黄幡神社と陰陽師の伝説 第5話:黄幡神の鎮座
作者のかつをです。
第十九章の第5話をお届けします。
厄災を封じ、神として祀る。
日本の神社の多くは、こうした「鎮魂」や「封印」の歴史を持っています。
黄幡神社もまた、そうした人々の切実な願いから生まれたのかもしれません。
※この物語は史実や伝承を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
陰陽師が目を覚ました時、彼は村長の手厚い看護を受けていた。
「先生! ありがとうございます! おかげで、井戸の水も澄み、病人たちの熱も下がりました!」
村長は、涙ながらに感謝した。
村は、救われたのだ。
陰陽師は、身体を起こし、静かに言った。
「……まだ、終わりではありません。あの場所に降ろした黄幡神を、正しくお祀りしなければなりません」
彼は説明した。
黄幡神は、強力な力を持つがゆえに、粗末に扱えば再び災いをもたらす恐ろしい神に戻ってしまう、と。
しかし、礼を尽くして祀り続ければ、その強大な力で、外から来るあらゆる災厄を跳ね除ける、最強の守護神となってくれるだろう、と。
「あの丘に、社を建てなさい。そして、黄幡神として祀るのです」
村人たちは、総出で社を建てた。
立派な鳥居を立て、しめ縄を張り、あの日突き立てられた矛をご神体として奥深くに納めた。
「黄幡神社」。
その名が刻まれた額が掲げられた時、村人たちは安堵と共に、新しい神への畏敬の念を抱いた。
かつて自分たちを苦しめた土地の因縁が、今や自分たちを守る盾となったのだ。
陰陽師は、神社の完成を見届けると、再び旅支度を始めた。
「先生、どうかこの村に留まってください」
村人たちは引き止めたが、彼は首を振った。
「私の役目は終わりました。あとは、あなた方がこの神様を大切に守っていくことです」
彼は、村人たちに暦の見方や、星の巡りに合わせた祭りの時期などを教え遺した。
それは、彼らが自らの力で自然と共存していくための、知恵の贈り物だった。
出発の朝。
村人たちは、街道まで彼を見送った。
「名も名乗らず、去っていかれるのですか」
陰陽師は、振り返ってニリと笑った。
その笑顔は、初めて会った時のミステリアスなものではなく、どこか親しみのある、一人の人間の顔をしていた。
「星は、巡ります。また、いつかどこかで」
そう言い残し、彼は朝霧の中へと消えていった。
まるで、最初から幻であったかのように。
しかし、丘の上に鎮座する社だけが、彼が確かにここにいたことを証明していた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
黄幡神のシンボルカラーは「黄色」とされています。神社の名前にもある通り、黄色い幡を掲げて祀る習慣があったようです。
さて、物語は現代へ。
陰陽師が遺した神社は、今どうなっているのでしょうか。
次回、「星は見守っている(終)」。
第十九章、感動の最終話です。
物語は佳境です。ぜひ最後までお付き合いください。




