獣王が訪ねてきた
今日も朝から鍛錬をしていると、横から声がかかってきた。
「ガハハ!鍛錬か!良いぞ!」
俺はそんな声が聞こえてきたのでそちらを向くと、ライオンのような顔立ちに人の身体が付いた用な格好の人が居た。
身長は180cmはあるだろうといったかなりの筋肉をしている。
「ガハハ!気にせず続けたまえ」
そう言われたので、俺は気にせずに鍛錬を続けた。
しかしやはり気になってしまうもので、俺は話しかけることにした。
「あの、あなたは誰ですか?」
「ん?わしか?わしはシュバルツ・リッカーという」
シュバルツさんか、俺はシュバルツさんと呼ぶことにして、シュバルツさんは何故ここにいるのか訪ねた。
「ん?それはな、リリのやつがこっちに来なかったから来たまでよ」
ん?どういうことだ?リリが来なかったから来た?訳が分からなかったので、俺は一旦鍛錬を辞めて一緒にリリの元に行くことにした。
「リリ、なんかシュバルツさんって人が来てるんだけど」
「リリよ!なぜ勇者を連れてワシの所には来なかったのだ!」
「シュバルツ!ごめんよ、忘れてたんだよ」
「まぁ誰だって忘れる事はある!ガハハ!それで勇者はどこにいるんだ?」
勇者隣にいますよとは俺は言えず、リリから言ってもらうことにした。
「今シュバルツの隣に居るのが勇者のセイヤだよ」
「なんと!お主が勇者であったか!ガハハ!よろしく!」
シュバルツさんは俺が勇者であっても態度を変えずに接してくれたので、俺も態度を変えずに接することにした。
「よろしくお願いしますシュバルツさん」
「ガハハ!よろしくなセイヤ!ところで、鍛錬はもういいのか?」
「あーちょっと今悩んでて」
「なんだ、どした、聞いてやるぞ」
俺はシュバルツさんに鍛錬が上手くいっていない事を言った。それに対してシュバルツさんから返ってきた言葉は。
「それはセイヤが強者と戦っていないからだろうな」
俺は衝撃を受けた。
確かに今まで戦ってきたのは魔力チートでなんとかなる相手だった。これ以上上を目指すとなると強い人と戦うしかない。だが、リリは戦ってくれないだろう。
影王さんならなにか美味しい物を作れば戦ってくれるかもしれないが、そう悩んでいると。
「ガハハ!ならばワシが相手してやろう」
「シュバルツさんがですか?」
「ああ!これでも獣王を名乗ってるのでな」
そして俺とシュバルツさんは庭に行くことにした。
お互いに身体強化魔法をかけて、俺からまずは攻撃することにした。
地面を蹴り、シュバルツさんの前にほぼ瞬間移動といっていい速度で移動してパンチを放ったが、シュバルツさんはそれを手のひらで受止め手を離した。
「ガハハ!良いパンチだったがまだまだだな!」
そう言われ俺はカチンと来たので3回身体強化魔法をかけた。しかしそのパンチも難なく受け止められる。
「セイヤは身体を上手く扱えてないな」
そう言われワシのを見てろと言われ俺の認識できる速度でパンチを繰り出してきた。
俺はお返しと言わんばかりにその拳を受け止めたが、横から蹴りがとんできた。
俺はその蹴りをまともに受け、数回転がることになった。
「このように身体全身を使って戦わねばいかんよ」
シュバルツさんの言われたことはもっともだった。
俺は次こそはと思いパンチを繰り出し、その後蹴りを放ったが、それすら見通してたように蹴りを受け止められた。
俺は全力でやるしかないと思い、前に発動させてた身体強化魔法を10回かける。
これはかなり体に負担がかかるのでしない方がいいのだが、俺は負けられない戦いだと思い、高速でパンチやキックを放つ。
だが、さすがは獣王と名乗るだけあって、その全てをいなされる。受け止めるわけではなくいなされている点は1歩全身した。
何度かパンチや蹴りを放っていると一部の腱が切れて、痛みで一瞬攻撃が止まってしまった。
そこをシュバルツさんに見抜かれ、俺は鳩尾に1発重いパンチを食らった。
「ガハッ!」
そして意識が遠くなっていく。
そして目が覚めた時はリリの顔が目の前にあった。
地面に寝かされている状態だが、リリが膝枕してくれているのだろうと思って俺はこれは2度目だっけと思った。
今はリリの膝枕を堪能しようと思いそのまま眠りにつくことにした。
リリは悩んでいた。
セイヤがなぜこんなにも強さを求めることにこだわるのか、やはりあの時の事が祟っているのかと。
実際はセイヤがリリの隣に立ちたいと思っている事、リリに対して好意を持っていること、これらのことから力を求めているがそれは本人にしかわからないことだ。
それ故にリリは悩んでいた。
しかし今は自分の膝枕の上でスヤスヤ寝ている大事な人を起こさないようにしようとしていた。
6月から忙しくなりそうなので、更新頻度が少なくなるかもです。




