5話 重なる影
ーー2週間後
「修二くん、この資料どこに収めればいいかな?」
「その資料は、右の棚だ。」
「うん、わかった。」
「というか、なぜまだ来る?
それにいちいち掃除する必要はないだろう……」
「だって修二くん、掃除しないと散らかすじゃない……
それにいいでしょ、部屋がキレイになるんだし、それに、用事が済んだら帰るしね。」
「なら、早く終わらせて、帰ってくれ……」
相変わらず鬱陶しい人だ……
だが、何故だろう?
前ほど、鬱陶しくは感じない……
「由美子さん、俺は買い物に行くから、終わったら好きに出てってくれ。」
「うん、わかった。
でも、カギはどうするの?」
「まぁ、開けっぱなしでいいよ。
大切なものはないしな、
じゃあ行ってくるよ。」
「うん、気をつけてね。」
ーー買い物帰り
ウー…ウー…ウー…
ピーポー…ピーポー…
「なんだ?事故か?
すみません、通ります。前失礼します。
……うわ…ひどい……」
焼ける金属やゴムの匂い……コンクリートで削れた車体が見える……
人混みの中から、話し声が聞こえてきた……
「車がトラックとの衝突事故だそうよ。」
「えー可哀想に、車がぺちゃんこだって、
かなり悲惨よね。」
「なるほど、そういう……」
「……
なんだ……あれは……」
4.5体ほどだろうか……その中に比較的濃い"影"がおかしいことに気づいた……
それは"薄い影"を覆い、一つの黒い塊になっていった……
「あんなの……見たことがない……」
しばらく観察していると、"影"は一体……また一体と影を取り込んでいく……
歪に、そして大きく、"濃い影"へと変わっていく……
影には、あんなものがあるのか……
「キミ!ちょっとキミ!
早く退いてくれないか!なにも見えない。」
「あ、すみません……」
いつのまにか、報道陣も駆けつけて来ているようだった……
「あ、早く持って帰らないと……」
ーー事務所
「はあ、」
「修二くん、おかえり」
「由美子さん、まだいたんですか?」
「うん、開けっぱなしは危ないからね。」
「あ、由美子さん、ちょうどいい
冷蔵庫にこれを入れておいてもらえませんか?」
「あ、うんいいけど……」
「ありがとうございます。」
由美子に任せて席についた。
あの影はなんだったんだ?
それに"影"が"影"を取り込むなんて……初めて見た現象だ…
なぜ、あんな不気味な見た目になるんだ……
「修二くん、聞いてる?
さっきニュースで見たんだけど、
近くの交差点で死者が5人だって……
家族全員だなんて、可哀想だよね……」
「あー、それなら帰る時に見ましたよ……
人混みがすごくて、あまり見れなかったですけど、激しい事故でしたよ……」
「すみません、少し考えたいので、
喋りかけないでもらえますか?」
「う、うん、ごめん…」
ノートを開き、記載する。
"影"は人に覆い被さる……これは憑依に近いのか?
それにあの交差点の影は説明はできない……
だか、存在が濃くなっていくのを感じた……
……"影"は何か目的があるのか?
だめだ……情報が何もかも足りない……
ただ、これだけは言える……
今の俺では、あの"影"はどうしようもない。
あの影が、人に被害を及ぼさないことを願いながら……
俺はそっとノートを閉じた。
理屈より先に、なにか嫌な確信だけを胸に残して……




