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パイロット版

【パイロット版】業火の魔王 本能寺の変で生き延びた織田信長は鬼と化す

作者: 友理 潤

※本作はパイロット版になります

――人間五〇年…… 下天げてんのうちを比ぶれば、夢幻の如くなり……


 涼やかな笛の調べのような透き通った声と、散りゆく花びらのように軽やかに舞う姿。

 私は心穏やかに彼の舞いに身を委ねていた。

 人間の一生は儚い。それは天に住まう神々の命に比べれば、まるで夢や幻のようなもの……

 そして、人生とは儚いから美しい。

 彼の人生を映したような舞いは、見ているだけで涙を誘うものだった。

 

 しかし……

 

「殿……そろそろでございます」

「そうか……」


 襖の外からかけられた声が夢心地の気分を破壊した。

 すると、にわかに動きを止めた彼は私と向き合ったのだった。

 

 御歳四九とは見えない程に若々しく鍛え上げられた肉体。

 出会った頃から何も変わらない少年のような瞳の輝き。

 

 私は恍惚と彼を見つめていた。彼の全てを目に焼き付ける為に……

 

 彼の名は織田信長。

 『天下布武』を掲げ、命の炎を燃やし続けた彼。

 その覇業は天まで轟き、彼の理想はもうすぐ現実になろうとしていたのだ。


 しかし儚き人生の終わりとは突然訪れるもの。

 それは彼の腹心、明智光秀が放った乾坤一擲の大号令が始まりだった。

 

――敵は本能寺にあり!


 そして一万三千の大軍は、わずか百数十人が籠る本能寺をぐるりと囲った。

 

 世に言う、『本能寺の変』。

 

 剥きだしの殺意を槍に込めた明智兵たち。彼らの繰り出す容赦ない猛攻に、たちまち信長様の周囲の人々は命を散らしていった。

 そしていよいよ残るは数人の小姓のみ。

 いかに『魔王』と畏れられた信長様であっても、もはや手の打ちようがない。

 

 しかし彼は最後の最後まで泰然としたまま、舞い続けたのだった。

 でも、それもここまでのようだ。

 彼は私に言葉を向けてきた。

 

帰蝶きちょう……俺と行くか?」


 しかし私は無言のまま首を横に振る。

 

「そうか……」


 そう言い残し、静かに部屋を後にしていく彼。

 彼は命が燃え尽きる瞬間まで戦うつもりなのだろう。

 例え、一寸の勝ち目がないとしても……

 

 そしてそれが私、織田帰蝶と彼……夫、織田信長との、ここでの最後の会話となってしまうだろう事は戦に疎い私でも十分に理解出来る。

 

――いたぞぉ! 信長だぁ! あの首を取れぇ!

――まだ部屋に残党が残っているかも知れぬ! 寺は隅々まで燃やし尽くせ!


 まるで野獣のような明智兵の野蛮な声が、私の耳にもはっきりと聞こえてくると、私は静かに目を閉じた。

 

 頭に浮かんでくるのは、在りし日の彼との思い出。

 まるで大河のごとく流れていく光景は今宵の空にまたたく星のように眩しいものばかり。

 それはまさに『夢幻』のようだ。

 いや、本当に夢だったのかもしれない。

 そんな不思議な感傷に浸りながら、私は薄れゆく意識に身を委ねたのだった――

 

◇◇


 天正一〇年六月二日 夜――


「探せぇぇ!! なんとしても見つけるのだ! 人っ子一人、見逃すなぁぁ!!」


 本能寺の敷地が残らず焼け野原となったその日の夜。

 明智光秀の家老、斎藤利三さいとうとしみつの怒声が、疲れた兵の背中を叩いていた。

 実直な彼は、今や天下の反逆者となった主君の命令に従って、信長様の残党狩りを指揮していたのだ。


 しかし彼の顔には、とても勝者とは思えない焦りから目が血走っていた。

 それは至極単純な理由。なんと、『織田信長の亡骸が見つからない』のだから。


 しかし信長様はひと目見れば誰もが忘れぬ程に強い光を身に纏ったお方だ。京中に徘徊している飢えた明智兵たちが見逃す訳もない。


 では彼は一体どこへ消えてしまったのか。


 ある人は言う。

――寺と一緒に灰になってしまったのだ

 と。


 そしてまた別の人は言う。

――自害された御遺体を、僧が隠して別の寺へ持ち帰ったのだ

 と。


 しかし見たものしか信じぬ性格の明智光秀は、人々の根も葉もない噂話などに耳を傾けなかった。


――たとえ灰でもよい! 首だけでもよい! この光秀に信長の亡骸を披露いたせ!


