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お姉ちゃんと岩盤浴

 そう、しばらくまっすぐ……奥に、信号が見えるでしょ? あれを越えて、左側に細い道が見えてくるから、そこに行ってちょうだい。

 あっ、もう。なにあの車、危ないわね。急に飛び出してきて、何考えてるのかしら。

 あ、そこを左に行って、次の交差点が右……見えてきたわね。あの看板よ。

 あなた、意外と運転上手いわね。見かけによらず丁寧な運転するところ、似てるかも。

 着いたわね。ええ、ここが今日のお風呂よ。あなた、銭湯とかあんまり来ないでしょう?

 この時間帯なら空いているし、きっと満喫できると思うわ。もう少し早く来ると、混んでいるのだけどね。

 なあに、どうしたの?

 タオルを持ってきていない、ね。大丈夫よ。ここは貸しタオルがあるから。それぐらい、私もちゃんと考えてるわよ。

 まあでも、ここを選んだ理由はそれだけじゃないんだけどね。ほら、見て。岩盤浴があるの。

 ここは混浴じゃないけど、岩盤浴は男女共用なのよ。先に行っているから、下で合流しましょ。

 ……。

 待った?

 ……だからこういう時は、今来たところだって言うものだって最初に言ったじゃない。

 し、仕方ないでしょ。女の着替えは長引くんだから。あ、あんまりジロジロ見るんじゃないわよ。グーで叩くわよ。

 ほら、騒いでると白い目で見られるから。静かにする。

 とりあえず、あっちにしましょ。リラックス効果があるらしいわよ。……中は私語厳禁だから、無駄口叩かないようにね。

 ……と思ったけれど、私達以外に誰も居ないのね。これなら、少しぐらい話をしてもいいかもしれないわね。ええ、人が来るまで。

 ところであなた、岩盤浴ってしたことある?

 ……やっぱりね。私も慣れてるわけじゃないんだけど、やっぱり、綺麗になった感じがするのよね。悪いものが抜けていくっていうか。

 あら、あなた、もう汗だくじゃない。代謝がいいのかしらね。羨ましいわ。私はあんまり汗かけなくて、どうしても長引いちゃうのよ。

 ふふ、ちょっと辛そうね。あなた、普段からあんまり長湯しないでしょ。サウナも昔から苦手だったみたいだし、そういう体質なのかしらね?

 堪え性のない人ね。少しは我慢してみなさいよ。慣れれば、結構気持ちいいものなのよ。

 へえ、何もしないでじっとしているのが苦手なんだ。確かに、そういう側面もあるものね。

 それなら、こうして話していれば少しは長く入っていられるようになるかもね。

 ええ。もう少し話していましょうか。

 例えば、そうね……。ここのアメジスト……だったかしら。この宝石って取れるのよ。知ってた?

 ふふ、冗談よ。そんなこと、試すわけ無いでしょ。これでも私は真面目な方なの。ええ、大真面目よ。

 忘れたの? 通知票、あなたは最後まで、私に勝てなかったじゃない。テストの点数はそんなに開いてなかったのにね。やっぱり、授業態度の違いかしら。

 はあ……話してたら、私も汗かいてきたわね。

 ……なによ、ジロジロ見て。この浴衣は、どれだけ濡れても透けないわよ。バカ。

 まあ、確かに私がここまで汗をかくの、珍しいわね。でも、そんなに気になるものなの?

 へえ。まあ、いいわ。好きになさい。足音が聞こえたし、おしゃべりはここまでよ。

 ええ。少しは我慢しなさいな。あと十分はここに居るわよ。

 まだまだ、もうしばらくは付き合ってもらうからね。

 ……。

 また待たせちゃったみたいね。え、今出たところですって? もういいわよ、それは。

 それにしてもあなた、本当に早いのね。見たところ、もう肌も乾いているようだけれど……どれだけ私を待っていたの?

 ふうん。お金を払って入っているのだから、満喫しないと勿体無いだとか、考えないのかしら。

 まあ、満足したのならそれでいいのかもしれないけれど。

 忘れ物はない? 私が待たせておいてこう言うのも筋違いかもしれないけれど、そろそろ次に行きたいわ。

 次は……何かって?

 ……男と女が、こんな時間まで一緒に出歩いてて、向かうところといえば……そんなに多くはないんじゃない? もう、女の口から言わせるつもり? バーカ。

 ええ、そうよ。あなたの考えてるとおりの場所よ。

 何をするのかって……そんなの、一つに決まってるでしょ。なに、もしかしてそういうこと言わせて興奮するタイプなの?

 あー、もう。いいから早く行くわよ。私だって、恥ずかしいんだから……。

 場所、案内するから。あなたは黙って運転していればいいのよ。

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