第二章 第十五話 リザルトと新たな始まり
“憤怒の斧小鬼”エンレイ・ゴブリンが地に伏した瞬間、洞窟全体が低くうねるように揺れた。
《第五層ボス:“憤怒の斧小鬼”討伐確認。報酬:300ポイント、防具《硬質布の外套》付与》
《踏破条件達成──扉の開放を確認。次層への進行を許可します》
無機質なアナウンスが響き、同時に、倒れたエンレイの巨体のそばで光が揺らめいた。
地面に転がったそのアイテム──淡く青灰色に光るマントのような布。手に取ると、驚くほどしなやかで、金属のような冷たさもある。
「これが……ドロップ品?」
「すごい、まるで防弾布みたい……」
新は軽く布を広げ、肩にかけてみる。見た目以上に軽く、動きに支障はない。
「悪くないな。ボスが落としたにしては地味だけど、動きやすいし、守ってくれそうだ」
「うん、それに似合ってるよ」
二人は視線を交わし、わずかに笑う。
だが、その顔は疲労に彩られていた。
「……先に、行こう」
「うん」
ボス部屋の奥。黒鉄のような扉が音もなく開かれる。
その先にあったのは、いつもの“セーフゾーン”だった。
第五層ボス“エンレイ・ゴブリン”との激戦から一夜。新と愛華は、ようやく得たセーフゾーンの静けさの中で、焚き火の明かりを眺めていた。
「……落ち着いたね」
愛華がそっと呟く。
「うん。だけど、正直まだ緊張が残ってる。……初めてのボス戦、マジで死ぬかと思った」
「私も。あんなの、また来るのかな……」
ふたりの間に漂う空気は、ただの疲労ではなかった。戦いを経て得た“責任”と“覚悟”の匂いが混じっていた。
「ところで、新……ステータス、見直してみた?」
「ああ。魔眼はレベル5のまま。スラッシュもレベル4に上がって、使用後の硬直もかなり減った。ステータスもだいぶ平均的に振って、今は体力も筋力も20くらい」
「すごい、順調に伸びてるね。私は魔力と回復速度を中心に上げて……魔力は30近く。回復速度は7」
「光魔法はどうなった?」
「ついに、光魔法レベルが5に上がったの」
愛華はそう言って、膝に立てていた杖を持ち上げ、手のひらをかざした。小さな光球がふわりと浮かび、ふたりの顔を照らす。
「《ライト》と《フラッシュ》、それに《ホーミングドット》は今も健在。ホーミングドットはレベル4で、軌道制御がきくようになった。でも、何より──」
手のひらに、新たな光が渦巻く。
「──《ヒール》。単体小回復だけど、ようやく回復魔法を使えるようになったよ」
新は思わず息を呑んだ。
「すげえ……回復魔法って、本当にあるんだな。これで、アイテム頼りじゃなくなる」
「ううん、まだ回復量は微々たるもの。でも、“回復手段を持ってる”ってことが、私の安心になる気がして」
「……頼りにしてる」
その一言に、愛華の頬が少しだけ赤く染まった。
「そうだ、ボスのドロップ品……確認しておこうか」
新が収納袋から報酬アイテムを取り出した。
「この《硬質布の外套》、着てみる?」
「うん、着心地は……普通かな?でも軽くて動きやすい。防御力はそこそこ高そう」
「じゃあ、これは愛華が着てくれ。俺はまだ刀で戦うつもりだし外套だと少し動きにくい。それにこれからは愛華が俺達の生命線だ………後…愛華が怪我するのは嫌だしな……」
新は寝転がってそっぽ向いてしまう、頬か少し赤く見えるのは焚き火のせいなのだろうか。
「早く地上に戻るためにも、強くなろう」
そう言って、愛華は微笑む。
新も小さく笑って頷いた。
──ダンジョンは、まだまだ続く。
だが、彼らの足取りは、確かに強さを帯び始めていた。
《相澤 新》【更新後】
体力:20
筋力:18
敏捷:19
魔力:7
魔眼:Lv.5(鑑定・索敵精度向上)
スキル:《スラッシュ》Lv.3(チャージ増・威力増)
装備:《鉄刀》
残りポイント:30pt
《結城 愛華》【更新後】
魔力:30
魔力回復速度:15
光魔法:Lv.5(光属性スキル強化)
スキル:
・《ホーミングドット》Lv.4(追尾型・微弱攻撃)
・《ライト》(照明/小規模)
・《フラッシュ》(目くらまし/単発)
・《ヒール》Lv.1(小回復・単体)
装備:《木の杖(魔法効果上昇・小)》
《硬質布の外套》
残りポイント:0pt