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ハズレスキル「逃げる」で俺は極限低レベルのまま最強を目指す ~経験値抑制&レベル1でスキルポイントが死ぬほどインフレ、スキルが取り放題になった件~  作者: 天宮暁
第四章「異聞」

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164/264

160 今回のご褒美

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願い致します!

「ご褒美?」


「そう。君の希望を聞いてあげてもいいんだけど、今回はほぼ決まってるようなものだね」


「どういうことだ?」


「やっぱり、まだ気づいてないみたいだね。一度自分のステータスを見てごらん?」


「えっ……」


 いきなり言われて戸惑ったが、べつに逆らう必要もないか。


「ステータスオープン」



Status──────────────────

蔵式悠人(国内/*ERROR!参照先の情報が矛盾しています*/レベルランキング4位)

/*ERROR!存在しない項目です*/勇者A/魔王S/魔剣士S/簒奪者S/ダンジョンマスター S

レベル1/*ERROR!能力値が高い側のレベルを参照します*/

HP 190,591/190,591/*ERROR!二重に定義されています*/

MP 824,074/824,074/*ERROR!二重に定義されています*/

攻撃力  472,488

防御力  102,377

魔 力 1,782,714

精神力  397,264

敏 捷 2,497,264

幸 運 1,106,815

/*ERROR!以下の能力値???は存在しません*/

STR???

VIT???

INT???

MND???

DEX???

AGI???

LCK???


・固有スキル

逃げる S.Lv3


・取得スキル

スキルコンボ5 再鑑定 アーカイブ 分裂1


装備

(なし)

────────────────────



「うおっ!?」


 なんかエラーまみれになってるんだが!?


「そこも問題だけど、ジョブのほうも見てごらん? 勇者だけでいいよ」


「あ、ああ……」


 俺は言われたとおりに勇者のジョブステータスを開く。



Job────────────────────

勇者 ランクA


「悪を憎むすべてのものよ、われに続け!」


~終末の世界に残されし最後の希望、あるいは虚妄の正義に駆られたただの道化~


……(省略)……


◇アビリティ

【オーバーリミット】

特定のジョブのあらゆる性能を、ごくわずかな時間爆発的に高める。


【固有スキル??? 逃げる Skill──────────────────逃げるS.Lv1 戦闘から逃げることができる。S.Lv2 現実から逃げることができる。S.Lv3 困難から逃げることができる。────────────────────/*error!アビリティ定義のフォーマットが間違っています*/S.Lv1 「戦闘から逃げる」使用条件:戦闘エリアの外側に向かって(30-5×S.Lv)秒間逃げ続ける。戦闘エリアの範囲は、敵の初期位置の中心から半径(10×S.Lv)メートルの空間。特記事項:逃走成功時に所持金を落とす。落とす金額は、所持金の({50-10×S.Lv}±20)%の範囲でランダムに決まる。落とす金額がマイナスになることはない。S.Lv2「現実から逃げる」使用条件:(5-S.Lv)秒間、現実から逃れたいと強く念じ続ける。特記事項:「現実から逃げる」で入ることができる異空間では、自分の意思によって現実と異空間の時の流れの相対速度を変化させることができる。変化させられる幅は(0~S.Lv)倍まで。元の現実に戻る意思を失った場合には、異空間から出ることができなくなる。連続して使用するほどに元の現実に戻りたくなくなる。S.Lv3「困難から逃げる」使用条件:自分の置かれた状況が完全に解決不能であることを心の底から認識する。特記事項:「困難から逃げる」による因果の遡行では、自分自身に属する因果は最新の状態のまま保持される。ただし、因果の認識は人間の魂には負荷が大きいため、因果の遡行に時間をかけすぎると自分自身の因果が摩滅する。また、認識した「困難」と直接的な関係がない時点まで因果を遡行することはできない。同じ困難から繰り返し逃げることは可能だが、そのたびに魂に負け癖がつき、自己肯定感が長期に渡って損なわれる。能力値補正:「逃げる」の所有者は、各能力値に以下の補正を常に受ける。HP-20%攻撃力???-50%防御力???-60%精神力???+20%敏捷???+200%幸運???+400%】


◇サポートアビリティ

【/error!アビリティが習得されていません】


◇ユニークボーナス

……

・超常的な存在から授かる特殊な系統の魔法をまだ習得していない/error!ジョブ「勇者」の定義を満たしていません

……

────────────────────



「……なんだこりゃ」


 勇者の二枠目のアビリティに「逃げる」が押し込まれてる……のか?