 彼は全軍にそう命じて、本能寺だけではなく京中を隈なく探させたのだ。


 ところがまるで幻のように姿を消した信長様をついに見つける事はかなわなかったのだった。

 そして翌日の朝、無念さを青筋に変えて、広い額に浮き上がらせた光秀は、

 「もうよい! 次は安土城を制圧するのだ!」

 と、周囲に命じた。

 自分の地位を固める為に、彼にはもう一刻の猶予も残されていなかったのだから、それも仕方なかったのかもしれない。

 

 しかし彼にとっての地獄の始まりは、皮肉にも彼が放ったこの号令となろうとは……

 織田家一の切れ者と渾名された彼であっても気付く事は出来なかったのだった。


◇◇


 血に飢えた明智兵が去り、怯えながら屋敷に篭っていた町民たちが、一人また一人と街に姿を見せ始めたそんな頃の事。


 鴨川の東側にある寺の井戸の中。

 朝日さえも届かぬ闇深い場所に男が横たわっていた。


 彼こそ明智光秀が血眼になって捜していた張本人。

 織田信長……

 

 そこは黄泉、つまりあの世への入り口と、京の町民からは恐れられており、滅多に人が近寄らない為、人を匿うのにうってつけな場所だ。

 そして彼は命からがら逃げ出した小姓の一人によって、井戸の中に放り込まれたのだった。

 

 深い井戸の底に叩きつけられた彼は、もはや虫の息。

 全身に火傷を負い、骨は砕け、無数の矢傷で血は失われている。

 それでも尋常ならざる彼の生命力は、意識を失う時を延ばしていた。

 

「ああ……ううっ……」

 

 彼はうめき声と共にゆっくりと目を開いた。

 もちろん目に映るのは暗闇だけであり、一見するとこの世ともあの世とも区別はつかない。

 しかしそれでも遥か上空に開いた井戸の口から漏れてくるわずかな光が、現世のうちにある事を示していたのだった。

 

「俺は死ぬのか……」


 いつになく弱気なか細い声。

 天をも畏れぬ『魔王』と渾名された信長様であっても、消えゆく命の炎を嘆いていたのだろう。

 自然と流れる一筋の涙が、彼の悲嘆を表している。

 そしていよいよ意識が混濁としてきた。

 

「やはり人の世とは、かくも儚きものなのか……うううっ……」


 死の間際だけが、人が本性を表に出せる時なのかもしれない。

 信長様はまるで少年のように嗚咽を漏らし、あまりの無念さに血の涙を流した。

 

「悔しい…… 悔しい…… 悔しい……」


 まるで呪文のように繰り返される言葉は唯一つ。

 そしてその言葉すら徐々に温度を失っていくと、信長様自身の体も冷たくなっていった。

 

 

 ……と、その時だった。

 

 『黄泉』への入り口が開いたのは――

 

――ゴゴゴゴゴォ……


 思わず耳を塞ぎたくなるような轟音が信長様の頭の中を掻きまわす。

 しかし目を見開いたままの彼は、ぴくりとも動かなかった。

 

 そして一筋の光が井戸の中に差し込むと、眩しく信長様の体を照らした。

 

「さ……ら……ば……じゃ……」


 信長様は最期の力を振り絞ってそう呟いた。

 そして地獄の風景が目の前に広がる事を覚悟したのだ。

 

 しかし……

 

 信長様の目に止まったのは、一本の刀だった。

 全く手入れがされていないのか、ところどころ錆に覆われ、刃こぼれも激しい。

 とてもじゃないが、人を斬る事など不可能だろう。

 

