『想いの果てに、アナタの夢を視る』
遠い遠い世界の先で
君はまだ、泣いているのだろうか――
彼に会う度、胸が高鳴る。
初めは解らなかった。この感情を。
近くにいるだけで安心したの。
「大丈夫」だって思えたの。
特別な存在だって気づいてしまってからは、距離を置いた。
彼が其所にいるってだけで、鼓動が早くなる。
想いが溢れる。
でも、まだダメだ。
伝えたら、きっと今のままではいられない。それが怖かった・・・。
彼にとっては、「大切な仲間」の一人でしかない。
それでも、時々気にかけてくれる事が嬉しかった。
「一緒にいてもいいんだよ」って言ってくれているみたいで。
だから、もっと好きになった。
ずっと、側にいられたらいいのにって何度想ったことだろう。
仕事で、上手くいかなかった時、彼は成功するやり方を教えてくれた。
その時間がすごく特別なモノに感じた。もっと話したい。もっと知りたい。もっと、近くにいたい――。
彼にとっての、「大切な人」になりたい。この想いはもう止められない。
彼に何日も会わない日が続いていた。其までの彼への気持ちも落ち着いてしまって、本当はただの憧れだったんじゃないかって疑い始めた。
でも、違った。
イベントで、彼を見た時、其れまでにない胸の高鳴りを感じてしまった。
彼がいるだけで嬉しくなった。
例え、違う女の子と一緒にいたとしても。一度抱いた感情は変わらなかった。やっぱり、好きだって確信してしまった。もう、違うって言い切れない。
「好きな人からの連絡は待つ方?其とも、連絡しちゃう方?」
いつだったか友達とそんな事を話した覚えがある。その時はまだ、「好き」って気持ちがわからなくて、どっちでもいいかなって考えだった。
けど、今は、連絡したい。
何でもない会話でもいい。
彼からの返事が来ることに意味があるのだから。
メールの音が鳴って、彼だと解ると笑みが溢れる。
「あぁ、やっぱり好きなんだな」って。
繋がってるって思えるだけでも、こんなにも嬉しいものなんだと。
彼に、会いたい――。
まだ、この想いは伝えない。
時期が来たら、言うって決めた。
だからそれまでは、仕事に専念するの。そして、仕事で成果を上げられた時、彼を呼んで、この想いを伝えるわ。
たった一言、「好き」ってコトバを。
どんな結果であってもいい。
彼に知っておいて欲しいから。
成功なんて求めてない。
関係を壊すつもりもない。
そう想われていた事を誇りに思って欲しい。
それだけでいい。
多分、想いを言葉にしたら、満足すると思うから。
形にはならないけれど、伝わりさえすれば記憶に残るでしょう?
自己満足でいいの。
同じ想いを彼に求めるのは、失礼だから。それでも少しだけ、彼にとっての「特別な存在」になれたらいいなって思ってしまう。
これも我儘かな。
少しくらい、言いたい事言っても、罰は当たらないよね――?
「好きです」
初めての告白。
君は顔を真っ赤にしながら、少し震えていたね。
その一言にどれだけの勇気を出したのか分かるよ。
たった4文字なのに、コトバにするだけでも相当な勇気が必要なんだよね。
君は、その勇気を小さな身体から引き出して、コトバにしてくれた。
――嬉しいよ。
まさか、君からこんなにも想われていたなんて、正直気付かなかった。
こんな事言ったら怒られちゃうかな。
以前はあんなに大人しかったのに、随分と変わったものだね。
凄いと思うよ。
君が、精一杯の勇気を出して、告白をしてくれたのが僕で、とても嬉しいよ。この日まで、ずっと想ってくれていたなんて、優しい子だね。
君が想いをコトバに出来たように、僕も君に打ち明ける事が出来る。
「ずっと、好きだった」
って、やっと、言う事が出来る。
君からのメールが来ると、胸が熱くなった。些細な会話だったけど、近くにいるように感じて嬉しくなった。
君も同じように感じていたならどんなに幸せなことだろうって。
想いが叶うとこんなにも嬉しくなるものなんだね――。
「生まれ変わっても、あなたに恋をする・・・」
雨の止まない日だった。
大好きな君とのデート。
何をするにも楽しくて、色々な表情を見せる君を、どんどん好きになっていった。
「好き」な気持ちがこんなにも大きなモノだったなんて。
まだまだ二人でやりたい事もあった。
行きたい場所も沢山あった。
・・・なのに・・・どうして・・・
どうしてキミは、こんなにも冷たく何も答えてくれないんだ・・・。
何度呼んでも、君の目が僕を映す事はもうない。
何度キスをしても、身体は冷えていくばかりだ・・・。
どうして・・・こんなこと・・・。
キミは、判断の早い子だったね。
だからあの時、ハンドル操作を間違えた車が僕に向かってきた時、キミは瞬時に守ってくれた。
雨さえ降っていなければ・・・。
足が滑って、避けきれる筈だった車の下敷きになることもなかったのに・・・。
車の下から抱き上げたキミは、もう息をしてなかった。
嘘だと思った。
有り得ないと。こんな現実、誰が信じるんだ。何で、さっきまで一緒にいたキミが、こんな目に遇わなければならないんだ・・・。
僕は酷く後悔した。
今日に限って僕からキミを誘うなんて。こんな雨の日に。
でも、キミは「行きたい」って笑った。「雨は好きだから」って。
僕も雨は好きだった。
「特に夜の雨はもっと好きだな」
そう囁いた僕に寄りかかりながら、
「あたしも好きよ。違う世界にいるみたいで。大好き」
また、キミを好きになった――。
目が覚めると、また泣いていた。
もうあれから2年は経つのに。
未だに彼女の事を夢に見る。
初めて好きになったから。
僕ばかり泣いていたら、キミまで哀しくさせてしまう。
泣かないって決めたのに、キミを想い出すと、溢れてくるのは涙ばかりだ・・・。
――会いたいよ・・・。
遠い遠い世界の先で、貴方をずっと見守ってる。
だから、もう泣かないで。
そんなに泣いたら、先も見えなくなっちゃうよ・・・。
暗い表情はしないで。
笑顔で、いて欲しいよ。
あたしの事を思い出して泣くより、今の彼女と笑って生きて欲しい。
それが、あたしの願い。
もう、声も届かないけど、それでも何度でも叫ぶよ。
「ありがとう」
ずっと、側にいるから。
あなたが迷わないように何度だって、背中を押してあげる。
あたしの勇気、少しは頼りになったかな・・・?
遠い遠い世界の先で、これからもずっとアナタを好きで居続ける。
想いの果てに、アナタの夢を視る。
忘れないように、ずっと──。