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1話 戻らない日常

ーーアパート

夜、ただ目を逸らさずに、ただ見つめる。


目の前にある"影"を……


夜は憂鬱だ、嫌でもあの日を思い出す……


ーー7年前の冬


ピピピ‥ピピピ‥ピピピ‥



冬の寒空下、アラームの音で目が覚める。


「ん〜」


アラームを止め、布団に頭を入れる。


「修二! 修二! 起きて!」


ドアの向こうから姉の声がした。


「もう……入るよ。

朝でしょ!さっさと起きろ!」


「さむ!

布団を剥ぐのはやめてくれよ姉さん……」


「あんたがいつまで経っても、起きないからでしょ。

母さんが朝ごはん作ってくれてるから、早く支度する!」


「お姉ちゃんありがとう。

修二、朝ごはん出来てるから食べて行ってね。」


「うん、母さんありがとう。

あれ?父さんは?」


「はぁ、呆れた……

父さんは早出だって、言ってたでしょ。

どうせ、ゲームのことで頭いっぱいで聞いてなかったんでしょ。」


「うっ……」


「まぁまぁ、喧嘩はそこまでにして……

修二も陽菜もご飯食べたら早く学校行かないと遅刻するよ。」


「はーい」


「じゃあ、母さん行ってきます。」

「母さん行ってきます。」


「はい、行ってらっしゃい。」


ーー


「修二アンタ、もう小学6年生でしょう

そろそろ1人で起きなさいよ

来年には中学生でしょ。


私も高3、来年には大学生なんだし、

毎日アンタを起こしてあげられる訳じゃないのよ。」


「まぁ、そのうち?

起きれるようになるよ。」


そのとき、視界の端にあるアパートに黒い何かが見えた気がした……


「ねぇ、姉さん

あのアパート……」


「修二、なに言ってるの?

早く学校行くよ。」


「あ、うん……」


「よ!修二

今日も帰りにゲームしようぜ!」


「あ、ごめん

今日は塾あるんだ……」


「修二、悠真くんが来たなら、

私は高校行くからね。」


「うん、バイバイ姉さん」


「修二、学校終わったら迎えに来るからね。

この前みたいにサボらせないからね……」


「あ、はい……」



ーー学校



「この式は……」


今日のあの影はなんだったんだろう……


不思議と、その疑問が頭を離れなかった……


「ちょっと、修二くん

聞いてる?」


「はい!

それで……なんの話でしたっけ?」


「はぁ、聞いてないじゃない。」


「ハハハ!」とクラス中が笑いに包まれた



学校が終わると姉さんが迎え来ていた。


「あ、姉さんだ。」


「お、姉ちゃん来たのか

じゃあまたな、修二明日ゲームしようぜ!」


「うん、またね。悠真」


ーー塾が終わり帰路の道中


「修二、今日はどうだったのよ?」


「俺は……まあまあだよ……

そう言う姉さんはどうなんだよ……」


「私は模試A判定

あんたとは違うのよ!」


「おーすげぇ姉さん!」


「まぁねぇ」

誇らしげな姉を見た先に、朝見たアパートがあった。


「ん?修二、

あんた朝も見てたよね?」


「うん、なんか見えた気がして……」


「ええ、なに?

幽霊でも見たいの?」


「………」


俺は朝のようにアパートの窓を見ると、

誰かが殴られたように見えた。


「ねぇ、姉さん……

人が殴られてるんだよ……」


「修二?

本当になに言ってるの?」


「姉さん!人が殴られてるよ!助けなきゃ!」


「ちょっと、修二

待ちなさい!」


今思えば、なぜ助けなきゃと思ってしまったのだろう……


いや、見えてしまった以上、無視することはできなかった。

幼いながらに……そう…思ったのだ……


慌ててアパートの扉を開けると…


埃が舞い、夕日が差し込む部屋には、

黒い何か、不安定な”影”があった。


明らかにこの世物ではないと、直感的に感じた。


なのになぜ……声をかけてしまったのか……


「あ、あの大丈夫…ですか?」


すると”影”は形を成し始め、

人の形を取り始めた……

俺は初めて見る光景に、体は動けなくなってしまっていた。


「修二……なにそれ……」


俺は返事もできずに、固まっていると……


「待って!なに!?

来ないで!」


影は俺の横を通り、後ろにいるであろう姉さんへと向かって行った。


「いやー!」


後ろからバタン!と、何かが倒れるような音がした……


後ろを振り向くと……

そこには倒れている姉と、その姉に覆いかぶり、だんだんと薄くなる”影”があった……


俺は姉さんにかけ寄り、手を取る。

あったかいはずの手は、何処か軽く。


「姉さん!大丈夫!なんだ、これ!

姉さんから離れろよ!姉さん、大丈夫!?」


姉さんを呼んでいるのに、離れていく……

そんな感じがした……


何度呼びかけても、姉さんは起きず

姉さんを覆う”影”は消えない


どれだけ姉を呼んだだろう、気づくと夜になっていて……

その叫びを近所の人たちが聞きつけたのか、

警察や救急車、両親が来ていた……



「修二!陽菜に何があった!

誰かに襲われたのか!」

あったことを全て、父と警察に事情を話した。


父と警察に信じてもらえず、パニックになって見てしまった幻覚という事にされた……


「修二、母さんから運ばれた病院を教えてもらったから、今から向かうぞ。」


「うん……」


病院へ向かう直前、

「あの部屋噂の……」と言っているのが聞こえた…


姉の病室に入ると、モヤはまだ姉に覆い被さっていた……

体は痩せ細り、体にアザみたいな傷が浮かび上がっていた……


「陽菜の容姿はどうだ、母さん…」


「原因不明の気絶としか……」

母さんはトラブル対応で疲れたのか、少しやつれていた……


「修二、お姉ちゃんになにがあったの?」


「それが……」


「いい加減にしてくれ、そんなものはない!」

母をあったことを話している俺を遮るように父が怒鳴りつけた…


「ちょっとお父さん、ここは病院ですよ。」


「……すまん……修二は、ありもしないことを……」


「修二も混乱してるんです……

落ち着いた時に、また聞いましょう……」


そんな両親の様子を見ながら、あの”影”は誰にも見えないんだ。


……きっと俺のせいだ……

俺のせいで姉さんは……あの”影”に……

そう、考えずにはいられなかった……


姉に起きたことを知らないといけない……

幼いながらにそう思った……


それから俺は医学からオカルトに至るまで、ありとあらゆる書物を探した。


調べる中で、姉に起こった出来事は、心霊現象にまつわる話でよく見られた。


そして俺は一つの結論に達した。


ー幽霊とは、現象である。



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