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第5話 お茶会①
森の出口付近になると、なにやら複数の話し声が聞こえてきた。
『アリス』についてなにか知っているかも、と、歩みを早めた。
出口だと思っていたその場所は、明るい光が差し込んでいる少し開けた空間があるだけで、森はまだ続くようだった。
広場の中央には大きなテーブルがあり、食器やティーポットがずらりと並べられ、いくつかある椅子に座っている3つの影もあった。
「ねえ、もしかして『白ウサギ』じゃない?」
こちらに気付いたのは、頭に藁を乗せた茶色いウサギだった。
「さあ早く来て!お茶会はもう始まってるよ!」
茶色いウサギがこちらに駆け寄ってきて、テーブルのほうに手を引っ張る。
「やっときましたか。待ちくたびれて、もうお茶会を始めていましたよ『白ウサギ』」
そう微笑むのはシルクハットを被った男性だ。
その奥にはテーブルに突っ伏しているネズミ?がいたが、こちらには気付いてないようだった。
ここに座って、と言われるがままに席につく。
そして半ば強制的に参加させられたこのお茶会で、外の世界に戻ろうという意思が強くなったのは過言ではない。