表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレスキル「逃げる」で俺は極限低レベルのまま最強を目指す ~経験値抑制&レベル1でスキルポイントが死ぬほどインフレ、スキルが取り放題になった件~  作者: 天宮暁
第五章「分断」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

190/264

186 ダンジョンデート(後編)

 俺と芹香は、ほどなくして新宿中央公園ダンジョンの最奥へとたどり着いた。

 普通は二、三日かけて攻略するダンジョンらしいんだが、ほんの数時間しかかからなかったな。


「まさか、ほんとに歓迎会までに踏破できちゃうなんて……」


 呆れる芹香に、


「ボス戦くらいは一緒にやるか? ボスが持てば、だけどな」


「うん、いいね。やってみよう」


 新宿中央公園ダンジョンはモンスターが多種に渡ることもあって、今回は同種族400体連続撃破の特殊条件は狙ってない。

 低レベル踏破の特殊条件は満たせないことになるが……まあ、いつでも満たせる条件だからいいだろう。


 そもそも、今日の目的は探索じゃない。

 歓迎会までのウォーミングアップを兼ねた、芹香とのデート(?)である。


 ボス部屋にいるダンジョンボスは、オークキング。

 耐久力には定評のあるモンスターだ。

 逆に言えば、そのくらいしか取り柄がないともいえる。

 あまり期待はしてなかったが、残念ながらシークレットモンスターじゃなかったな。


 これまでの道中で、互いに戦い方は見えてきた。


 ボス部屋に入れば、ボスにはどっちにせよ気づかれる。

 気配隠匿からの広域殲滅魔法という手は使えない。

 となると、勇者のアビリティ【オーバーリミット】で勇者自身の性能を上げ、シンプルに斬り伏せるのが早そうだ。

 芹香とうまく合わせられるかは未知数だが、せっかくの機会だからやってみよう。


「「っせーの!」」


 俺と芹香は速度を合わせ、オークキングに左右から迫る。

 敏捷が圧倒的に足りないオークキングは、俺と芹香を見失う。

 俺の魔剣がオークキングの左脇腹から入って首の前側までを抜け、芹香の斬撃が右の後頭部から入って胸までを割く。

 ほぼ同時の二撃によって、オークキングの胴が上下に分かれた。

 芹香に合わせてレベルレイズされてるからどうかと思ったが、やってみれば一撃だ。



《ダンジョンボスを倒した!》

《ダンジョンボスに経験値はありません。》

《SPを4225獲得。》

《23,190,475円を獲得。》

《「珍味『王冠印のオークハム』」を手に入れた!》



「あっ、珍味だ。やったね。歓迎会に出せるよ」


 手の中に現れたハムの塊に、芹香が弾んだ声を出す。


 ……今倒したばかりのオークキングの肉かと思うとあまり食欲が湧かないんだが。

 まあ、それだけ美味しいってことなんだろう。


 一方俺は、「天の声」の続きに期待する。



《特殊条件の達成を確認。スキル「シンクロ」を手に入れました。》


Congratulations !!! ────────────

特殊条件達成:「Aランク以上のダンジョンのダンジョンボスに対し、百分の一秒以下のズレで同時にファイナルアタックとなる一撃を命中させる。」

報酬:スキル「シンクロ」

────────────────────

Skill─────────────────

シンクロ1

スキル「シンクロ」を発動した者同士で、S.Lv回分互いの攻撃タイミングを同期させることができる。同期中はすべての攻撃の速度と威力が同期している中で最も高い者の値と等しくなる。同期した攻撃が対象に同時に命中すると、(命中した攻撃の数×100)%のダメージボーナスが発生する。このスキルの発動可能回数は一戦闘中にS.Lv回まで。

────────────────────



「わっ、なにこれ!?」


 俺と同じ「天の声」が聞こえたんだろう、芹香が驚く。


「これが悠人の言ってた特殊条件なんだね。へぇ~」


 と、芹香が感心する。

 

「……でも、スキルとしてはどうなんだ? ダメージ効率はいいけど、仲間も『シンクロ』を持ってないと意味がないよな」


 同期した攻撃が必ずどちらも当たるとは限らないだろうし。

 同期することによって攻撃が読まれやすくなるという副作用もありそうだ。


 だが、このスキルを使えば、すべての攻撃が同期した中で最速・最強の攻撃と等しい速度・威力になるわけだ。

 「シンクロ」する人数には制限がないようだから、たとえば五人で同時攻撃に成功すれば、その五人の中で最も威力の高い攻撃×5となるのに加え、(命中した攻撃の数×100)%のダメージボーナス――この場合では500%ものダメージボーナスが発生する。

 最もダメージの高い攻撃×5の+500%(6倍)だから、シンクロした中でいちばん強い攻撃の30倍ものダメージが出ることになる。


 俺がもしこのスキルを活かそうとするなら――


「じゃ、私と悠人だけの必殺技ってことだね」


 と、嬉しそうに微笑む芹香。


「そ、そうだな……」


 嬉しそうな芹香に、俺は頭に浮かんだアイデアを飲み込んだ。

 だって、言えないだろ?

