表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/60

『その手のひらにロザリオを・・・。』

私には、殺された記憶がある――。




最初に見た風景は、緑溢れる豊かな光景だった。

風も感じた。


そして、優しく笑う母と微笑む父。


あぁ、愛されてるんだなって幼いながらにも解った。


きっと私は蝶よ花よと育てられて、家族に愛されながら生きていくんだな。


そう、確信していた――。




ガシャン



硝子を壊す音、物が床に叩きつけられる音、声にならない歪んだ悲鳴。


獣のような瞳が私の首を掴んだ。


そのまま連れていかれたのはお風呂場。


たっぷりと溜めた湯船に、何の躊躇いもなく放り込まれた。


初めて息が出来ない事を知った。


初めて苦しい事を知った。


初めて恐怖を知った。


歪む視界の中で微かに見えた表情。


母は、笑いながらこの光景を撮っていた。


珍しいモノでも見るみたいに。


必死に助けを乞う私を人間として見ていない。


悪魔だ――。


私は世界に絶望した。


美しいと思っていた景観は紅く染まって、優しいと思っていた母の姿に死神を見た。


この人は人間じゃない。


私を愛してはくれない。


世界から消しても良い存在なのだと気付いた。


死んでも死にきれない。


こんな奴に、 殺されてたまるか。


そう感じた時、声を聞いた。



『生きたいと強く願うなら、この手に誓いを。この能力はお前を不幸にする』



今更、不幸も何も無い。生まれた時から地獄だったんだ。変わらないなら変則的にでも変わらせてやる。

この女を、私をこの世に生み出したこの女を、私は許さない――。




死んだと思って覗き込んだ女の首を掴んだ。女は怯えた目で私を見た。その目が鬱陶しい。



私の苦しみをこの女は笑った。蔑む様に。



「これは復讐だよ。お母さん」



最初で最後にこの女の事を呼んだ。



女は焔に包まれながら苦しんだ。



無様に踊るように。


バカみたいだ。


この女に愛しさを求めていたなんて。


最初から要らないなら、必要としないで。



「塵も残らず消滅しろ」



助けを乞う手を私は踏み潰した――。






*****



この世界は、4人の少女達によって支配されていた。



焔を操る能力を持つ少女・カレン。その美しい姿で人々を惑わせ、貶める。



「私が生きたいと願った世界はこんなちっぽけな世界じゃない!・・・愛されたかった。ママに、大好きだよってキスして欲しかった。其れだけなんだ・・・」



【彼女】に逢った時、あぁそっかって思った。



この人なら、私を人間としてみてくれる。



ちゃんと、助けてくれるって感じた。



信用出来るのは、【彼女】と【主】だけよ。



【主】も私を人間として見てくれた。



だから、要らないものは全て灰に変える。



もう、誰も哀しまなくて良いように、優しい世界にしてあげる。



最初から、私の居場所は此処にあったんだ・・・。




*****



『見返したいなら、能力をあげる。同じ思いの子を救いたいと願うなら、この手を取りなさい。能力はお前を不幸にする。その覚悟があるのなら』



勿論、答えはイェスだ。



他の仲間と仲良くするつもりはないけど、【彼女】の依頼なら割り切って受け入れる。



「もう、苦しむのはやめたんだ」




この手に握るものが微かにでもあるのなら、私はたった1つのロザリオを掲げて、叶わない祈りの夢を視る・・・。




「歓迎するわ。ようこそ、化物の世界へ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