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ひろしま郷土史譚《瀬野編》~街道と鉄路が続く物語~  作者: かつを
第4部:伝奇・民話編 ~土地に眠る不思議な物語~
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河内神社と瀬織津姫の秘密 第6話:川は流れ続ける(終)

作者のかつをです。

第十六章の最終話です。

 

これまでの章で描いてきた様々な時代の人々の営みを、川の女神の視点で包み込むように締めくくりました。

歴史の「縦糸」を感じていただければ幸いです。

 

※この物語は史実や伝承を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

今日も、私は流れる。

山から海へ。

過去から未来へ。

 

私の名は、瀬織津姫。

川の瀬に坐す神。

 

神話の時代のヒナタとイツセ。

戦国乱世の弥助。

江戸の茶屋娘、おはな。

職人の正吉。

幕末の志士、松陰。

悲しき義賊、権太。

蒸気機関車の健太。

そして、名もなき女工のハツ。

 

この土地で生き、笑い、泣き、そして去っていったすべての人々の物語を、私は知っている。

彼らの喜びも悲しみも、すべて私の水の中に溶け込んでいる。

 

 

 

 

……現代。河内神社。

夕暮れ時、一人の若者が川沿いの道を歩いてくる。

仕事で疲れたのか、その足取りは重い。

 

彼は、神社の前で足を止め、ふと川面を見つめた。

 

さらさら、さらさら。

 

変わらぬせせらぎの音が、彼の耳に届く。

 

彼は、大きく深呼吸をした。

川の冷たい空気が、彼の肺を満たす。

 

「……よし」

 

彼は小さく呟くと、また歩き出した。

その顔は、来た時よりも少しだけ晴れやかに見えた。

 

私は、彼を見送る。

 

大丈夫。

あなたの疲れも、迷いも、私が海へ流してあげよう。

だから、明日はまた新しい気持ちで生きていきなさい。

 

川は、流れ続ける。

この瀬野という土地がある限り。

人が、そこで生き続ける限り。

 

私は、いつでもここにいる。

あなたのすぐそばの、このせせらぎの中に。

 

(第十六章:川の女神は見ていた ~河内神社と瀬織津姫の秘密~ 了)

第十六章「川の女神は見ていた」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

 

瀬野川流域には、上流から下流にかけていくつもの河内神社が鎮座しています。それは、この川がいかに人々の生活にとって重要であったかの証ですね。

 

さて、川の物語の次は、山に眠る石の物語です。

 

次回から、新章が始まります。

**第十七章:旅する道祖神 ~野原山城跡、石の神様が見た夢~**

 

山城の廃墟から、人里の路傍へ。

祀られる場所を転々としながら、数百年もの間、旅人を見守り続けた一対の道祖神の物語です。

 

引き続き、この壮大な郷土史の旅にお付き合いいただけると嬉しいです。

ブックマークや評価で応援していただけると、第十七章の執筆も頑張れます!

 

それでは、また新たな物語でお会いしましょう。

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