『悪者ヒーロー』
誰かが僕に言ったんだ
臆病者でも勇士になれる
弱虫だって構わない
逃げない強さをなくさなければ
桜の季節に僕は出会った
優しげな笑みを浮かべる君に
僕に気付いた君は振り向き
「こんにちは」って言ったんだ
柔らかな雰囲気に包まれて
僕は一瞬で好きになった
君の事を知りたくて
すぐに親しくなれたんだ
夜空が好きだと君は囁いた
二人で一緒に星を見に行った
輝く空に映った幸せ
このまま時が止まればいいのに…
他に好きな事はある?って
初めて手を繋いだ時に聞いてみた
「優しい時間が一番好きかも」
少し頬を赤らめながら
君は可愛く答えたんだ
「ずっと一緒に入れたらいいね」
僕の言葉を君から聞いた空の下
「一生僕が君を守るよ」なんて
ヒーローみたいな台詞を言った
君との想い出が溢れてく
全てが大切な一粒の記憶
零れ落ちたりなんかしない
これは二人だけの世界だから…
其は僕の勝手な我儘だった
君は哀しげな微笑みを浮かべて
言葉もないまま涙を流した
「ごめんね」
其が僕を狂わせたんだ
あの涙が忘れられなくて
僕は僕の全てを捨てた
君との思い出だけが支えになって
世界の歯車が回り始めた
君を縛る全ての闇を切り裂いて
またあの笑みが見たかったんだ
黒く染まるのは僕だけだ
君は何も知らないままで…
弱い者だけを救うのがヒーローじゃない
良い役ばかりは続かない
ヒーローだって泣いてしまうんだ
夢ばかり与えるヒーローなんて真っ平だ
僕は一つだけ伝え忘れた
君への想いがまだだったこと
たった二文字の言葉だったのに
どうしても僕の言葉に出来なかった
紅い世界に染まった僕を
君は笑って抱き締めてくれた
其は夢でも幻想でもなくて
ただただ温かかったんだ…
「行かないで」っで君の思いを
僕は優しく振り払ったんだ
「もう一緒には居られない」
ヒーローは悪を知ってしまった
初めからヒーローなんて居なかった
全部世界が創り出した虚像だった
それになって守りたいなんて
ピエロの戯言にもなりはしない
あの時の素直な感情が邪魔をした
僕が世界から消えようとしても
君の笑顔が僕に歯止めをかけるんだ
最後の言葉が胸をさしたまま
君が好きだった夜空を見上げた
あの時と同じくらいの数の星
手を伸ばせば掴めそうだった
僕が握りしめたものは何だったかな
「ありがとう」って声がした
僕に言う言葉じゃないよ
其でも君は首を振って
「大好きだよ」って言ったんだ…