表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺を殺した宝箱に俺が転生してどうすんだよ! ~中に入れたものが全部強くなる収納チート~  作者: ぶらっくそーど
第二部 太陽の下の宝箱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/117

第31話「蓋を開けろ、全部だ」


 翌朝。来た。


 ガウルが吠えた。


「ガウゥゥゥッ! 全方位から……来る! 北、東、南東——百以上! もっといる! 二百……三百……数えきれない!」


 三百。


 パカラ村の戦力は約百五十。倍の数だ。


 しかも凶暴化してる。理性がない。止まらない。


 ガルドが丘の上に立って叫んだ。


「全員、配置につけ! 訓練通りにやるぞ!」


 レグナが言った。


「第一陣は小型だろう。数で押してくる。次に中型。最後に——」


 蒼い炎が揺れた。


「核が来る……【残響】の本体だ。それを叩かねば終わらん」


 三段構え。


 俺は蓋文字で作戦を出す。



〝第一波 鋼蟲が壁を作れ ウォーウルフで側面を潰す〟

〝第二波 ホブゴブリンが正面 レグナは遊撃〟

〝第三波 俺が出る〟



 ガルドが頷いた。


「聞いたな! 動け!」



 ◇



 第一波。


 森の際から——ぞろぞろと出てきた。


 コボルトの野良群れ。ゴブリンの凶暴化個体。大蟲の群れ。


 目が赤い。全員、【魔王の残響】に侵されてる。


 数は——百以上。視界の端まで、ぎっしりいる。


 でかい声で吠えながら突っ込んでくる。統率なんてない。ただの突撃。


〝鋼蟲!〟


 俺の合図で——地面が動いた。


 丘の麓の土が盛り上がって、銀色の壁がせり上がった。


 鋼蟲だ。七十匹が密集して、体を寄せ合って壁を作ってる。鋼の外殻が重なり合って、即席の城壁。


 突っ込んできた小型魔物が壁にぶつかった。


 ガンッ! ガンッ! ガガガガンッ!


 弾かれてる。鋼の壁に体当たりしても、びくともしない。


 効かない!


 鋼蟲たちがカチカチ鳴ってる。「痒くもないぞ」って言ってるみたいだ。


 壁で足止めしてる間に——横から銀色の影が走った。


 ウォーウルフ。


 十八匹が左右から挟撃。


 ガウルが先頭を切ってる。


「全員、突っ込め! 噛んで、走って、噛んで、走れ!」


 ヒット&ラン。立ち止まらない。走りながら噛みつく。


 凶暴化した魔物は強いけど、ウォーウルフのほうが速い。追いつけない。


 一匹噛んで、走り抜けて、旋回して、もう一匹。


 銀色の旋風が、小型魔物の群れを端から削っていく。


 上から——鏡鱗竜が降下してきた。


 きらっ。


 鱗が太陽光を反射した。集光……一点に集めた光が、地面を焼いた。


「ギャアッ!」


 凶暴化ゴブリンが目を押さえて転がってる。目くらましじゃない、本当に焼いたのか。


 鏡鱗竜、攻撃力あったんだな。偵察だけじゃなかった。


 第一波——五分で蹴散らした。


 鋼蟲の壁の前に、気絶した小型魔物が積み重なってる。


 殺してない。凶暴化してるだけで、元は普通の魔物だ。残響が消えれば戻るかもしれない。


「第一波、終了!」


 ガルドが叫んだ。


 息つく暇もなく——第二波だ。



 ◇



 地面が揺れた。


 森から——でかいのが出てきた。


 凶暴化オーク、十匹以上。


 普通のオークじゃない。目が赤く光ってて、体から黒い靄が出てる。残響の影響がもろに出てる。


 一匹一匹がAランク下位相当。十匹いたら——やばい。


 そしてその後ろに——もっとでかいのがいる。


 岩の巨人、ゴーレムだ。高さ五メートル。目が赤い、こいつも凶暴化してる。


 Aランク相当が一匹、Bランク以上が十匹。


 第一波とは格が違う!


「ホブゴブリン隊、正面! 壁を作れ!」


 ガルドが三十四匹のホブゴブリンを率いて正面に出た。


 鉄の武器を構える。進化前は木の棒だったけど、今は鋼だ。


 凶暴化オークが突っ込んでくる。


 ガルドが先頭で受けた。


 オークの斧を——素手で掴んだ。


 ドレイク戦でやったのと同じだ。


「こっちも素手で斧を止めるぞ! 怖くねえだろ!」


 ホブゴブリンたちが吠えた。


 「「「おおおッ!」」」


 正面でぶつかり合った。ホブゴブリン三十四対凶暴化オーク十匹。


 数で勝ってる。でもオークは理性がない分、痛みを無視して突っ込んでくる。


 グリンが剣でオークの腕を斬った。でも止まらない、斬られた腕のまま突っ込んでくる!


「うわっ、こいつら痛がらねえ!」


 凶暴化の厄介なところだ。


 レグナが遊撃に出た。


 蒼い拳——が、正面のオークじゃなくて、自分たちへ回り込もうとしてた二匹に向かった。


「不意を突くな、気概があるなら正面から来い!」


 蒼い炎の拳が、オークの胸に突き刺さった。


 ドゴンッ!!


 吹っ飛んだ。五メートルくらい飛んで、木にぶつかった。


 もう一匹にも——


 ドゴンッ!!


