親睦を深めよう
この世界にきて3日目、今俺が頼れるのはリリさん達だけだ。
リリさんとはある程度仲良くなったし、ロビンさんに関しては魔道具関係で仲良くなることを祈ろう。
リスケとルビィに関してはなぜか最初から友好的な関係だが、毎回会うことも無くが続いている。
グレイさんはメイドということもあって立場をわきまえて行動しているのかメイドとの関係になってしまう。
ここはおしゃべりらしい影王さんとの親睦深めようと思い、影王さんを呼んだ。
するとすぐに出てきてくれた。
「なにか用?」
「影王さんって、なにか好きなことってないですか?」
「私は食べることが好き」
「じゃあなにか食べに行きませんか?」
「朝食後に?」
「そうですね、僕の分は少なくしてもらってその後に食べに行きましょう」
そう決めて俺は朝食を少な目にしてもらった。
そしたらリリに大丈夫?と心配されたが、この後影王さんとなにかを食べに行くと説明したら安堵していた。
朝食を食べ終わり、影王さんのおすすめの店を紹介してもらった。
その店はレストラン風の店で、とても入りやすい雰囲気だった。
「ここが私のおすすめ」
「なんかちょっとオシャレで、でも入りやすいいい店ですね」
「そう、いい店」
そういうと影王さんは嬉しそうにしてくれた。
「メニューお決まりでしたらお伺いいたします」
店員さんがやって来てそう言ったら、影王さんはなんとメニューのはしからはしまで注文した。
俺はびっくりして、そんなに食べるのかと思った。
「はい、かしこまりました」
店員さんは慣れた手つきで注文を取り、厨房に行った。
「もしかして常連なんですか?」
「そう」
そういってしばらく待つと注文した物が片っ端から出てきた。それを無言でなおかつ素早くもぐもぐと影王さんは食べていく。
目の前にはすごい勢いで食品を平らげていく影王さん。
「影王さんそんなに食べんるですね」
「うん、食べるのは美味しいし楽しい」
影王さんが少し饒舌になってくれたのか色々と話し出してくれた。
この食べ物はここが美味しいだとか、これは食感が好きだとか色々と話してくれた。
「セイヤは食べないの?」
「あっ、じゃあ少しいただきます」
呼び捨てにされたことに少しびっくりしながらも、目の前にあった肉に手を出そうとした、そしたらあっという声が聞こえた。
「影王さんもしかして肉食べたいんですか?」
そういうとコクコクと頷いた。
「じゃあ俺は野菜でももらいますね」
そういってサラダを少し頂いた、サラダは少しちぎったのを盛り付けただけのような感じで、スティック型では無かった。スティック型の野菜は無いのかと思いこれは夜にでも聞いてみることにしようと思った。
影王さんが全て食べ終わり、お会計をした。俺が連れてきたようなものなので俺が支払うことにした。
全部で銀貨5枚になった。結構食べたんだなと思いながらお会計をする。
「毎度ありがとうございました」
そう店員に見送られながら辺りを散策することにした。
「影王さん、どこかにお菓子売ってる店ってありませんか?」
「それならこっち」
そういって影王さんは案内してくれた。
案内された場所は色々なお菓子が売っている場所だった。
「いらっしゃいませ」
そう店員に言われ、俺は店の中を見て回ることにした。
見て回った結果俺はクッキーだけを買うことにした。
クッキーあるという事は薄力粉があるということだ、ならば色々と作れるということだ。
あまり食べたいお菓子がなかったから自分で作るのも良さげだ。
俺の好物の杏仁豆腐がなかったからここには無いのか、それともこの世界には無いのか。
その辺の材料も売っているのかすら分からない。
でも売っていたら作れる簡単なものだからかこそ材料自体がないと考えた方がいいだろうと思い材料が売ってる店に行ってみた。
杏仁豆腐には欠かせないものがある、それは杏仁霜というもので、元々は杏というものからできている。それ自体がないと杏仁豆腐は作れないと考えた方がいいだろう。
材料が売ってる店に行って店内を見て回ったが、似たような杏はあったが、これで出来るのか不安だった。
店員さんに聞いてみることにした。
「あのすみません、この果物の種だけって売ってないですか?」
「これの種だけ?種だけはないねぇすまないね」
「いえ、ではこちらを10個ください」
「はいよ!大銅貨2枚ね」
そういわれ大銅貨を出そうと思ったが銀貨しかない、銀貨を出した。
「はいよ!大銅貨8枚のお返しだよ、それと商品ね」
商品とお釣りをもらい、店を後にした。
次はゼラチンだ、ゼラチンなんて日本なら即売っているのを買うだけだが、こっちでは1から作らないといけない。
ゼラチンが動物の骨や皮からできているくらいしか知らない。
色々と試すために、俺は肉屋で骨を売ってもらうことにした。
「すみません」
「はいよ!いらっしゃい!」
「あの、骨だけって売ってませんか?」
「骨ぇ?んなもん何に使うんでい」
骨だけを売ってもらおうと思ったら疑惑の目を持たれた。
そりゃ肉屋に来て骨を売ってもらうなんて変な話しだ。
「料理に使うんです」
「骨が料理になるんでい?」
「えぇ、色々と試さないといけませんけど、できます」
そう断言したら疑惑の目は解かれ、骨だけをもらった。なんでも処分するのにお金がかかるみたいで、引き取ってもらってありがたいくらいだったみたいだ。
