「私の好きな人には、好きな人がいます。」
恋を知った。
叶うはずの無い想いが、生まれてしまった。
私は、あなたからしたら彼女の友だち。
関係が発展することなんて無い。
気づかなければ良かったと何度も後悔した。
あなたの優しさに触れなければ知ることも無かった。
こんな図々しい想いが芽生えたなんて誰にも言えない。
友だちにすら、相談なんてしたくないのに。
弱さを見せたくなかった。
あなたみたいに胸を張っていたかった。
人前で泣くことも我慢した。
支えられなきゃ生きていけないと思われない為に。
強くて堂々とした振る舞いに憧れた。
あなたがそうだった。
私の理想。
だから、出逢わなければ良かったと思ってしまった。
理想を夢みた瞬間から、それは理想じゃなくなると。
あなたはそう言って夢みた夢を塗り替えた。
手に届かないからあくまで理想。
叶えるのは神様でも魔法使いでもない。
揺らがない意思が必要だと思った。
誰にも何にも流されない、そんな強いひと。
あなたがそうだった。
一つ一つの言葉が胸を熱くしたんだ。
どうして好きになってしまったのかと
あなたに問うことすら出来なかった。
好きになるのは自由だと微笑まれたから。
そんな表情で語らないで欲しかった。
友だちは失くしたくない。
これからもその先もずっと一緒にいたかった。
突き放されたくなかった。
嫌われたら、誰にも見えなくなってしまうと思ったから。
強いひとには信念がある。
あなたにも譲れないものがあったから。
たとえ、大きな災禍に巻き込まれても、
好きな人の手は死んでも離さない。
伝えて応えを聞けば、見切りもついた。
諦める勇気が出たはずだ。
思い切って言葉にしたんだ。
あなたに届けと何度も何度も叶う夢を見た。
想いは大切だと誰かが語った。
人を愛することは偉大だと。
あなたを好きになったのもそうであるべきだったと。
叶わない道しか無いのなら、それすらも望みの一欠片。
「好きな人を裏切ることは出来ない」と。
それがあなたの答えだった。
分かっていたはずなのに、哀しい。
あなたの胸で泣いてしまったから、余計辛い。
なんで好きになんてなったんだろう。
叶わないと知っていたのに。
こちらに振り向く事などありはしないと。
一縷の望みさえ、砕かれてしまったのに。
それでも友だちに嫉妬はない。
彼女のことも好きだから、苛む事すらしなかった。
離れて見たら良く分かる。
二人ほど、美しい人間はいないのだと。
いつかの想いが甦る。
あの頃はまだ子どもで世間も知らない未熟者。
思い出したら笑えてしまう位、おかしな話。
それでもあの時の想いを無かったことには出来なかった。
「私の好きな人には、好きな人がいます」
二人のことが好きだった。
友だちもあなたも、大好きだった。
今ははっきり断言出来る。
「愛しています、誰よりも」
二人のことを、この先も、
想い続けるだけなら、私だけが泣けばいい話。