 同じだ。蒼い炎で焼かれた部分は、残響の黒い靄が消えてる。


「残響の力は、炎で焼ける……我が炎であればな」


 レグナの炎が効くのか。元魔王軍の将軍の力だから、残響と相性がいいのかもしれない。


 でも、レグナは魂が不完全だ。全力を出せないし、戦い続けたら持たないだろう。


 後ろから——ゴーレムが来た。


 五メートルの岩の巨人が、拳を振り上げた。


 地面に叩きつけた。


 ドォォォンッ!!


 地面が割れた。衝撃波でホブゴブリンが何匹か吹っ飛んだ。


「ぐっ——!」


 ガルドが踏ん張った。でも、ゴーレムの前ではホブゴブリンは小さい。


 ガルドの拳じゃ、岩の体には効かない。


 ——俺の出番だ。


 ズズズッ!


 全速で前に出る。


 ゴーレムが俺を見た——見てるのかわからないけど、こっちに拳を振ってきた。


 でかい。


 避ける。ズズズで横に滑る。拳が地面を砕いた。俺のいた場所が陥没してる。


 反撃。


 パカンッ!


〝ファイアランス〟!


 赤い光の槍がゴーレムの胸に突き刺さった。


 ——浅い。岩が硬すぎて、表面を焦がしただけ。


 火が効きにくいか。じゃあ——


 パカンッ!


〝フロストエッジ〟!


 氷の刃が地面を走って、ゴーレムの足元に到達した。


 足首が凍りつく。氷が岩の隙間に入り込んで、膨張する。


 ミシッ。


 岩にヒビが入った。


 そうだ。水が凍ると膨張する。岩の隙間に氷を入れれば、内側から破壊できる!


 もう一発。


 パカンッ!


〝フロストエッジ〟!


 ヒビが広がった。ゴーレムの右足がぐらついた。


 ここだ。


 パカンッ!


 白い光弾——全力。ヒビが入った右足に直撃。


 ドゴォンッ!


 右足が砕けた。


 ゴーレムがバランスを崩して——傾いた。


〝ガルド! 今だ!〟


 蓋文字を出す暇もないから、心の中で叫んだ。


 ——声は出ない。宝箱だから。


 でもガルドは見てた。俺が何をしたか、全部見てた。


「全員——押せぇっ!」


 ホブゴブリン三十四匹が一斉にゴーレムに取りついた。


 傾いた巨体を——押した。


 ずずずず——


 ゴーレムが倒れた。


 ドォォォォンッ!!!


 地面が揺れた。五メートルの岩の巨人が、仰向けに倒れた。


 倒れたゴーレムの胸に——レグナが飛び乗った。


 蒼い拳を振り上げた。


「——動くな」


 ドゴォンッ!


 蒼い炎の拳が、ゴーレムの胸の中心を貫いた。


 岩が砕ける。中から——赤い光の核が見えた。


 ゴーレムの魔力核。これを壊せば止まる。


 でも核から——黒い靄が漏れてる。【残響】だ。


 レグナの蒼い炎が核に触れた。


 黒い靄が——燃えた。消えた。


 ゴーレムの目から、赤い光が消えた。


 動かなくなった。


 凶暴化が解けた。



 ◇



 オークたちも——レグナが一匹ずつ蒼い炎で触れていって、黒い靄を焼いた。


 赤い目が消えて、普通の目に戻っていく。


 凶暴化が解けたオークたちは——ぼーっとした顔で座り込んだ。


 「ここ……どこだ……?」


 正気に戻ったらしい。


 ガルドが汗を拭きながら言った。


「第二波も終わりか……?」


 終わりじゃない。


 ガウルの毛が逆立ってる。


「ガウ……まだ来る。もっとでかいのが。匂いが——今までで一番やばい」


 もっとでかい。


 森の奥が——暗くなった。


 昼なのに、太陽が出てるのに。


 森の奥から、黒いモヤが流れてきてる。


 モヤの中に——何かがいる。


 でかい。ゴーレムよりでかい。


 十メートル以上ある。


 黒いモヤそのものが、形を成してる。


 四本の足、長い首……角がある。


 何だ、あれは。


 レグナの蒼い炎が、燃え盛っていた。


 今まで見たことないくらい大きく。


「あれが……【残響の核】だ。魔王の怒りが凝縮し、形を成したもの」


 なるほど……あれが、昨日レグナがいっていた残響の核――魔王の怒りか。


 何百年も封じられた怒りが、ひとつの塊となって、歩いてる。


 Aランク相当——いや、そんなもんじゃない。


 もっと上だ。


「S級……いや、それ以上かもしれん」


 レグナが言った。


「我が全盛のときでも——」


 言い淀んだ。


 全盛でも勝てるかわからないのか。ましてや今の、魂の欠片だけの状態じゃ——


 黒い影が、一歩踏み出した。


 地面が陥没した。踏んだだけで。


 二歩目。


 丘に向かってくる。


 パカラ村に向かってくる。


「…………」


 全員が見上げてる。


 十メートルの黒い影を。


 怖い。正直、怖い。


 でも——


 パカッ。


 蓋文字を出す。


〝逃げない〟


 ガルドが拳を握った。


「当たり前だ」



 ◇



 【次回】パカラ村の全戦力で、残響の核に挑む。——足りない。全然足りない。そのとき、森の奥から——地面が揺れた。二十メートルの巨木が、歩いてくる。何百年ぶりに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