魔剣の試し斬りをしよう
魔剣の呪いを解いてから数分後俺は冒険者ギルドに来ていた。
昼時ということもあってかなり空いていたがチラホラと人を見掛ける。
その中からある声が聞こえてきた。
「あれが噂の首狩りのドラゴンスレイヤー…」
「あの人ドラゴンスレイヤーだ…」
ドラゴンスレイヤーと呼ばれて鼻が高いが、首狩りはよしてくれと思いながら俺は受付嬢の所にやってきて仕事を貰う。
魔剣はかなりの額だったので実入りの良い仕事を斡旋してもらうことにした。
「こんにちは」
「こんにちは、セイヤさん」
「なにか実入りの良い仕事ないですか?」
「Aランクのセイヤさんに紹介できる仕事はないんですよ」
俺は受付嬢とそんなやり取りをして、実入りの良い仕事がないことを知り、俺はゴブリン狩りをすることにした。
魔王都を出て、数分走る。
するとすぐ近くに森があるので、俺は森に入ってゴブリンを探すことにした。
探査魔法を使用しながら歩いていると弱々しい反応があるのでそちらに向かう。
見つけた!ゴブリンだ。
俺は身体強化魔法をかけ、ゴブリンに向かった。
俺は首を狙い魔剣を振るう。
スパッと切った感覚さえなく、ゴブリンの首を刎ねた。
これは素晴らしいと思いながらゴブリン討伐の証の耳を切る。
俺はその後何度もゴブリンを探しては首を刎ね、そして耳を切り取る作業をした。
何体目だろうか、数えることを辞めたその時に俺は一際大きな反応と、4人の反応を察知した。
他の冒険者がなにか大きな敵と戦っているんだなと思い俺は暇つぶしに見に行くことにした。
その4人の冒険者はなんとワイバーンと戦っていた。
ワイバーンは狡猾な手口で冒険者を攻めていた。
「くっ!」
1人の冒険者がワイバーンの爪に攻撃され満身創痍となっている。
これはまずそうだと思って俺はその4人の前に出た。
「大丈夫?」
そう声をかけ、満身創痍の人にポーションを使用する。
「あ、あなたはAランクの首狩りのドラゴンスレイヤー!」
「助けが必要なら助けるけどどうする?」
首狩りはよせと思いながらも、称号に着いてしまっている以上否定できない。
「助けてください、出会うはずのないワイバーンに手こずっててピンチなんです」
そう言われたので俺は了解とだけ応え、魔剣を鞘に戻しながら無防備になる。
「そんな無防備にしてたら危ないですよ!」
「大丈夫大丈夫!」
無防備な俺を見てワイバーンは狙い時と勘違いし、滑空してきた。
俺はその瞬間を狙い、鞘から魔剣を高速で抜刀した。
「ギャアアアアア!!!」
その声だけを聞いて俺は頭と胴体が離れたワイバーンを尻目にして、みんなの治療をした。
「あのワイバーンを一撃で…」
そんなことを言われたが、俺は気にせず分け前の話をする。
「ワイバーンを見つけたのは君たちで、俺は倒しただけだから五分五分でいいかな?」
「いえ、そんなに貰えませんよ!」
そんなやり取りをして最終的に俺は五分五分を貫き通して半分ずつになった。
とりあえずワイバーンはマジックボックスに入れて、俺達は帰還することにした。
魔剣の試し斬りで、ワイバーンに出会えた事は運命と言ってもいいだろう。
あんなにサックリと切れるもんだから少々ビビりはしたが、試し斬りできて良かった。
冒険者ギルドに戻り、俺達は解体所に向かって行った。
「おう、首狩りのあんちゃん」
「なんで首狩りの方なんですか、ドラゴンスレイヤーでいいでしょ!」
そう抗議したが、今回のワイバーンを出しても首を刎ねているので、首狩りだなと言われた。
「ワイバーンの首を1発でか、あんちゃんはすげぇな、こんだけ状態がいいなら高くなるぜ」
解体のおっちゃんはそう言いながら査定をする。
「これなら金貨200枚ってとこだな」
そう言い俺は金貨を100枚だけ受け取り、もう100枚を4人パーティーに渡した。
「やっぱり貰いすぎでは」
「いいんだよ、そんな細かいことは」
そう言いながら俺は金貨100枚入った麻袋を押し付ける。
「美味いもんでも食べて英気を養いな」
「はい、そうします助けてくれてありがとうございます」
そうお礼を言われて、俺は少し罪悪感を感じていた。
試し斬りのために活用したようなものだからこその罪悪感だ。
まぁそれは心の奥に封印しておいて、俺はゴブリンの耳を受付嬢に渡すことにした。
俺だけ受付嬢の所に行き、ゴブリンの耳が入った麻袋を渡す。
「ゴブリンですか、一体で大銅貨1枚ですが大丈夫でしょうか?」
「あぁ、それで大丈夫」
俺はそう応えながら数を数えているのを待っている。
「ゴブリン耳が60体分あったので、銀貨6枚になります」
「はい、ありがとうございます」
そう言って俺は銀貨6枚を受け取り冒険者ギルドを後にした。
その後冒険者ギルドではセイヤのことで持ち切りだった。
「Aランク冒険者なのに、礼儀正しくていい子よねぇ」
「そうね、あんなにいい子は珍しいくらいよ」
冒険者は野蛮な人が多い中、俺だけは礼儀正しくしているみたいで、受付嬢からの人気は高かった。
「私アタックしちゃおうかしら」
「え!なら私もアタックするわ」
そんな話をされている事など知らずに俺は魔王城でご飯を食べていた。




