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『世界の終わりに視る夢は……。』

魔女であるクロードは大層怒り狂っていた。

自分の側近であり、1番信頼を寄せていた2人の青年達に裏切られるとは思いも寄らなかったからだ 。



「お前達などもう要らぬ!死刑だ!」

「お待ち下さい、クロード様!」

「お2人は貴重な人材です!居なくなられたら困ります!」



今にも殺しそうな眼で2人に押し迫る魔女を侍女達が必死に止めた。けれど、2人の行為は魔女だけでなく、この世界からも許される事のない罪として罰しなくてはならない。



「愛してるだと!?私よりも?この美しい私よりお互いの事を選ぶのか!」

「ーー悪いけど、もうあんたの手足になるのはウンザリなんだ。この辺で手を切って貰いたい」

「生意気な!誰の力で偉くなったと思っている!」

「ここまで面倒を見てくれた事には感謝してる。でも、このままあんたの傍にいたら、こいつが壊れるんだよ。毎晩毎晩あんたに抱かれて、怯えてるのが解らない?おれは藤とこの世界を出る。あんたから貰った魔力も奪って貰って構わない」



青年の1人が震えている親友を支えながら王宮から出ていこうとした。



「許さない……!そんな勝手は認めない!」



魔女の放った攻撃魔法が出口を吹き飛ばしてしまい、2人の行先を塞いだ。



「……藤。しっかり掴まってろよ」



親友にぎゅっと抱きつきながら、2人の青年は音もなくその場から姿を消した。



「…ちっ!探せ!!あの2人を捕らえろ!公開処刑にしてやる!」

「クロード様!!」



パニックに陥っている侍女達を振り払い、魔女はまだ怒りが冷めやらぬ状態で自室へと戻っていってしまった。

その夜から2人の青年は指名手配とされ、そこら中に似顔絵が描かれた半紙が貼られた。人々も騒ぎを聞き付け、2人の捜索に手を貸した。何せ、2人を見つけ差し出した者には多額の報奨金が支払われる事になっていたから。それはもう見事にたった数分で人々までをも味方に付けてしまった。






紫蘭(しらん)!待って……!あっ……!」



木の根本に足が躓き、藤は転んでしまった。移動魔法で降りた場所は深い森の中。1度道を間違えれば2度と出られないと言う不気味な森。その為、滅多なことでは人々もこの森に入る事はない。いつどこで濃霧が現れ、道を奪われるか解らない。平穏な暮らしを望むなら、何も知らずに楽しく生きていればいいのだ。



「藤、立てるか?」

「……痛っ…!」



身体を起こした拍子に足元に痛みが走り、藤は嫌な感覚に表情を歪ませた。



「捻ったのか?」

「…多分……」

「ここじゃあ、まだ見つかるかもな。もっと奥まで移動するぞ。藤、乗れ」

「…でも…」

「無理して歩かれるよりはマシだ」

「……」



紫蘭は藤をおんぶしながら先へと進んだ。薄暗い視界が鬱陶しい。



「紫蘭、この先は……」

「あぁ。魔物の出やすい区域だ」



言った矢先から、蠢いた塊が現れた。魔物は人の寄り付かない不気味な空間を好む。野生化した魔物であれば容赦なく人を喰らう。



「うっわ。いっぱい棲み付いてやがったな」

「紫蘭、下ろして。この数じゃ不利だよ」

「かもな。藤、痛み我慢出来るか?」

「大丈夫。この状況じゃ、オレの方が適任だしな」

「任せた」



藤の方が攻撃魔法のレベルが高く、最も得意としている。その為、一撃で全ての魔物を消滅させてしまった。



「さっすが!」

「ありがと」



藤は紫蘭に支えられながら2人は更に奥まで向かった。だが突然、辺りが目映い光に包まれ2人の足を止めた。

数分が立ち、光も薄れ目を開けるとそこは森ではなく魔女の館だった。クロードが私用で使っている滅多に入れない貴重な部屋。



「私から逃げられるとでも思ったか?」



勝ち誇ったように笑う魔女。怒りが満ちているのが分かる。藤は震えながら紫蘭の後ろに隠れた。



「公開処刑にしてやろうと思ったが、気が変わった。藤、今まで悪かったな」

「…えっ…」

「お前達の犯した罪は私が帳消しにしてやろう。その代わり、条件付きだよ」

「条件…?」

「紫蘭。藤を殺せ」



魔女の冷たい声が耳の奥で木霊する。藤の瞳が揺らぎ、紫蘭は魔女の命令を理解出来ず固まっている。



「何をしている。さっさとやれ」

「…紫蘭…」

「ーーそれで、あんたの気は済むのか?」

「あぁ。愛する者がいなければお前は私を愛するだろう」

「そう…だな。殺されるよりかはマシか」



紫蘭は藤に向き直り、手を翳した。その構えは紫蘭の最も得意とする攻撃魔法。



「…紫蘭…?嘘…だよね…?オレを殺すなんて…する訳ない……」

「悪いな、藤。死より怖いもんないんだよ」

「嫌だ……。やめて……」



藤は泣きながら懇願した。あんなにも愛し合っていたのに、この想いは届いていなかったのだろうか。魔女に殺される位なら、愛した者にこの命を奪われた方が本望だ。



「紫蘭……」

「攻撃魔法第4の剣、発動」



無数の剣が藤に向けられた。藤は防御魔法もせずただ目を瞑ってその瞬間を待った。



「否。異世界転換魔術、発動」

「なに……!?」



藤に向けられた攻撃は使用されず、周りを淡い光が包んだ。



「紫蘭!どういうつもりだ!」

「好きな奴をそんな簡単に殺せるかよ」



紫蘭は藤の隣に移動し、一緒に魔法に掛かった。クロードは悔しそうに見ている事しか出来ない。

異世界転換魔術は限られた魔術師しか使う事が出来ず、その邪魔は何人たりとも出来はしない。



「…許さない!必ず見つけ出して処刑にしてやる」

「出来るものなら」



光が更に強くなり、2人の姿は音もなく消えた。



「紫蘭……藤……私を裏切った事、後悔させてやる」

「クロード様……」

「私を誰だと思っている。世界最高峰の魔女だぞ。あいつらの行先なんぞ予測出来る」

「なりません!クロード様まで異世界に行ってしまわれたらこの世界は揺らぎます」

「知れた事。ならばお前が行け、マーガレット。2人を連れ戻して来い」

「ーー必ず」



マーガレットはクロードから1番信頼を置かれている少女だった。彼女も2人の事が好きだった。けれどこの度の裏切りは彼女も許せない。世界での禁止事項に魔女の側近である2人が背いたのだから。許されない恋に溺れて、それでも幸せなのだろうか。



「紫蘭……藤……」



2人の行為は許せない。許せないけれど……羨ましい。誰もなし得なかった事を仕出かしたのだから。マーガレットには出来なかった事をやってのけた。その意志は尊重するよ。それでも……魔女が連れ戻せと言うならその命令に従う。たとえ、2人が死罪になろうとも、助けの手は差し出さない。



「ごめんね……」



月も星も無い夜に、少女は寂しげに呟いたーー。


後に書く長編用のプロット的なやつ。

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