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ひろしま郷土史譚《瀬野編》~街道と鉄路が続く物語~  作者: かつを
第4部:伝奇・民話編 ~土地に眠る不思議な物語~
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河内神社と瀬織津姫の秘密 第5話:現代の願い

作者のかつをです。

第十六章の第5話をお届けします。

 

戦後の環境汚染と、そこからの再生。

川の女神は、人間の愚かさも、そして賢明さも、すべてを見てきました。

現代の瀬野川の風景に重ねてお読みください。

 

※この物語は史実や伝承を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

昭和、そして平成。

私の姿もまた、大きく変わっていった。

 

暴れ川だった私は、コンクリートの護岸で固められ、真っ直ぐに整えられた。

もう、自由に氾濫することはできない。

 

高度経済成長の時代。

私の水は、汚れた。

泡が浮き、魚が住めないほどの時期もあった。

 

「穢れ……」

 

私は苦しかった。

人々の罪を流すはずの私が、人々が出すゴミと汚水で穢されていく。

瀬織津姫としての力が、弱まっていくのを感じた。

 

しかし、人間たちは愚かではなかった。

彼らは気づいたのだ。

川が死ねば、自分たちの暮らしもまた、潤いを失うのだと。

 

「瀬野川を、きれいにしよう」

 

地域の人々が立ち上がった。

子供たちがゴミを拾い、大人たちが水を守る活動を始めた。

 

少しずつ、少しずつ、私の水は澄んでいった。

魚が戻ってきた。

水鳥が、また羽を休めるようになった。

 

河内神社の境内も、人々の手によって掃き清められた。

 

現代の人々の祈りは、昔とは少し違う。

生きるか死ぬかという切実な願いは減った。

代わりに、受験合格、交通安全、家内安全。

ささやかで、個人的な願いが増えた。

 

それでも、祈る心に変わりはない。

 

「どうか、見守ってください」

 

その言葉を聞くたび、私は思う。

 

私は、ここにいる。

形が変わっても、水が入れ替わっても。

この土地を流れる水である限り、私はあなたたちの罪を流し、心を清め続けるだろう。

 

コンクリートの隙間から、小さな草花が顔を出している。

その強さに、私は微笑む。

人間も、自然も、何度でも蘇る力を持っているのだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

現在の瀬野川は、地域の方々の努力によって美しい清流を取り戻しています。河内神社の周りもきれいに整備され、散歩コースとして親しまれています。

 

さて、物語は終わりへ。

悠久の時を見つめてきた女神の、最後の独白です。

 

次回、「川は流れ続ける(終)」。

第十六章、感動の最終話です。

 

物語の続きが気になったら、ぜひブックマークをお願いします!

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