第3章☆大入道
「逃げろ逃げろ!俺は女の心臓を狙って石を投げる!」
尚美めがけていしつぶてが飛んでくる。
尚美は走り回り、逃げ回る。
あの大入道、女に恨みがあるのかな?
どっちにしろ大迷惑だ。
逃げろ逃げろ!
「今日はリオのカーニバルで、大勢のブラジリアンが地面を踏み鳴らす。地球の裏側の日本で押し返さないと地球の位置がずれるぞ!」
「そんなバカな!」
精一杯足踏みする尚美。
糸巻きの双子。唄いながら様々な糸を操っている。
まるで万華鏡の中にいるみたい。
尚美は引き込まれていきそうになる。
オレンジ色の灯りに照らされて軍隊が前進しようと乗り出している。
「待ってください!戦争はしないで!」
尚美が押し止める。
ザザザ。
「待って!お願い!」
「尚美?眠れそうか?」
父親が心配して様子を見に来る。
尚美は軍隊を押し止めたり、走り回ったり、足踏みしたり、大忙しだ。
「おい!俺の娘にちょっかい出すのもいい加減にしろよ!」
父親が一喝すると、一連の厄介事が止まった。
尚美はへたり込んだ。
「ヒロツグ。ナオを貸してくれよ」
くすくす笑いが巻き起こる。
「俺を一緒に連れて行くんなら考えんでもないぞ」
ちょっと!お父さん!
尚美は声にならない声をあげた。