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第30話 邸の幽霊達、ゴーレムの体を得る!

冒険者ギルド内で、バッキオを見かけた俺は、リアを連れて早々に建物を後にした。


バッタリ顔を合わせて、また絡まれたらイヤだからな。


幽霊邸へと戻った俺達は、エルラム、セルジオと一緒に空き部屋でゴーレムを作ることにした。


俺は右手の中指にはめている指輪に手を当て、『取り出し』と頭の中で念じる。

すると目の前にトレントの材木とオークやオーガの魔石が現れた。


この指輪はゴブリンの巣穴の奥で発掘した宝具の一つで、エルラムの説明では『異次元収納の指輪』と呼ばれる古代文明の遺産だという。


リアの話では、冒険中に発見した魔道具は冒険者の所有にしていいらしいので、発見した宝具は俺達で使うことにしたのだ。


トレントの材木を前にして、エルラムが杖をかかげる。


『変化せよ!』


するとトレントの木材がピカッと光り、人型へと変化する。

光が消え去るとその人型の全身に、エルラムがポルターガイストを利用して謎の紋様を次々と刻んでいく。

そして胸の中央に穴を開けて、オークの魔石をはめ込んだ。


『これで下準備は整ったわい。後はセルジオが出番じゃな』


「では、失礼いたします」


セルジオを礼儀正しく頭を下げると、霧状に変化してトレントの人体を覆っていく。

すると胸の魔石から眩い光が全身へ巡り、それと共に外観が徐々に変化して、執事姿の男性の姿となった。


黒ひげを蓄えた燕尾服の男性が立ち上がって、ニコリと微笑む。


「肉体を持つのは数十年ぶりです。このような体を用意していただき、エルラム様に感謝いたします」


『違和感は感じないか?』


「手足も滑らかに動きますし、体も軽いです。問題ありません」


エルラムがゴーレムと言っていたから、木材人形のようなゴーレムを想像していたけど、どこから見ても人間にしか見えないじゃないか。


今のセルジオを幽霊だとわかる人は誰もいないだろう。


驚きを隠しきれない俺の隣で、リアが嬉しそうにニッコリと笑う。


「これなら、アリスちゃんに体を作ってあげられるわね。それに邸の皆にも」


リアとアリスちゃんは仲が良いから、やはり彼女が幽霊だということを気にしていたのかな。


冒険者ギルドで買い込んだトレントの部位や魔石も沢山あるから、どうせならオランや幽霊メイド達にも肉体を作ってあげよう。


俺とリアはエルラムにお願いして、邸にいる幽霊達の人数分のゴーレムの素体を作ってもらった。

そして家事をしている幽霊達を部屋に集めて、次々とゴーレムに憑依してもらう。


肉体を得たポリン、メイ、ノーラの幽霊メイド三人組は、メイド服のスカートをヒラヒラさせて飛び跳ねる。


「「「ご主人様、ありがとうございます!」」」


体の素体はトレントの木材なのに、メイド達の胸がプルンと揺れる。

やはり女子は生きている体のほうが目の保養になるよね。


庭師のサム爺と御者のロイも、体を与えられて嬉しそうだ。


エルラムの話では、このゴーレムの肉体は魔石の魔力を利用して、体の全てに魔力が流れる仕組みになっていて、幽霊自体の魔力を使う必要はないらしい。


そして一回、ゴーレムに憑依すると、それは自分の専用の体となり、いつでもその体から自由に出入りすることができるという。


時刻は夕方になり、オランとアリスちゃんが手を繋いで、邸へと帰ってきた。


二人にゴーレムの体を作ったことを話すると、アリスちゃんが元気良く手をあげる。


『私も体ほしいー!』


『体があれば、もっとお役に立てるです』


二人には既に完成したゴーレムの素体へ憑依してもらう。


するとトレントの人型はが徐々に変化して、アリスちゃんは可愛い金髪の女の子の姿となった。

そしてオランは中性的な顔つきの小人族の女子へと変わった。


そろそろ窓から見える景色が暗くなり、夕食の時間が近づいてきた。

食堂の椅子に座っていると、厨房からメイド三人組が、料理を乗せたカーゴを運んでくる。


テーブルの上一面に料理を並べ、今日は全員で食事をすることになった。

ステーキの肉を頬張ったオランが涙を流す。


「こんな美味しい料理は数十年ぶりなのです。肉体があるとこんなに食事が美味しいんですね」


「幽霊の時はどの匂いや嗅いでも、味がボンヤリとしていましたけど、本当に美味しいです」


野菜サラダを食べながら、メイド長のポリンも涙を零す。


気が付くと、テーブルを囲む全ての幽霊達が、料理を食べながら涙を流していた。


幽霊の時は料理の臭いを嗅ぐだけだったから、やはり直接的に食べるのとは少し味が違ったんだな。

視線を隣へ向けると、リアも目をウルウルと潤ませている。


「これからは、いつでも美味しい料理を食べられるわよ! 今日はお腹が一杯になるまで楽しみましょ!」


「「「「「「「はい!」」」」」」」


アリスちゃんとオランは、料理を口一杯に放り込んで、嬉しそうにモリモリと食べている。

ちゃっかりとゴーレムの体を得たエルラムは、小樽に入っているエール酒を一気に飲み干していた。


今まで幽霊達の食事は要らなかったけど、これから皆の分の食料が必要になる。

その分だけ出費もかさむわけで、何か金策を考えたほうがいいかもしれないな。


幽霊達がゴーレムの肉体を得てから二日が経った。

今日も幽霊メイド達は元気に邸を掃除している。


俺とリアが応接室のソファに座って寛いでいると、アルバート様が邸を訪れた。

執事のセルジオと一緒に室内に入ってきたアルバート様がキョロキョロと周囲を見回す。


「アリスちゃんはどこだ?」


「すみません。アリスちゃんはメイドと一緒に買い物に出かけています。もうすぐ帰ってくると思いますので、お待ちください」


ゴーレムの肉体を得た邸の幽霊達は、これで街中を歩いて買い物ができると言って、可愛いアリスちゃんを一緒に連れて出かけることが多いのだ。


愛娘がいないと知って、寂しそうな表情でアルバート様が、ドサッとソファに座り込む。

話題を替えたほうがいいと思った俺は、片手を差し出す。


「今日はどのような用件で来られたんですか?」


「ではアリスが帰ってくるまでに用件を済ませよう。ペイジ・ヤードマンのことは覚えているか?」


「地下牢に入っている男ですよね」


「ガストンから伝令が来たのだが、同じく地下牢に入っていたクエンオット商会のロマリオが殺されていてな。 それと同時にペイジの姿が消えたのだ」


ロマリオはカルマイン伯爵の手足となって、レグルスの街でミルキースパイダーの糸を独占的に買い込んでいた。

ペイジはカルマイン伯爵の裏の仕事をする配下である。


ということは警備兵の尋問によってロマリオが証言することを封じるために、ペイジが殺したと考えるのが妥当だよな。


なんだか話がキナ臭くなってきたぞ!

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