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第一章 第七話 新たな敵と不安と発見


階段を登り切ると、冷たい空気が二人を包んだ。

第一層とはまた違う、湿り気と腐臭の混じるような気配が鼻を刺す。


「うぇ、なんか臭い……」


愛華が顔をしかめ、そっと鼻を覆った。

新は目を細め、前方の通路を見つめる。壁の材質は第一層と似ているが、苔のような模様が這っていて、ところどころに水たまりのような濡れた跡があった。


「気をつけて。足場も悪いかも」


「うん、ライト出すね……《ライト》」


愛華が光の球を指先から浮かべ、ふわりと空中に放つ。天井近くまで昇った光球が、広がる通路と三つの分岐を照らした。


新は魔眼を起動し、周囲の気配を探る。

壁の奥には、いくつかの“鼓動”が感じられた。滑らかで、粘性のあるそれは──スライムのそれに近い。


「左と奥に反応。たぶん……2体ずつ。右は、まだわからないけど静か」


「……やっぱ、どこ行っても敵がいるんだね」




「じゃあ……先に、左を片付けようか。動きやすくなるし」


そっと足音を忍ばせ、左の通路へと進む二人。

その先にいたのは、前に倒したものより一回り大きなスライム。青緑色の体表に、紫の線が浮いている。


「……ちょっと、毒っぽい?」


「気をつけて! ホーミングドット、発射!」


愛華の指先から放たれた光線が、スライムの表面に直撃するも、ほんの少しだけ反応が鈍い。

前より硬い。


「来るぞっ!」


新が一歩前に出て、スライムの跳躍をかわし、ナイフで横腹を切る。魔眼が教えてくれた、“弾力の少ない場所”を正確に突いた。


じゅるりと音を立ててスライムが崩れると、すぐさま奥のもう一体が迫ってきた。


「フラッシュッ!」


光の閃光が発動し、スライムの動きが一瞬止まる。

その隙を逃さず新が回り込み、愛華のホーミングドットと挟撃。


数分の連携の末、2体のスライムを無事撃破。



【スライム(毒性)討伐】

【獲得ポイント:+15/ +15】

【レアドロップ:なし】







「今の……ちょっと手強かったね」


「うん。でも、連携取れてた。スライムなら、もう怖くないな」


愛華の光魔法と、新の魔眼・ナイフによる精密攻撃。二人の戦い方が、はっきりと“かたち”になり始めていた。




いくつかの通路を進み、小さな宝箱や素材の欠片(換金用)を拾いつつ、再び静かな扉の前に立った。


「……この感じ、またセーフゾーン?」


「確認してみよう」


扉を開けた瞬間、あの見慣れた景色が目に飛び込んできた。


「……え、これ……!」


「まって、あのスツール……」


新が思わず駆け寄る。そこにあったのは、前のセーフゾーンで“試しに設置した”まさにあの小さな椅子。


汚れも、位置もそのままだった。


「……やっぱり、同じだ。これ、完全に“同じ部屋”なんだよ」


「じゃあ、このセーフゾーンって……ひとつしかないの? それとも……“再利用されてる”?」


新は無言のまま、部屋全体を見回す。天井、照明、ベッドの配置、床の擦り傷。どれも、前とまったく同じ。


「ただの安全地帯ってだけじゃなくて、“繰り返されてる”……このダンジョン全体が、もしかすると……ループ構造?」


愛華が小さく息を呑んだ。



セーフゾーンで食事を取り、ポイントの割り振りを確認しながら、新と愛華はそれぞれ考えていた。


この空間は作られている。

プレイヤーを管理するように、最適化され、設計されているようにすら思える。

最初はゲームだと思っていた。けれど、それだけじゃない。


「まだ2層目だけど……このダンジョン、単なる“ダンジョン”って言葉じゃすまないな」


「うん……先が、すごく不気味になってきた……」


新の魔眼が、何も映さない天井をじっと見つめる。



休息のあと、彼らは再び立ち上がる。

次は、さらに深い場所へ──三層目の闇が、彼らを待ってる。


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