第九話〜終幕
誰もいない洞窟は空までずっと立ち上ったまま、光を放ち続ける。
かつてその底を目指し、歩き続けた少女がいることなんて、誰も知らない。誰も。
白くて小さな光を放つコケが、地の底には生して。壁にはキノコの群生が並び、岩がほのかな燐光を発している。
空を漂うランタンも、もう既にほとんどが地の底に落ちて、腐りかけていた。
静かで、誰もいない回廊の空間。
「そう言えば、リューリーンは何になりたいの?」
言葉の栞が、消えかけた思いを乗せる。
「僕は、きっと・・・」
ヨルの中に広がる思いを乗せてその洞窟は、いつまでも広がるのだろう。
誰もいなくても、歩かなくちゃならないんだ。暗闇の中でも、一人ぼっちでも。
ささやかな灯りがあれば、地面を照らしてくれるから。そんな物をほんのわずかでも信じて、僕らは前へと。
静寂も、喧噪も時には恐怖と嫌悪を招く。何もない丘の下で僕らはみんなバラバラになりながら、それでも信じたいのだと思う。
そうだよね?ヨル。
崩れ落ちそうなコケが、リューリーンの体と、ヨルの体。その二つを形作るようにして、寄り添うにして、いつまでも光を放ち続けていた。




