表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集

当たり前

作者: Re:over


 私は不老不死だ。永遠の命と衰えない体を持ち、何十年も何百年も生きている。それだけ生きてきて、たくさんのことを学び、たくさんのことをしり、経験してきた。しかし、未だにわからないことが1つある。


 当たり前とはなんなのか。常識とはなんなのか。


 人や時代によって当たり前や常識なんて変わっていくもので、もっと細かく言えば時間、場所、場合にも作用されるはずだ。


 こんな話を耳にした。野球のルールくらい知っていて当然。高校生の授業で野球をやらされて、ルールを知らなかったが故に恥をかいた。それだけにとどまらず、ルールを知らなかった子がいじめられたと。


 当たり前。そんな言葉があるからいじめは無くならないのかなと思った。むしろ、当たり前という言葉が生まれ、普及していったからこそいじめが始まったのではないだろうか。


 集団意識のある現代では周りと違うという理由で排除しようとする力が働き、いじめに繋がると思う。全ていじめがこういう成り行きとは限らないが、少なくともこういう流れから来るいじめもあるだろう。


 不老不死だって、現代の人たちからしたら当たり前ではない。むしろ、異常だ。誰もが怖がる存在だろう。私はそのせいでさっき集団暴行を受けた。不老不死の私でも体に傷くらいできるし、治るのにも時間はかかる。それに、痛いものは痛い。私は歩くサンドバッグなんかじゃない。こんな私だってちゃんと生きている。


 不老不死が羨ましい存在だから、この程度の不幸はものともしないとでも思っているのだろうか。私からしたら、不老不死なんて忌々しい。邪魔だ。


 たしかに、不老不死になる前まではそれがどれほど悲惨なものなのかも想像せず、表面だけを見てそれを当たり前のことと捉えていた。でも、それは違った。


 私は『死』が負の言葉であることを当たり前だと思っていた。しかし、実際には『生きる』や『幸せ』という正の言葉に含まれていて、『死』という言葉がマイナスであるとは限らない。


 おおよそこんな内容のことを友達に言ってみた。すると、友達はこう言った。


「じゃあ、いじめもマイナスであるとは限らないんじゃない? 例えば、それを理由に家に引きこもったりだとか」


 私は呆れて返す言葉が出なかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