「ありがとうございます」
「こっちこそありがてえ」
そう言い肉屋の人と別れて魔王城に帰ることにした。
今まで買った物や貰ったものは全部マジックボックスの中に入っている。
帰る途中で影王さんが出てきて
「なにか新しい物が食べれるんですか!?」
と言ってきた。
「はい、色々と試して出来たら影王さんにも振る舞いますよ」
「やった!」
こんな大喜びの影王さんは初めて見るそう思うと失敗した時ように杏をもう少し買うべきだった。
帰りに寄って杏をあと100個ほど買って魔王城に帰ってきた。
そのまま厨房に行きそこにいたグレイさんにお願いをした。
「すみませんグレイさん、一緒に杏の種だけ取り出してくれませんか?」
「えぇいいですよ」
するとすぐ了承してくれて杏をマジックボックスから取り出した。
100個ほどの杏にびっくりしてたが、グレイさんはパパぱっと種だけを取り出した。その間役1秒、俺が驚いていると。
「魔法でなんとでもなるんですよ」
そういいウィンクしてきた。ドキリとしてしまった。
これはグレイさんに頼んだ方がいいのではと思い、肉屋からもらった骨を出して事を説明した。
「なるほど、つまりこの骨からゼラチン?というものを取り出せばいいんですね?」
「そうなんです、たんぱく質というもので、熱水することによって出てくる成分なんですけど、俺も詳しくは分からなくて」
「なるほど、では色々と試してみましょう」
その後何度か試して出来てしまった。
「これがゼラチンというやつですか」
サラサラとしていてそれでいて白い色、こんな簡単に出来てしまうものなのか!とメイドすごいと思っていると。
「これは何に使うんですか?」
「あっそうだった、杏の種を潰して、中の白いやつをすり潰すんですが…ってもうできてる!?」
自分が説明してる中グレイさんは既に作業に取り掛かってたようで、説明が終わった時には既に出来ていた。
「グレイさん凄いです…」
「これくらいはメイドとしての嗜みです」
ドヤ顔である。こんなグレイさんを見るのは珍しい、それともよくドヤ顔をしているのだろうか。
「次にですね、水とゼラチンを入れてふやかして、牛乳、水、さっき潰した杏仁霜というものを沸騰直前まで温めて、火を止めてから、ふやかしたゼラチンにグラニュー糖はないから砂糖を入れて混ぜて、ザルで濾します」
そう説明しながらグレイさんは手際よく作業していく。
「次に、氷水の中にボウルごと入れて粗熱をとってください」
そういうと魔法で冷やし、粗熱まで取った。
魔法ってすごいと思ってるとグレイさんから催促された。
「すみません、次にですねそのボウルに生クリームを入れてください、あとは型に入れて冷やし固めます」
そういってグレイさんは夕食に、出すように5人分に分けて冷やした。グレイさんは食べないのだろうか?
そう思っていたら既に1つ完成しており、既に味見をしていた。
「ふむ、これが杏仁豆腐ですか」
ぷるぷるとした食感にグレイさんが驚いている。
これはプリンもいけるのではと思っていたが、今回は色々と疲れたので、プリンは後日にしよう。
「セイヤさんもどうぞ」
そういい食べかけを渡された、残念ながら関節キスとはいかず新しいスプーンを用意されてた。
食べた食感と風味これこそ杏仁豆腐だ!そう思い俺は好物を手に入れたのだった。
夕飯時になり、俺からということでみんなに杏仁豆腐を食べてもらった。みんなからの評判はよく、定期的にほしいと言われるほどだった。
そんな中リリは考えてた、これは一事業できるのではないかとだが、作り方も曖昧で出来たものを果たして他の人が作れるのかということを。
「リリどうした?」
「いや、セイヤの世界の食は進んでるなぁと思ってただけだよ」
日本は確かに食文化が、凄いといえばすごい、色んな料理を取り入れているから、こそ出せるものだ。
「そういやリリ、スティック型の野菜ってないのか?」
「スティック型の野菜?」
「そう、スティック状にカットして、それに調味料を付けて食べるってだけの、野菜なんだけど」
「確かにそういうのはないね、セイヤ凄いよ!それだけでも価値のある情報だよ!」
「いや、俺の世界には普通にあったものだからさ」
リリはそれを事業にしようとしていた。野菜をカットして調味料を、添えるだけだから簡単だし。
その後夕食は終わり、俺は部屋に戻り今日は魔法の練習をせずに風呂に入り寝ることにした。
急だが俺の過去を話そう、俺は4人兄弟の1番下に産まれてきた。最初は可愛がられてたが、ひとつ上の兄がサッカー一筋でそれに親も付きっきりで俺はあまり愛されてないのではないかと思った。
そして俺は努力が嫌いだ、正確には褒められない努力が嫌いだ。
昔テストで初めて100点を取ったことがある、その時は努力をして頑張って取れた100点だった。嬉しくて親に褒めてもらえると思っていたが、そんなことはなくそんなの当たり前でしょといった感じだった。
それ以降俺は努力をしなくなった。
努力をしなくなった俺が行き着いた先がニートだった。
実はニートは初めてではないのだ。
就活もせずに何もしなかった結果ニートになって、そこから少し立ち直り派遣社員という道具として扱われる人生を歩み始めた。
だからこそ俺は努力が嫌いだ。
だが今回は褒めてもらえるから少しは努力をしてもいいかなって思いながら眠りについた。