 「シンクロ」をミニスライムたちに付与すれば使えそうじゃね? ……とはな。


 今回はこれだけか?

 ……と思ったのだが、「天の声」には続きがあった。



《特殊条件の達成を確認。スキル「SP能力値変換」を手に入れました。》


Congratulations !!! ────────────

特殊条件達成:「1000回以上スキルを取得、若しくはスキルのレベルアップを行う。」

報酬:スキル「SP能力値変換」

────────────────────

Skill─────────────────

SP能力値変換

SPを能力値に直接変換することができる。変換の効率は消費したSPの90%。

────────────────────



「うおっ」


 と声を漏らす俺に、芹香が首を傾げる。


「どうしたの?」


「ああ、そっか。今のは俺だけか」


 今芹香と共同で手に入れた「シンクロ」が、通算千個目のスキル取得・レベルアップになってたらしい。


 手に入れた「SP能力値変換」は……どうだろうな。

 「攻撃力強化」のような能力値強化系スキルは、消費したSPの1.2倍分能力値が上昇する。

 だが、この「SP能力値変換」では90%――0.9倍になってしまう。


 能力値強化系スキルは、能力値が多めに上がる代わりに、スキルとしての効果が何もない。

 逆に言えば、スキルとしての効果がない代わりに、能力値が2割増しで上がるということだ。

 しかし、「SP能力値変換」でSPを直接能力値に変えると、上昇する能力値は1割減になってしまう。


 それなら、普通にスキルを取得したほうが得だよな。

 普通にスキルを取得した場合、SPから能力値への変換効率は等倍だ。

 しかも、能力値ボーナスとは別に、そのスキル本来の効果も手に入る。

 ……まあ、一般的な探索者の発想では、スキルを取るのはあくまでもスキルの効果を得るためであって、能力値ボーナスのほうがおまけみたいなもんなんだけどな。


 ともあれ、「SP能力値変換」はSP的に不利なレートになっている。


 設定ミスか?と疑いたくなるところだが、考えてみると、使い所がまったくないわけでもなさそうだ。


 たとえば、「攻撃力」をもう少し上げたいが、攻撃力に能力値ボーナスが付くような未取得のスキルがない、あるいは、取得済みのスキルのレベルを上げるにはSPが足りない、といった状況だな。

 取ろうとしてるのがマイナーなスキルのため、事前にどの能力値にボーナスが付くかわからない、なんて状況もありそうだ。

 スキル欄がごちゃつくのを嫌ってあえてスキルを取らず「SP能力値変換」を使うという発想も(贅沢な発想だが)なくはない。


 あるいは、戦闘中に火力が足りないと思ったときに、その場ですぐに攻撃力や魔力を上げられる……というのもメリットだろうな。

 戦闘中にもスキルの取得は可能だが、悠長にスキルの能力値ボーナスまで吟味してスキルを選ぶような余裕はない。

 それだけの余裕があるんなら、そもそも戦闘中にスキルを取ろうとなんて思ってない、とも言えそうだ。


 変換効率の問題はあるが、SPがうなるほど貯まってる俺にとっては、どこかで使えそうなスキルだな。


 さあ、「天の声」はまだ続くのか?


 一応、続きはした。



《新宿中央公園ダンジョンを踏破しました!》



 だが、これで終わりだ。

 今回は芹香が一緒だから、二回目以降でも満たせる低レベルの特殊条件は満たせなかった。

 二人でAランクダンジョンを踏破、的な条件があるかもと思ったが、よく考えてみるとラケシスがいるので今は三人パーティなんだよな。

 三人パーティでAランクダンジョンを踏破したことのある探索者は、探せばそれなりにいるはずだ。

 もし三人での踏破に特殊条件があったなら、特殊条件の存在が既に明るみに出てないとおかしいだろう。


 最後に特殊条件がなかったせいで微妙に肩透かしを食らった俺に、芹香が明るい声で言ってくる。


「うん、やったね!」


 そう言って拳を突き出してくる芹香に、俺も拳を軽く当てる。


「ああ、やったな」


 ソロより効率は落ちるだろうが、たまにはこんなのも悪くない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版・コミックス好評発売中です!
1c5u8rmvlxl54n9vn1j7a80g1xm_dhm_go_np_6ifk.jpg
書籍版①~③はこちらから:
https://kc.kodansha.co.jp/title?code=1000041583
コミックス①~④はこちらから:
ttps://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000361655h
https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000366526
https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000370276
https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000370578
最新話はヤンマガWeb、マガポケ、ニコニコ漫画にて連載中!
― 新着の感想 ―
[一言] 取得/レベルアップできるスキルが無くなっても成長ができるようになりましたね。 取得できるスキルの枯渇イコール成長限界になるのでどう克服していくかは気になってたので。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