「君も気づいたように、固有スキルはスキル世界のスキルライブラリを参照する必要がない。固有スキルは君自身の中にある。ただ、スキルというシステムの存在しないジョブ世界でスキルを使用するには、システム的な辻褄合わせが必要だったんだろうね。固有スキルという概念にしいて言えば近いかな、という場所に無理やり押し込まれたというわけさ」


「な、なるほど」


「好都合なことに、君の勇者はアビリティが一つ空いていたしね」


「そういえば、なんで勇者のアビリティが一つ欠けてんだ? 魔王は最初から二つあったのに」


 通常、どのジョブでもアビリティは一つしかつかないはずだが、勇者と魔王だけはアビリティの枠が二つあった。

 魔王は【形態変化】と【無敵結界β】だな。


 サポートアビリティが空いてるのはユニークボーナスにある「超常的な存在から授かる特殊な系統の魔法をまだ習得していない」のせいだろう。

 アビリティの二枠目が埋まってないのも同じ理由かと思っていたが、今埋まってるところを見ると別の理由があるみたいだよな。


 俺の質問に、シュプレフニルが笑みを浮かべる。


「そこが興味深いところでね。君に試練を与えるに当たって、僕は君に固有スキルのことを忘却させた。スキル世界での記憶も忘却させたけど、固有スキルはさらに厳重に忘れてもらうことにしたんだ」


「なんでそんな面倒なことを……」


「もちろん、それが君のアイデンティティだからさ。青い鳥を探して旅に出た青年は、旅先で艱難辛苦を乗り越えるが、それでも青い鳥は見つからない。青い鳥は君自身の中にいたからさ」


「ありふれた話だな」


「ありふれてるからこそいいんじゃないか。苦難の中で自分自身のアイデンティティを取り戻すことができるかどうか……。魂を錬成するのに、これ以上にふさわしいものはない。古今東西、世界を問わず、手を変え品を変え変奏されてきた普遍のテーマだといえるよね」


「……その話が勇者のアビリティとどう関わるんだ?」


「おっと、そうだった。僕は君に『逃げる』を忘れてもらうことにしたけど、それだけでは何かの拍子に思い出さないとも限らない。だから僕は、固有スキルの『逃げる』のみならず、『逃げる』という言葉そのもの――さらには『逃げる』という発想そのものを縛ってしまうことにした」


「おかげで散々苦労したぞ……」


 時折頭痛に襲われたのはそのせいか。


「ただ、そのことには思わぬ副作用があった。それが、勇者のアビリティなんだね。ここまで言えば気づくかもしれないけど……どうかな?」


 と、悪戯っぽくシュプレフニルが言ってくる。


「ええと……」


 ひとつ気になってたのは、勇者のジョブ説明文のエラーだな。

 ジョブ世界ではこんな表示になっていた。


Job──────────────────

◇アビリティ

【オーバーリミット】

特定のジョブのあらゆる性能を、ごくわずかな時間爆発的に高める。


【/error!アビリティ定義のフォーマットが間違っています】


◇サポートアビリティ

【/error!アビリティが習得されていません】

────────────────────


 二枠目のアビリティとサポートアビリティとで、なぜエラーの文言が違うのか?