 その刀がなんと宙を浮いて、仄かな光を放っているではないか。

 

 一言も発することすらかなわず、ただ茫然と目の前の光景を見つめている信長様。

 そしてさらに驚くべき事に刀が言葉を発したのである。

 それはこの世の者とは思えぬ、おどろおどろしい声だった。

 

「正直に言え。貴様をこのような目に合わせた者が憎いか?」


 信長様は突然の問いかけに戸惑った。

 しかしそれも束の間、震えながら顎を引いた。

 それは彼が今出来る精一杯の『肯定』を示す合図であった。

 そして刀は続けた。

 

「では、貴様をこのような目に合わせた者へ復讐を果たしたいか?」


 『復讐』……

 それは極めて私的な感情によってもたらされる残酷な行為と言えよう。

 天下を動かす施政者たる彼は、『復讐』などという愚かな行為に心を傾けようと考えた事すらない。

 

 しかし今の彼は違った。

 もはや天下は彼の手からはこぼれ落ちた。

 その為、彼の思考は全て自分自身の欲望のみに傾けられていたのだ。

 

 昨日までは全てが順調であった。

 優秀な家臣たちに軍勢を任せ、圧倒的な軍事力の元、日本全国の有力大名たちを屈服させていった。

 そして京においては将軍を追い出し、朝廷の実権も握りつつあった。

 

 信長様が目指す『天下布武』の夢はもう手が届く所まできていたのだ。

 しかし、その夢の完成を前に、まさかわが身が散ろうとは……

 しかも信頼を寄せていた側近中の側近、明智光秀によって、それがもたらされようとは……

 

 目の前まで迫った夢が叶わぬ無念。

 信じていた者から裏切られた恨み。

 そして、愛する家族が無惨に殺された憎しみ。

 

 信長様の胸中にどれ程の業火が燃え盛っていた事か。

 人智に及ばぬ苦しみだったに違いない。

 そして苦悩の溶岩の中から掴み出されたのは……

 

――この手で恨みを晴らす……!


 という極めて透明な欲望だったのである。

 彼は迷う事なく、もう一度小さく顎を引いたのだった。

 

 言うまでもなく刀に表情などない。

 しかしそれは確かにニタリと不敵な笑みを浮かべたように、わずかに光が揺れた。

 そして信長様に選択を突きつけたのだった。

 

「われに貴様の肉体を預けよ。さすれば貴様の望みを叶えてやろう。それともここで朽ちるのを待つか。どちらを選ぶも貴様の自由だ」


 声が出す事が出来ない信長様はただ刀を見つめる事より他ない。

 しかしその瞳には明らかに野望の炎が灯っていた。

 刀は続けた。

 

「よかろう……では、貴様の望みを叶える『力』を与えてやろう」


 刀の言葉が終わると同時に、信長様の体が黒い炎に包まれていく。

 すると信長様の顔がみるみるうちに苦悶に歪んだ。

 

「うがぁぁぁぁ!!」


 先ほどまで虫の声すら出す事が出来なかった彼が、苦しみの絶叫を上げる。

 井戸の中で叫び声がこだます中、刀は続けた。

 

「条件は『復讐を完遂する事』。もしその条件が果たせなければ、腕に刻まれた『呪印じゅいん』が紅蓮の炎となって、貴様は無限の苦しみを味わう事となる」

「があああああああっ!!」

「はははっ! 心地良い叫び声だ! 苦しみ、妬み、憎しみ、恨み……ありとあらゆる人の煩悩が我が糧となる! 貴様が復讐を果たしていく過程で見せる愚かな人間共の醜い煩悩が我の快楽となるのだ! はははっ!」


 黒炎は業火となって今度は信長様の肉体を苦しませる。

 しかしそれとは裏腹に信長様の体から傷が消え、さらに全身が若返っていった。

 そして、ついに炎は闇の中に消えていくと、信長様は完全無欠の肉体へと生まれ変わったのだった。

 右の二の腕には漆黒の刻印……『呪印』がくっきりと刻まれている。

 

