デザートを作ろう
俺はその日街中をランニングしていた。
店の準備をしている人に挨拶をしていって、そのまま魔王城に戻った。
朝ごはん前に戻ったこともあり、厨房では朝ごはんの準備をしている所だった。
「セイヤさんどうしました?」
厨房に来ること自体珍しい俺は今日はデザートを作ろうと考えていた事を話した。
「アイスクリームって言うんですけど、冷たくて甘いものなんです」
「アイスクリーム?」
1番に反応したのは影王さんだった。
影王さんは食べるのが大好きということなので、これで買収しようと考えている。
「ふむ、それでどう作るんでしょうか」
「まずは牛乳、卵黄、生クリーム、砂糖を用意してください」
そういうとテキパキとグレイさんが材料を用意してくれた。
「まず、卵黄と砂糖を混ぜます」
そういい俺はスプーンで混ぜ始めた、泡立て器があれば良かったんだけど、そんなのないのでスプーンで代用した。
「次に牛乳と生クリームを合わせて加熱します、鍋の周りがふつふつとするまでです」
そこはグレイさんがやってくれた。
「次は加熱した物を最初に作った卵黄と砂糖を混ぜた物に少しずつ加えて混ぜます」
そこもグレイさんがやってくれて、最後に冷やす作業までやってくれた。
これで完成だ!
グレイさんの反応はどうだろう…
「甘いし溶けてすぐ無くなって口溶けが良いですね」
グレイさんの評価は良いみたいだ。
影王さんはどうだろう。
「!…おいしい!おいしいよ!」
影王さんも気に入ってくれたみたいだ。
「セイヤさんの世界は凄いですねこんなのがあるなんて」
「食にはすごい世界だったので」
実際食と科学がすごい世界だった、だが俺には科学は分からないからこそ食くらいがすごい世界だと思える。
「ではこちらは今日のデザートにしましょうか」
グレイさんがそう言って俺は食堂に移動した。
食堂に移動してきて、リリと会話をする。
「セイヤがまたなにか作ったみたいだね」
なぜかバレているなぜだ。
「まぁそれは食後のお楽しみで」
そうして食事が始まり、皆食後のデザートが楽しみで早食いしていた。
そうして食事も終わり、食後のデザートが出てきた。
「これがそのデザートだね」
リリはそう言って一口食べた。
「ん〜〜甘い!おいしい!」
ほっ、良かった、まぁほとんどがグレイさんが作ってくれたので失敗はないだろうけどみんなおいしい!と言ってくれて良かった。
「セイヤ、物は相談なんだけど」
リリは真剣な顔でこちらを向いて話しかけてきた。
「どうしたんだ?」
真剣な顔に対して俺も真剣に向き合うことにした。
「このデザートをみんなにも広めていいかい?」
「なんだ、そんなことか、全然いいよ」
「え!これがあればセイヤは大儲け出来るのに?」
「今はそこまでお金を必要としてないし、お小遣いだってもらってるからな」
「分かった、ありがとうセイヤ」
そう言ってリリは笑顔でアイスクリームを食べ始めたのだった。
この世界には甘味が少ない、基本は果物をそのまま食べることが多い、俺はこれを機にみんなが甘味を求めて作り出してくれる事を願った。
にしても影王さんはほんとに美味しそうに食べてくれる、もう三杯目だ。
これで少しは買収出来ただろうか?
そして俺は庭に行き、魔法の練習を始めた。
今日は走りながらシールドを出し肉体強化の3つをした。
昨日よりはマシになったがまだぎこちない、だがなかなか様になって来たのでは無いだろうか。
俺はそのまま冒険者ギルドに登録することにした。
冒険者ギルドまでは場所が分からないから影王さんに案内してもらった。
ここが冒険者ギルド…
よくあるテンプレとかあるのだろうか、ここはお子様の来る場所じゃないぜとか、足を引っ掛けられたりなど…。
そんなことを考えながら俺は冒険者ギルドに入った。
冒険者ギルドは汚いイメージがあったが、そんなことはなく、結構綺麗で、酒場とカウンターが一緒にあった。
この場で飲み食いする人もいるのだろう、今は昼時だからかみんな冒険に出かけており人が全く居ない状態だった。
俺はカウンターに行き、冒険者になりたいと伝えた。
「冒険者登録ですね、冒険者は初めてですか?」
「はい」
「それでは説明させていただきますね、ランクはF~Aまでありまして、その人のランクにあった仕事を斡旋させていただいてます」
この辺は派遣会社みたいだなと思いながらも頷く。
「まずはこちらに血を流してください」
そう言われ謎の石版を出された。
目の前にはナイフがあり、血を垂らすだけだが、少しひよってしまった。
俺はナイフを手に取り指先を切り、血を垂らす。
すると石版からカードが出てきたでは無いか、俺は驚いていると。
「あはは、驚く人多いんですよね」
そう言って受付の人はカードを渡してきた。
「カードを紛失した場合銀貨1枚で再発行になるので気をつけてください、あと最後に依頼を受けてから半年経つとカードが失効されるので気をつけてください」
この辺も派遣会社に似ている。
ちょっと嫌な思い出を思い出しながら俺は頷いた。
「えっと名前はセイヤさんですね、セイヤさんが受けられる依頼はこちらになります」
そう言われ渡されたのは迷い猫の捜索だった。
初依頼がこれ!?
俺は渋々その依頼を受けることにした。
「猫探しかぁ…探索魔法を覚えれば良かった」
そう言いながらも俺は猫が居そうな場所を探した、だがどれだけ探しても猫は見つからず、影王さんに案内してもらった。
影王さんは探索魔法を使えるみたいで、すぐに見つけてたみたいだ。
目の前にはお目当ての猫がいる、俺は干し肉を使っておびき寄せることにした。
そうしたら警戒しながらも近づいてきたのでそのまま干し肉をあげた。
すると猫は懐き始めたのかゴロゴロとしながら擦り寄ってきた。
その猫を確保して俺はギルドに戻る、ギルドですぐに依頼完了をして、大銅貨5枚もらいその日の仕事は終わった。
俺は探知の魔法を覚えようと決め、魔王城に帰った。
魔王城に帰り、晩御飯を食べてる最中に冒険者ギルドに登録したことを話した。
「セイヤも頑張ってるね、偉いね」
リリにまたも褒められてしまった、俺は嬉しくなりこの日のご飯も美味しくいただけた。
晩御飯を終え部屋に戻り探索の魔法を覚えることにした。
生き物や植物には魔力があり、その魔力を探すことができる。
今回の猫でいえば、猫という小さな魔力の反応しか最初は分からないが、猫にも魔力の違いがあり、その反応を探し当てるのだ。
俺はとりあえず身近な人の探索魔法を発動させた。
自分を中心として魔力を広げる感じで…。
3階にいるのはこれはリリかな?同じ場所でずっと留まっているから政務でもしているのだろうかと考えながら次は影王さんを探索しようとした。
しかし全然反応に引っかからない、なぜだ?
「影王さん?そこにいますよね?」
「はい、なんですか?」
「探索魔法をしたのに影王さんの反応が無かったので」
「それは魔力を隠蔽してるからですね」
魔力を隠蔽することなんてできるのか!
いつか教えてもらおうと考えながら俺は探索をしていく。
1階の厨房に反応がある、多分グレイさんだろうと思いながらもそのまま範囲を広げていった。
「痛っ!」
範囲を広げようとしたら頭痛が走った。
なるほど、探索魔法にはこういった欠点があるのか、何度かやれば慣れるだろうと思いながらも今日は頭痛でそれどころでは無いので寝ることにした。