 同じ原因のエラーなら文言も同じになるはずだからな。


「アビリティ定義のフォーマットが間違っている……つまり、二枠目は空なんじゃなくて、フォーマット違いの『定義』が既に存在したってことだよな?」


「うんうん、それで?」


「今、この二枠目には無理やり『逃げる』が押し込まれてる。フォーマット違いの『定義』とやらも『逃げる』のものだったと考えるのが自然だ」


 もちろん、「逃げる」以外の何かがあった可能性もなくはない。

 でも、そんな複雑な想定をする前に、まずは素直にそう考えてみるべきだろう。


「いい推論だと思うよ」


「……でも、固有スキルの『逃げる』が入る場所は、他のジョブのアビリティ枠でもよかったはずだ。同じジョブでもアビリティには個人差があるからな」


 「剣士」や「魔法使い」のような基本職でもいまだに未発見のアビリティが見つかることもあるらしい。

 その意味では、ジョブ世界の中でスキル世界における固有スキルといちばん近いのはアビリティだといえる。


 俺のジョブでいえば……そうだな。

 「簒奪者」あたりのアビリティに「逃げる」が入ってたとしても、そんなに違和感はなかったはずだ。


「それなのに、勇者でなければならなかったのはなぜか?」


 この質問が思いつけば、答えのほうも思いつく。


「……俺の勇者のアビリティの二枠目は、もともと(・・・・)『逃げる』だったんだ」


 固有スキルではなく、アビリティとしての、だけどな。


「固有スキルの『逃げる』と勇者のアビリティ『逃げる』は、システムがごっちゃに扱うくらいには性能が似てたんだろう。俺の固有スキルをジョブ世界のシステムは勇者のアビリティだと誤認したんだ」


 レベルやHP、MPも、今のステータスでは一つに統合されている。

 二つの世界のシステムは大きく違うが、それでも共通点がないわけじゃない。

 スキルがユニークボーナスに変換されたり、ジョブの技能やアビリティとしてまとめられたりする複雑な処理の一環として、固有スキルが似たような特定のアビリティに替わったとしてもおかしくはないだろう。


「……ご明答。さすがだね」


 満面の笑みで、シュプレフニルがうなずいた。


「俺に『逃げる』を忘却させたことも影響してるんだろうな」


 スキル世界のスキルがスキルライブラリを必要とするように、ジョブ世界のアビリティも同じようなライブラリを必要とするんだろう。

 エラー状態の勇者の「逃げる」は、アビリティライブラリ(仮)を参照できなかった。

 それがバグの原因なんじゃないか?

 俺が固有スキル「逃げる」を思い出すことで勇者の「逃げる」が使用可能になったのか、それとも勇者のアビリティとしてではなく単に固有スキルとして「逃げる」を使い、その際にアビリティ欄がバグって更新されたのかはわからない。


「……まさか、勇者のアビリティが『逃げる』とはな」


「ふさわしいだろう? 君の世界でも、勇者はときに戦い、ときに逃げるものなんじゃないかな?」


「……どうかな。たいていのRPGは出てきた敵はとりあえず殴り倒して進むもんだと思うが」


 RTAリアルタイムアタックや縛りプレイならともかく、通常プレイで敵を吟味することはあまりない。

 強い敵からは逃げること前提のゲームバランスにされたら、大半のプレイヤーがフラストレーションを溜めるだろう。

 道中のザコでパーティが半壊して逃げるような状況になったらセーブポイントからやり直すプレイヤーも多そうだ。


「勇気がなければ逃げられない。戦うことは、ある意味で簡単さ。たとえ死んだとしてもよく戦ったと思ってもらえる。死後の不名誉を心配する必要がないんだからね。生き恥を晒すくらいなら犬死にしたほうがましだ――そう考える人たちもいる」


「……かもな」


「勇者は魔王を倒さなければならない。だから、魔王を倒す前に死ぬわけにはいかない。そのためには逃げるしかないことだってある。逃げて逃げて……最後に勝てればそれでいい。まず生き延びなければ魔王は倒せない。勇敢に戦うだけが勇者の役目じゃないってことだね」


「俺はその魔王も兼ねてるんだけどな」


 そもそも俺はどちらにも向いてないと思うが。

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― 新着の感想 ―
ときのすなとかいう超有能アイテム
[気になる点] ん? スキル世界がMMOに例えるなら、ジョブ世界は探索型RPGであってるよね?  逃げる(主人公個人のスキル)が 逃げる(剪定{されるはずだった}世界由来のコマンド) のバックアップ受…
[良い点] 胸アツ設定だ、いいですねー!
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