「我が名は『アマノオ』。貴様の肉体はもはや貴様のものではなくなった。そして黄泉と現世の狭間が貴様の生きる場所。ただ己の欲望のみに生きよ。そして貴様が果たすべき復讐を遂げるのだ。呪印が腕から消えた時こそ、復讐を完遂した証。そのあかつきには貴様は無限の苦しみから解放されるであろう!」


 刀はそう告げると、光を失い、パシャリと地面に転がった。

 ふと見れば、隣には一本の鞘もある。

 信長様はゆらりと立ち上がると、錆だらけの『アマノオ』を取り上げて鞘に収めた。

 そして、静かに上空を見上げた。

 

「さて……では、始めるか」


 信長様はぐっと足を踏み込むと、次の瞬間には空高く舞い上がった。

 その高さは井戸の口はおろか、煌々と輝く月の影になるほどだ。

 そしてふわりと京の街に人知れず降り立った彼は、東の方向へと足を向け始めたのだった。

 

 業火の魔王……ここに降臨。

 復讐の鬼と化した彼が目指すのは、琵琶湖西岸のほとり。

 そこは明智光秀の居城である坂本城……

 

 こうして信長様の復讐劇は幕を上げたのだった。

 

◇◇


 天正一〇年六月四日 昼すぎ――


 信長様は近江坂本城に到着した。

 本能寺で過ごしていた時の白い寝間着を血と泥で黒く染めたまま、ゆらりと姿を現した信長様を見て、坂本城の大手門を守る二人の門番兵たちは震撼した。

 しかし信長様は

「小者には用がない」

 と、呟き、ずかずかと大手門の前まで足を進めたのだった。

 

「と、止まれ! 何用か!」

「きんか頭……うぬらの主人、光秀に用がある。早く出せ」


 『きんか頭』とは信長様が明智光秀につけた渾名。

 彼の広い額が、きんかんの実に似ている事からそう呼んでいたのだ。

 そして彼の事を『きんか頭』と小馬鹿に呼ぶ事が出来るのは、広い天下でも信長様ただ一人。

 門番兵があまりの驚きに失神寸前だったのは言うまでもない。


「ま、まさか……あんた、織田信長公なのか……?」


 人々の記憶の中の信長様は輝きに満ちたものだった。

 しかし今目の前に裸足で立つ男は、落ち武者というよりも乞食に近しい姿。

 にわかに誰なのか、判別がつかなくても失礼とは言えないかもしれない。

 

「だとしたら何とする?」


 信長様は門番兵たちを見下ろすように問いかけた。

 するとそれまで青い顔をしていた兵たちは、戦場で見せる猛獣のような殺気をただよわせて一斉に槍を構えた。

 

「お主が何者だろうと関係ない! 殿を愚弄した事をその身を持って償わせてくれよう!」


 二つの槍の穂先が、ぴたりと信長様の喉と腹に突き立てられる。

 普通の人であれば、この状況だけで臆して逃げ出す事だろう。

 しかし信長様は違った。口元に苦笑いを浮かべた彼は低い声で告げたのだった。

 

「ふふ……償うべきは貴様らだろうに」


 それを聞いて兵の一人は逆上し、

「おのれぇ! もう許さん!!」

 と信長様を貫かんと槍を繰り出してきたのだった。

 

 ……しかし……

 

 右手の人指し指を立てた信長様。

 その指に吸いつくように槍の先がピタリとくっついている。

 そして屈強な兵がいくら槍を押そうとも、一寸も動く事が出来なくなってしまったのだ。

 

「な、な、なんだと……!?」

「われに槍を向けるとは……虫けらとて許される事と許されぬ事の区別もつかんのか」

「ば、馬鹿な…… ひぃぃぃ!」


 もはや人の域を出た物の怪となった信長様に、恐怖した門番兵たち。

 先ほどまでの殺気は完全に崩壊し、哀れな子犬のように門の影へと駆け出した。

 

 だが……


 信長様が逃すはずもなかった。


――グンッ!


