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04 特殊性癖の片鱗 


「ま、眩しいっ!?」「こ、これが……癒しの光!?」


 偽りの光に感動しているらしい青年たちの声が耳を素通りする。

 

 【吸着】スキルを使って取り込んだ傷が、あの虹色のキラキラを私の体の中で駆け巡らせてはシュワシュワぷちぷち弾けさせている。


 ……当然、痛い。

 けれど、同時にふわふわとした感覚が体の中を駆け巡る。

 思わず【吸着】する前に緩んでしまった笑顔を引き締めた。

 イタイ……痛いんだけど、気持ちいい……!

 キタキモチイ……


 いつの頃からか、吸い取った傷を消そうと力を込めていると、ふわふわ、ぷちぷちするような、あったかいような、褒められているような……不思議な気分になるのである。


 そんな訳で、実は、この作業……私にとってかなり好きな部類に入る。


 重傷を装って堂々と寝ていることもできる……というか、動き回れる程、痛みがない訳ではないので、この作業中は、流石に誰も私に声をかけてこない。

 少なくとも、キャシーヌさん達が、よってたかって面倒な仕事を押し付けてこないし、厄介な失敗を擦り付けられたりもしない。

 普通の休憩時間よりも、余程まともな休息が取れる。


 ……イタタタタ……んっ、で、でも気持ちいい……はぁはぁ……


 私の腹部からは、じわじわと赤い血が滲み出ている。

 この傷は深いから、結構……長時間この感覚を楽しめそうだ。


 多少、息が荒くなってしまうのは条件反射。

 涙と涎が自動放水されるのは、まぁ生理現象。

 この時ばかりは、身体が一番楽な体勢にしても、何もいわれない。

 私は、さっさと横になると、傷に力を籠め続ける作業に集中する。


 あぁ……イタイ……けど、体内がシュワシュワぷちぷちして、心地良い……


 【吸着】した傷をキラキラに変えている間、神官長やキャシーヌさんと青年さん達が何か話をしていたんだけど、一切、耳に入らなかった。


 一応、夕食までに、血と涎で汚したその床をキチンと奇麗にしておかないと、食事抜き……という内容を話していたような気がするんだけど、必死に腹の傷に力を注いでいたせいで、詳細は覚えていない。


「……ふぅ」


 ようやく私が一息ついて体を起こすと、もう、時刻は真夜中。

 夕食など、とうの昔に終わっている時間帯だ。


 普通、あんな深い傷、完治するのに何日もかかるのに、【吸着】で吸い取ると、数刻で完全に元通り。

 体内がキラキラで満ちているみたいで、不思議な達成感がある。

 私って、もしかしてマゾなのかなぁ?

 だけど、気持ちいいのは【吸着】した怪我や病気を消し去っている時だけだから、そんなことはないと思うんだけど……


 私は、すっかり元に戻った、ぺたんこのお腹をスルリと撫で、ご奉仕部屋の床から立ち上がった。

 

 見れば、わずかに血痕と涙と涎の跡がご奉仕部屋の床にこびりついている。

 ……これを残しておいたら、当然、折檻が待っている。

 私は、床に残る汚れもしっかりと【吸着】してから、部屋を後にした。



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