第五話『選択』
第五話『選択』
俺「それってどういう事ですか?」
αさん「俺も最初は『ガイジ』について何も知らなかったんだ。」
αさん「Aさんに何度聞いても無視されて、その質問をすると周りからも冷たい目で見られた。」
αさん「仕事も俺がやるはずの物を他の人がやるようになったり。」
αさん「次第に俺は、どんどん会社に居づらくなった・・・」
俺「それで会社を?」
αさん「いや、会社でその話をするのは辞めたよ」
αさん「それが無ければ普段通りなんだ。」
αさん「俺が辞めたのは、林田の目論みを知った時だ・・・」
俺「林田さんの?」
αさん「そうさ。ところでガイジバスターズの完成度は今どんな感じなんだ?」
俺「えっと・・・大きな問題があるんですが・・」
αさん「それは知ってる。他の修正で俺の書いたコードを見たんだろう?」
俺「そうです。どこを押してもジャンプになっちゃって・・・」
αさん「あれな、俺がわざとやったんだ。」
俺「え・・・?」
αさん「バックアップもなかったろ?あの制度を作ったのも実は俺なんだ。」
αさん「俺くんが直してくれたんだよな?俺のせいで大変な思いさせてすまないな。ハハハ!」
俺「どういう事ですか!?なんでそんな事を・・・」
俺「林田さんの目論みって何なんですか!?」
俺「ていうか『ガイジ』って結局何ですか!?」
αさん「慌てるなって!全部話してやるよ。」
αさん「ガイジバスターズの大きな問題は、ストーリーについてさ。」
αさん「主人公の健常者が『ガイジ』を倒して行き、最後のボスを倒してゲームは終わり。そこからはムービーが流れるんだけど、誰が聞いても最悪の内容で、悪い噂が流れて売り上げが出なくなる可能性が大きい事が問題なんだ。」
αさん「これまで倒してきた全ての『ガイジ』が怨念となって健常者にとりつき、健常者は日に日におかしくなって、家族や友達からも笑われながら『ガイジ』になってしまう話なんだ・・・」
αさん「だからゲームを進める中でも敵が強くなって行くように思えるんだけど、本当は敵の強さは変わってなくて『ガイジ』の怨念で、ステージをクリアするごとに主人公がどんどん弱っていく設定なんだ。」
αさん「このストーリーの考案者は林田さ。」
αさん「林田は、合法な形で健常者への憂さ晴らしをしたいが為に株式会社ガイジを作ったんだ。」
俺「じゃあ『ガイジ』って・・・」
αさん「主に障がい者の事さ」
αさん「けど、障がい者でも頑張ってる人や努力してる人は数多くいるだろ?そういう人達は含めない。」
αさん「逆に健常者でも、誰の目から見てもおかしな行動を取ってるキチガイのようなヤツはガイジに含まれる訳だ。」
αさん「厄介なのはガイジじゃないと思わせぶったガイジさ。」
αさん「林田もその一人だ。不自由な体で会社を設立して凄いとは思うけど、思考はガイジだ。」
αさん「それは車椅子である事とは関係ないだろ?でも林田にはそれが分からないんだ。」
αさん「普通の判断が出来る人間なら、こんなのおかしいと思うだろ?」
俺「・・・」
αさん「俺は林田みたいに障がい者である事を盾にして、あくどい真似するようなヤツは許せねえ。」
αさん「ガイジバスターズは全年齢対象のアクションゲームだ。発売されれば小学生だってやるだろう。」
αさん「良い風に考えれば、もしかしたら健常者は障がい者に恐れを抱くようになって、イジメなんかが減ったりするかもしれない。」
αさん「問題なのは障がい者がプレイした場合さ。林田みたいな考えのヤツが増えちまったら、どうしよもない。」
俺は頭の中が真っ白になっていた。
会社に対してあんなにも恩義に感じていた気持ちが、今は嘘のようになくなっていた。
俺は林田の憂さ晴らしのために利用されるのか?
もしこれが本当だとしたら、ガイジバスターズって最低最悪のゲームじゃないか・・・
正気の沙汰じゃない。
しかも林田がこうなったキッカケの1つに、俺が居るかもしれない。
俺は一体どうすればいいんだ・・・・
αさん「だから俺は今、会社の設立を検討している」
俺「!?」
αさん「株式会社健常者という会社だ。」
αさん「ガイジバスターズ制作の時に培った知識で、ゲーム会社をやろうと思うんだ。」
αさん「求人では障がい者を歓迎しようと思う。」
αさん「そして俺が、本当の意味でのガイジバスターズを作り上げてやるんだ・・・」
αさん「もうスタートメンバーは揃ってるんだ。俺くん、良かったら来ないか?」
αさん「なに、今すぐ返事が欲しい訳じゃない。ただ、俺の話を聞いてもし興味があればと思ったんだ。」
俺「少し・・・時間を下さい。」
続く。