護衛依頼をしよう②
午前中は歩きつつ周囲を警戒する。
俺は探査魔法を発動しながら歩いているのである程度の周囲は確認できているためピクニック気分だった。
「セイヤ!あんた気を抜きすぎじゃないかしら!」
ジーナさんにそう言われたが、俺は探査魔法を発動しながら歩いていることを伝えた。
「あんた探査魔法まで使えるの!?」
そう驚かれたが、探査魔法なんて簡単なものだろうと思って聞いてみると。
「バカじゃないの!?探査魔法なんて使えるのは高位の魔族くらいよ!」
そう言われて俺は驚いてしまった。確かに範囲を広げると頭痛がするが、この魔法が高位の魔族くらいしか使えないことに驚いた。これも魔力チートというやつだろう。
「なぜ難しいんですか?」
「まず、使う魔力がバカみたいに多いこと!それから返ってきた反応をとらえる技術力これだけのことが必要なのよ!?」
魔力に関しては無限のようにあるから全く減った感覚すらないし、反応をとらえる技術力と言われても、日本で言うソナーみないなものだと考えたらそこまで技術力が必要かと聞かれたらノーと答えれてしまう。
「そうだったんですね」
「そうだったんですね、じゃないわよ!自分がしてる事の凄さ分かってる!?」
「そう言われても出来るものは出来てしまうとしか」
「きぃー!これが天才というやつなの!?」
ジーナさんは俺の出身を知らないからそう言っているのだろう。俺が勇者であると聞けば態度も変わるんだろうが、まぁ言わないけど。
「まぁまぁジーナ、セイヤの探査魔法を信じて見ようぜ」
ダンさんは気軽に俺の事を信用しようとしてくれている。
まぁ悪い気はしないが、何か裏があるのではと考えてしまうあたりひねくれてしまっているのだろう。
「はぁ、分かったわ!」
ジーナさんは分かってくれたようで俺の探査魔法を信用しようとしてくれているみたいだ。
そのまま何事もなく歩き今日は何も無いかなと思った時探査魔法に引っかかるものがあった。
「探査魔法に引っかかるものがありました、400mほど先の茂みからです」
そう言ってそこまで行くと、ゴブリンが現れた。
これがRPGならSEが流れてからBGMが流れるだろう、と思いながら俺は身体強化をしてゴブリンに近づき蹴りをかます。
グチャっと嫌な音がしてゴブリンは吹っ飛んで行った。
戦闘態勢になってたダンさん達も唖然としている。
「あんた魔法使いよね!?なんで蹴りで倒してるのよ!」
「え?身体強化も魔法ですよね?なら魔法使いなのでは?」
「なんか、あんたといると常識が崩れるわ…」
ジーナさんはそう嘆いている。
「今のが身体強化魔法か!マジか!俺のより上じゃねぇか」
ダンさん的にもなにか思うことがあったのだろう。
「え?え?」
トールさんは困惑している様子だった。
「まぁいいか!そんだけ出来りゃ十分だ」
ダンさんに言われ、俺はCランクに褒められたことに素直に喜ぶことにした。
その日はその後何も無く野営することになった。
俺はマジックボックスから出来たてのご飯をみんなの分出して食べる。
「やっぱいいなマジックボックス!」
「いつか買いましょうよダン!」
「うん、うん」
この三人は仲が良いみたいで、痴情のもつれなどないのかなと心配していたが無さそうだ。
そして野営は2:2で行うことにした。
ダンさん的にはこれも予行練習だという勢いで、あと俺とみんなの仲を深めようということで今日は俺とダンさん、トールとジーナという形で夜の番をすることになった。
「なぁセイヤ」
いつもの調子ではないダンさんに声をかけられ俺は返事をした。
「はい?どうしました?」
「お前はすげぇやつだって今日改めて思った、だからこそ疑問に思うんだ、なんで、Eランクなんだ?お前くらいなら最速でBにでもいけるだろ」
俺はそう言われて考えた。
なぜ俺はずっと低いランクでやってるかを、俺は冒険者というものに憧れも抱いていない。ただやってるだけそう、芯がないのだ。
「俺は目標ってのがないんです、なにかしたいとかもなければなにかしなきゃってのも、だからですかね、俺がEランクなのは」
「そうか、目標ってのは大事だからな、俺はなAランク冒険者になりてぇんだ、誰もが夢見る最高ランクだ」
「なぜダンさんはAランク冒険者になりたいんですか?」
俺は人が目標を持つことややりたいことを聞いて見たいと思った。それが自分の目標になるかもしれないから。
「Aランクっていやドラゴンスレイヤーだ、ドラゴンを倒せるだけの力があれば守りたいものだって守れる、聞いてくれるか?俺の昔の話を」
「はい」
俺はそういい、ダンさんの過去を聞くことにした。
ダンさんは村で生まれた村人の一人だったそうだ。
ダンさんが生まれた時に隣でも子供が生まれてたみたいで、その二人は幼なじみとなったそうだ。
幼なじみと何年か遊びながら過ごしていたダンさんの村は突如魔物に襲われたそうだ。
その時に犠牲となった人は役20名ほどその中にダンさんの幼なじみが含まれていたそうだ。
ダンさんは隣村で物々交換をしていた親に付いていたそうで魔物の襲来には巻き込まれなかったみたいだ。
「俺はあの時ほど力があってあの場にいたらって何度思ったことか…」
そう言って悲壮感に溢れるダンさん、彼はこんな過去を抱えながら生きてきたんだなと俺は思った。
「…」
俺は何も言えなかった。
俺には大切な人を失った経験はある、兄が交通事故で亡くなったことが、だが鬱だった頃の俺は何も感じなかった。
体は反応するんだ、涙だって出るし、その時初めて過呼吸だって起こした。だが、心が動かなかったんだ。
ダンさんは芯がしっかりしてる、それに比べ俺は芯がない。それが大きな違いだろうと。
そしてそのままお互い無言になり、夜の番を交代する時間がやってきた。
今の俺はどうなんだろう、近しい人を亡くしたら悲しむことが出来るのだろうかと、そう思いながら寝ることにした。
翌日今日は護衛2日目だ、今日も俺は探査魔法をしながら護衛をする。
「ダンさん、600m先茂みです」
「あいよ」
そう言いそこまで行き今回は彼らに対処を任せようと思った。
「せいっ!」
ダンさんはそう言いながらモンスターを攻撃していく。
モンスターの攻撃が来る前にトールさんがシールドをダンさんの前に貼り、敵の攻撃を止めている間にジーナが魔法でとどめを刺す。
なんとも見事な連携プレイだ。俺には出来そうにない、出来たとしても1人でやるくらいだ。
「すごいですね」
「まぁお前に比べちゃまだまだだけどな」
「そんなことないですよ」
俺は謙遜した、この力はズルして得たものだからだ。
だがそんなことを知らないダンさんは。
「そんな謙遜するな、胸を張れ胸を」
そう言ってきた、体育会系かと言いたい。
2日目はその魔物の襲撃のみでその後は何事もなく晩御飯に入って夜の番をすることになる。
今日の夜の番はトールさんだ。
俺もトールさんもお互い喋るのが得意ではないので、終始無言のまま夜の番は終わった。
交代の時間になり、ダンさん達を起こして俺は眠りにつくことにした。




