『たとえ、この世界が君の手に余るとしても』
少女はいつも静かだった
その姿がとても可憐で
気付けば貴女ばかり見てた
純粋乙女の恋物語
私は声が小さくて
顔もスタイルも平凡で
だけど毎日楽しくて
笑える日々が好きだった
ある日貴女はやってきた
長い黒髪綺麗な顔立ち
皆が貴女に見惚れてた
これが美少女なんだって
二人きりになった教室で
初めて貴女と話した会話
同じ歌が好きだと笑った
私は貴女が大好きになった
二人好きなその曲は
世界の果てを謳ったもの
独創的な旋律と歌詞
一瞬で囚われた
歌うは無名の高校生
周りの皆は知らないと思う
私と貴女だけのヒーロー
同じ想いが重なって響く
「この世界から何もかも消えて
君がたった独りになってしまっても
その強さは失わないで
僕が大好きな君でいて…」
帰る時にはその歌をリピート
イヤホン二人で一つの耳に
いつの間にか距離は縮み
貴女と親友になっていた
だけど其だけじゃ物足りなくて
もっと貴女を近くに感じて
私だけのものにしたかった
誰にも渡したくないんだよ
自己中だって罵ればいい
私は絶対傷付かない
ただただ貴女が欲しいだけ
だから貴女も私を見てよ…
叫んだ言葉が貴女を突き刺す
一番伝えたかった想いなのに
貴女はポロポロ泣き出した
「親友のままじゃ嫌なんだ…」
そんなつもりじゃなかったのに…
どうしよう…あたし
あの子に何もしてやれない
どこまで本気だったのか
今となってはあたしも知らない…
あの歌が街中に流れてる
二人だけのヒーローだったのに
今では皆の注目の的
最初のファンなんて知らないでしょう?
最後に貴女は現れた
哀しい表情を私に向けて
もう話す事はない筈だった
貴女は無言で私の手を取った
「ヒーローに会ってきた
君に伝言があるんだよ
これだけは信じて欲しい
あたしは君を嫌いにならない
二人で過ごした幸せな日々
今でも大切な記憶になってる
だからあれが最後じゃない
あたしは君の隣にいるよ」
その言葉がとても嬉しくて
私は子どもみたいに泣いちゃった
貴女に認められたくて
ずっと頑張ってきたんだよ
この世界はとても複雑で
私の手では動かせなくて
思い通りにならない事も
全部受けなきゃいけないんだ
私の中に芽生えた想い
純粋なものだと思ってた
膨らむごとに暴走しちゃって
結局貴女を傷付けたんだ
けれど貴女は言ったよね?
嫌いになったりしないって
私は其を信じるよ
嘘じゃないって笑ってね
君に向けて芽生えた想い
あたしは制御出来なかった
今更謝ったとしても
君は許してはくれないでしょう?
「出逢わなければ良かったね
そうすればもっと
違う道を歩けた筈だよ
でもこれもきっと良い経験になる」
大好きな歌が聴こえてくる
思わず口ずさんでいた
貴女の姿を空に思い描く
嗚呼…やっぱり駄目なんだ
「私は貴女が大好きだ」