祭りに参加しよう②
今日は待ちに待った祭りの日だ、俺は朝早くから目覚めてしまい、二度寝をすることにした。
二度寝って何故こんなにも気持ち良いのだろうと考える。
まずは一度起きたにも関わらず二度寝ることへの背徳感だろう、そして自分の温もりで温まった布団に戻った時の気持ちよさだろうと考えて俺は寝た。
「お…て、セイヤ、起きてセイヤ」
「んん…」
リリに起こされながら俺は起きる。
「おはようリリ」
「おはようセイヤ、朝ごはんはどうする?祭りで食べる?」
「せっかくだし祭りで食べようかな」
俺はリリにそう聞かれて、せっかくなので祭りのご飯を食べることにした。
「私は運営側の方だから一緒に回れないからごめんね」
「大丈夫、大丈夫リリこそ頑張ってな」
そう言いリリは俺の部屋を出ていった。
さて、俺は起きてから直ぐに着替えて、街に繰り出すことにした。
街は朝から大賑わいである。新しい食べ物に甘味皆知らない食べ物に興味津々だ。
俺は早速いつもの串焼き屋に来ていた。
「よっおっちゃん」
「おう、あんちゃんか」
いつものやり取りである。
それだけ仲が深まった関係でもありたいと思っている。
「おっちゃん串焼き3本ちょうだい」
「あいよ」
俺はおっちゃんに串焼きを頼み、その場で食べる。
「おっちゃん的には今日は儲かりそう?」
「ああ、今回の祭りでは副産物扱いだからな、どうだろうか」
皆物珍しいものばかり買って、いつもの屋台では買う客が少ないのが難点なのだろう。
まぁそれも初日で終わるだろうし、いつもの味を求め出す人も出てくるだろうと俺は思っている。
「じゃあなおっちゃん」
「おうよ!」
そう別れの挨拶をして俺は各屋台を見て回る。
やはり人気なのはアイスクリームだろう。
甘味が少ない世界ではそれも当たり前になってくる。
しかしアイスクリームは注意して欲しい。
冷たい物を食べすぎるとどうなるかを、お腹が痛くなるのである。当たり前だよねって話。
食べすぎて何名か腹痛を訴えてる人がいるがそういうものだ。冷たい物自体そんなに売ってないのか?とか考えつつ俺は喉が乾いたので飲み物屋に行く。
「はい、いらっしゃい」
「オレンジジュース1つください」
「かしこまりました」
そういい、俺はオレンジジュースが出てくるのを待った。
魔法は誰しも使えるが、使わない人もいる。
それは近くに魔法が使える人がいなくて、魔力を流してもらえなかった人達が魔力を感じ取れずに使えないパターンだ。
ごく稀に魔力を流してもらわずとも魔力を感じ取り魔法を使える人がいるが、この店主は無意識で魔法を使っているのか魔力の反応がある。
オレンジジュースも店主による搾りたてだし、痩せ型の店主が出すには不可能な力を出している。
「はい、おまちどうさま」
「ありがとう」
お金を払い俺は搾りたてのオレンジジュースをのみ、コップをその場で返した。
さてと、あとはポテチを食べようかなと思っているとどこのポテチも行列だった。
あの芋がパリッとした食感になっているんだものそりゃみんな食べたがるよなと思い俺はポテチを諦め、自分の屋台に行くことにしたが、どこだ?
すると近づいて来る人がいた。
「これはこれはセイヤさん、あなたのおかげで今日はいい日になりますな」
商業ギルドのギルド長だった。
「あ、どうもギルド長さん」
「セイヤさんは今お困りではないですか?」
「なぜそう思ったんですか?」
「道の真ん中で佇んでてるんですもの、そりゃわかりますよ」
道の真ん中で佇んでいるだけで困っていると分かる、それも発案者の俺を見つけて恩を返しに来たのだろうと思い、俺は自分の屋台がどこか知らないことを告げた。
「そうでしたか、それでは案内させていただきます」
そう言われ俺はギルド長さんの後ろをついて行くことにした。
「ここですよ」
そう言われ案内されたのは串焼き屋の横にある少し豪華な屋台だった。
「おう、あんちゃん、ここの屋台だったんでい」
「みたいですね」
「それでは私はこれで」
そう言いギルド長は去っていった。
確かに屋台にはクレープと書かれている。だが、店主が誰もいないのでまだ誰もお客さんはいない。
「あんちゃんは何を売るんだい?」
「クレープっていう甘い物っすよ」
俺はマジックボックスから1つ取り出して串焼き屋のおっちゃんに渡した。
「ん!うんめぇ!なんでいこれは」
「クレープっていうやつです」
そして俺は屋台に入りお客さんを待った、しかしなかなかお客さんが来ない。
なぜだ?値段設定が悪いのだろうか?大銅貨1枚は取りすぎだっただろうか、とか考えてると孤児院の子たちが来た。
「セイヤ!」
「お兄ちゃん!」
「お兄さん!」
子供たちに色んな呼ばれ方をされ、俺はそちらを向いた。
「やぁいらっしゃいっても子供からお金は取らないんだけどね」
そう言いながら俺は子供達にクレープをご馳走した。
「甘い!美味しい!」
そんな声が飛び交ったからか、ゾロゾロとお客さんが近寄ってくる。
「私にもください」
大銅貨1枚支払われたので、俺はクレープを渡す。
「甘くて美味しいです!」
その声を聞いた人がどんどんと来て、店は行列になっていく。クレープ1個に1000円だぞ?と思いながらも俺は一人一人捌いていく。
累計で200人近くのお客さんを相手にし、商売は疲れるなと思い俺は今後は勘弁しようと心に決めた。
甘いものを食べたらしょっぱ物を食べたくなるもので、隣の串焼き屋も結構儲かってたみたいだ。
「ありがとな、あんちゃん」
「いや、こっちこそありがとう」
そう言いながら握手をした。これが男と男の友情かと思いながら…。まぁそんなことはなく普通に店主と客の立場である。
その後俺は完売の札を置き、散策に戻った。
ポテチはどこも完売の札が置かれていて、食べ損ねたなと思いながらもこれから流行り出すからいつでも食べれるなと思った。
俺は夕食時まで散策をしていたが、これといった収穫はなく、魔王城に帰ることにした。
夕食時になって今回は珍しくリリがいない夕食を過ごした。
多分リリは運営側として仕事をしているんだなと思いながら。
今回の食事もいつもながらにシンプルだろうと思っていると、白パン、スープ、肉、ポテチ、野菜スティック、デザートにはアイスクリームとクレープまで出てきた。
グレイさんはこの辺のは既に完璧にマスターしており、見ただけでマスターするとか天才かと思いながら俺は全て平らげていった。
俺は部屋に戻り今回の収支を確認していた。15万程の黒字である。あれだけ売ってこんだけ黒字なら悪くないなと思いながら眠ることにした。




