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第3話 チェシャ猫③
チェシャ猫は未だ空中にぷかぷか浮いていて、時々、自分の体の一部なんかを消しながら案内してくれた。
最初は驚いたが、ここはきっとなんでもありの世界なんだと自分に言い聞かせて案内に従う。
「君はね、外の世界からこの世界に『白ウサギ』としてやってきたんだよ。あるゲームをするためにね」
「ゲーム?それをクリアしたら外の世界に戻れるとか?」
「『白ウサギ』は外の世界に戻りたいの?」
「それはもちろん…」
もちろん戻りたい、と、すっと出てこないのは外の世界のことも思い出せないからだ。
自分は一体何者なのかより一層困惑した。
「大丈夫、この世界で過ごしていれば自分のことがわかってくるはずさ。そんなことより早くゲームを始めよう」
「そうだ、ゲームって一体なにするの?」
やっと聞いてくれた!とチェシャ猫は嬉しそうに目を細める。
「『白ウサギ』にやってもらうゲーム、それはこの不思議の国で『アリス』を探すゲームさ!」