは晩御飯にしよう」
ルンルンが何かを思いついたようだ。
「うーん、そうだ! 今から私が料理するわ!」
「さっき川に行っていっぱい食べてきたばかりでしょ?」
「別腹よ!」
ルンルンはそう言いながら台所わきにある棚を開け、里芋と鍋を取り出して調理を始めた。
白い尾っぽの付いた丸いおしりをひょこひょこと振っている。
はーい、本日のレシピ。「里芋と川魚の卵とじ」でーす!
低カロリーでカリウムも豊富! おまけにカルシウムも採れる健康わくわくクッキング! 美味しい料理を作りましょー。
鍋に水を入れてー、蒸かした里芋と小魚を入れてー、それからタレをよくまぜてー。それからそれから、軽く煮出します。そうそう大切なのは卵。今朝生んだ卵があります。もちろん私が産みました。正真正銘の自家製卵ちゃんです。新鮮な卵を溶きほぐして鍋に加えまーす。弱火にして好みの硬さになったら火を止めますよ。
さーて、本日のお料理。「里芋と川魚の卵とじ」の完成でーす!
ルンルンは料理するときにいつも独り言を言う。
ルンルンはアヒルなのだが、僕はルンルンの話す言葉が理解できる。
人にはそれぞれ生まれ持った特技というものがあるのだが、動物語を解するというのが僕の特殊能力のようだ。
「パッパー。できたわよ、里芋と小魚の卵とじ。おいしそうでしょ?」
パタパタと羽をばたつかせて嬉しそうに跳ねるルンルン。
どちらかというと、里芋よりもキュウリの方がよかったのだが。と思いながら頭のお皿をなでてルンルンの作った料理に舌鼓を打つカッパッパ・パパであった。
おわり
のんびりとした気持ちで読んで頂ければ幸いです。
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