07 そして少女は覚醒する
……ッ!?
ふわりと、一瞬の浮遊感。
次の瞬間、私の視界は黒に塗りつぶされ……と思ったのだが、不思議なことに、落下を続けるその黒い世界の中で、私を突き落とした神官長たちの様子が、切り取られた映像のように目の前に浮かび上がって見えた。
「おお、穢れの位置が下がって行くぞ」「ふん、『ゴミまみれ』といえども、生贄は生贄。これであと10年は持つだろう」「あー、疲れた疲れた。さっさと帰ってキャシーヌ達に慰めて貰いたいもんだぜ」
彼らは一仕事終わった、とばかりにさっさと山から下りて行く。
そこで映像はブチっと途切れた。
理由は明白。
黒く、ねちっこく、ヌルネバした穢れが、私の全身に張り付いたからだ。
一瞬にして脳内では走馬灯が駆け巡る。
そして、今まで必死に蓋をしていた感情のタガがパキリ、と壊れた。
なんで? なんで?
ナンデ、ナンデ、ナンデ!?
ひどい
わたし これから がんばろうと していたのに
わたし ここで しぬの?
最後に脳内に浮かんだのは、死んだはずの優しかった両親ではなく、私を馬鹿にしたように笑うキャシーヌさんと神官長の顔だった。
「うがああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」
死にたくない、絶対、死にたくないッ!!
こんなところで死んでたまるかあああぁぁッ!!
私は全身全霊を込めて【吸着】の力を発動させた。
ズギュルォンッ……
私に絡みついた漆黒の闇が、凄い勢いで私の中に入ってくる。
が、それと同じ速度でどんどん体内がキラキラであふれて行く。
傷を吸着した時みたいな、全身を貫く痛みに、身体は涙を零しているのだろう。
眼球から熱い血潮が溢れているような感覚がある。
だが、それを遥かに上回る「ふざけんな!」という気持ちが、私の力を暴走させていた。
凄まじい吸引力。脳が焦げ付きそうな激情。
私を嘲り、愚弄し、嘲笑し、散々利用して、踏みにじって、捨て去ったアイツ等の……
アイツ等の思惑どおり、おとなしく死んでたまるかぁぁぁぁ!!!!
「【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】……」
キュゴゴゴゴゴゴ……!!
全身を襲う激痛、ミシミシと悲鳴を上げる骨格。
体中から噴き出しているのは、汗なのか、それとも血なのか。
「【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】【吸着】全部、全部っ、ぜんぶ吸い尽くすまで【吸着】ゥゥゥッ!!!」
ぷちぷち、ぶちぶち、じゅわっ、
……シュパッ、パァーーンッ!!!
その時、体の中で何かが弾けた。
【吸着スキルのレベルがあがりました】
【浄化能力を習得】
!?