 彼はたった一歩足を進めただけで、槍を突き立てた方の兵の背後に追いついた。

 そして片手で首を掴むと、高々と掲げたのだった。

 

「がぁぁぁ…… く、苦しい…… や、やめてくれ」

「問いに答えよ。されば褒美に苦しみから解き放ってくれよう」

「な、なんでもお答えします! だ、だから早く……!」

「よかろう。では聞く。きんか頭は中にいるのか?」

「お、おりませぬ! 既に城を出られて安土城へ向かわれました!」

「それはまことか?」

「ま、まことにございます! があああ!」


 信長様の顔に明らかに失望の色が浮かんだ。

 そして彼はもう一つ問いかけた。

 

「ならばこの城に本能寺を襲った愚か者共はいるか?」

「は、はい…… ここにいる三千の兵は皆、殿と行動を共にしたものばかりでございます」

「そうか……ではお主は?」

「そ、それがしも本能寺に火を放った者の一人でございます! も、もう離してくだされぇ!」


 あまりの苦しみに足をばたつかせて暴れる門番兵。

 しかし信長様は手を離さなかった。

 そして最後に淡々とした口調で告げたのだった。

 


「なら、死ね」



――グズッ……


 鈍い音と共に兵のばたついていた足の動きがぴたりと止まる。

 そして「ゴトリ……」と落ちて来たのは、彼の頭だった。

 

「さて……では、始めるか」


 信長様は首を握り潰した兵の亡骸を無造作に放り投げると、大手門に向かってゆっくりと進む。

 既に逃げ出したもう一人の兵は門の奥へと姿を消していったようだ。

 

 信長様は大きな門を見上げると、片手を門につけた。

 そして……

「ふんっ!」

 と、気合いを入れて門を押した。

 その瞬間に、「ドゴォォォォォン!!」という轟音と共に、なんと大手門が木端微塵に砕け散ったのだ。

 

 門の先にいた数十人の兵たちが槍を構えたまま、口を開けて信長様を見つめている。

 そして信長様はニタリと口角を上げて告げたのだった。

 

「蹂躙の時間だ。覚悟せよ、愚か者共」


◇◇


 こうして坂本城は三千の兵たちの血で、真っ赤に染まった――


 刃こぼれした刀で斬りつけられた者は、即死を許されず、断末魔の叫び声を四半刻近くも上げながらゆっくりと命を落としていった。

 彼らの叫び声は遠く京まで響いたとも言われ、それはまさに地獄の光景であった。

 

 一方の信長様は無傷のまま。どんなに槍で突かれようとも、鉄砲で撃たれようとも、彼の完全無欠の体はかすり傷一つ負わなかったのだ。

 彼は城の中の者一人一人に

――貴様は本能寺を襲った者か?

 と聞き、目を見て真偽を確かめた後、本能寺の変に加わった者のみをなぶり殺しにしていったのだった。

 

 ちょうど三千の命を奪った信長様は、来た時と同じようにゆっくりとした歩みで城を出た。

 そして再び琵琶湖を南へと進んでいったのだった。

 

 次に彼が向かうのは安土城。

 もちろん狙いは……

 明智光秀の命――

 

 

 しかしこの時の信長様は気付いていなかったのだ。

 彼を陥れた闇は、彼が想像するよりもずっと深かった事に――

 


御一読いただきありがとうございました。


本編では本能寺の変に関するミステリーに迫りつつ、信長公の復讐劇を綴っていきたいと考えております。


なお本編の公開は未定です。

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◇◇ 作 品 紹 介 ◇◇

【書籍化決定】念願の戦国時代へタイムスリップしたら、なんと豊臣秀頼だった!この先どうなっちゃうの!?
太閤を継ぐ者 逆境からはじまる豊臣秀頼への転生ライフ
― 新着の感想 ―
[良い点] はらはらドキドキしながら読みました。 怨みを残してお亡くなりになられた武将の数は多いけれど、間違いなく信長様はそのお一人。 もしも復讐をするチャンスを与えられていたら、どんな歴史になっ…
[良い点] すごく面白い 復讐劇というのも好きです 本編書かれるかは分かりませんが、読みたいです
[良い点] 凄く面白いです。 信長の能を舞う姿が目の前に現れるような切なく鮮やかな描写、それと同時に引き込まれるように時代が重なり更なる世界に繋がる瞬間は読んでいて世界に引き込まれる物を感じました。…
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