『未だ眠り続けている神様へ』
ねぇ、神様?
貴方はまだ、眠っているの?
こんなにも世界は変わっているのに。
私は、昨日も貴方の夢を視たわ。
淡い光に包まれた優しい微笑み。
何も語らない。
ただ、笑んでいるだけ。
その姿を見ているだけで、全てが救われたとさえ思ってしまう。
柔らかい光に触れて、微かに感じた存在。
でもね、夢には終わりがあるの。
目が覚めた時、また地獄に引き摺り込まれる。
この世界は残酷過ぎて、死ぬことさえ許されない。
辛い現実をどれだけの人間が受け止めている事だろう。
何処に手を伸ばしても誰も助けてはくれない。
受け止めなければならない現実。
それは誰に左右されたもの?
一つの種を落とした事から、日常は崩れ去った。
悪い芽が育ち、歪な世界を生み出した。
「あの日に帰りたい・・・」
そんな戯れ言さえ叶わない。
貴方が眠っているからなの?
人の願いが叶わないのは、貴方が何も見ていないからなの?
「答えて」
貴方なら全ての解答を知っている筈でしょう。
一つでもいいから叶えてみせてよ。
たった一人の叫びさえ届かない。
何にもすがるものがなくなって、彼は死んだわ。
一番楽になる方法を選んでしまった。
あんなに助けを求めたのに、私だけが手を差し伸べた。
でも、其だけじゃダメだった。
私にも怒りの目が向けられた。
それを哀しんだ彼はもっと自分を責めてしまった。
私が余計な事をしたから。
冷たい湖の中で彼は安堵の表情を浮かべていたわ。
望んだ結末じゃなかった筈なのに。
それでも安らかな笑みを浮かべて・・・。
ねぇ、神様?
聞こえていたら目を開けて。
見えているなら世界を変えて。
虚無に消える小さな叫び。
決して届きはしない。
その存在すら否定してしまったら、生きる意味すら失ってしまうから。
だから、せめて祈らせて。
アナタが確かにいた事を。
私は今でも信じているわ。
たとえ、願いが叶わなくてもあの時感じた存在は本物よ。
ねぇ、神様?
貴方はまだ深い眠りの中にいるの?
どんな夢を視て、なにを感じているの?
其所に人間はいるの?
神様・・・神様・・・。
その名前を唱えなければ生きていけない。
私は誰よりもアナタを信じているから。
彼のように簡単に生を投げ出したりしない。
自らを殺すなんて事、アナタが一番傷つくでしょう。
これも一つの逃げ道よ。
さぁ、神様?
そろそろ起きる時間よ。
ゆっくり目を開けて、ちゃんとその目で確かめて。
この世界のこと。
私たちのこと。
全ての厄災を取り払って。
そう、信じているわ。