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第27話 王都エルドラに到着!

エルラムに教えてもらったのだが、バックランド伯爵領は、エルランド王国の東の辺境にあり、王都エルドラはエルランド王国の中央にあるそうだ。


領都アルノスから王都エルドラまでは、馬車で一週間ほどの距離らしい。


護衛は『ホラーハウス』だけかと思っていたら、アルバート様の私兵達も俺達と一緒に護衛に就くそうだ。


アリバート様いわく、自領であるバックランド伯爵領内であれば気安く移動できるが、王都アルノスへ赴くとなれば、一定の兵士を護衛につけて旅をするのが通例らしい。


日本の江戸時代にあった大名行列を思い出す。

この異世界でも貴族が格式を重んじるのは同じなんだな。


アルバート様、ユーリンさんは同じ馬車に乗り込み、二十人ほどの護衛の兵士に守られて、領都アルノスを出発した。


馬車の近くにいると私兵達に睨まれるので、俺、リア、エルラム、オランの四人は集団の後方を歩いていく。


アリスちゃんは実体化して、アルバート様達と一緒の馬車に乗っている。


俺達が出発したのと同時に、『閃光の翼』の面々はレグルスの街へと帰っていった。


さすがに兵士達に囲まれた馬車を強襲しようとする野盗はいないようで、旅は順調に進んでいく。

街道には時々、周辺の森から魔獣が出没したが、兵士達の一斉攻撃により討伐された。


これなら俺達が馬車を護衛する意味は全くないよな。


というわけで、俺達『ホラーハウス』の面々は、ノンビリと旅を楽しんでいた。


一週間の長旅も、私兵達が護衛しているおかげで、野盗などに襲われることもなかった。

多数の兵士を相手にして、野盗達も怖気づいたんだろうな。


予定通りに王都エルドラに着いた俺達一行は、アルバート様の王都邸に滞在することになった。


邸の維持管理や使用人の雇用だけでも大変なのに、貴族というのは、どれだけ邸を所有してるんだよ。

やはり貴族って何もかもスケールが違うよね。


王都の大通りにロックウェル商会の本店があり、ユーリンさんとお別れをした。


そしてアルバート様の王都邸で一泊した翌日、俺達『ホラーハウス』はアルバート様と一緒に、王都エルドラの丘の上にある王城へ向かうことになった。


アリスちゃんは騒動を起こしそうだから、オランと一緒に王都邸でお留守番だ。


城の大門を潜り、馬車を庭園に停止させると、近衛兵がやってきて城の中を案内してくれた。


廊下を歩きながら、エルラムがキョロキョロと周囲を見て、満足そうに頷く。


『調度品は色々と変わっておるが、城の構造は何も変わっておらんのう』


「以前に来たことがあるのか?」


『ふむ。この城が建設されて間もない頃に少しだけのう』


近衛兵に案内されて来賓室で二時間ほど待っていると、正装した文官が部屋を訪れて、王陛下との謁見できると告げてきた。


するとソファに座っていたアルバート様がゆっくりと立ち上がり、俺達の方へ視線を向ける。


「それでは謁見の間へ移動しよう。『ホラーハウス』の皆も一緒に来るように」


「待ってくださいよ。王様と謁見するなんて聞いてないぞ」


「話していれば逃げていただろ。宝剣エクリプスをゴブリンの巣窟から持ち帰ったのはお前達『ホラーハウス』だ。その功績や褒賞もトオル達が貰うべきものだろう」


「褒賞が貰えるんですか! それなら王様と会います!」


褒美が貰えると知って、リアはニンマリと笑って明るく片手をあげる。


一国の王様と謁見するのに、そんなに気軽でいいのか。


もし、王様の機嫌を損ねることがあれば、不敬罪で俺達の首を飛ぶかもしれないのに。


あー、何だか腹が痛くなってきたー。


仮病を使って逃げようと考える俺に、エルラムが声をかける。


『いざとなったら、ワシの特大魔法を使って』


「王国を相手に何をしようと考えてるんだよ! 頼むから、絶対に騒ぎを起こさないでくれ!」


『ふん、冗談のわからん奴じゃのう』


命に関わることを冗談にするな!

エルラムが言うと本当に大きな騒動を起こしそうで怖いんだよ!


しばらく抵抗を続けたが、アルバート様とリアの強引な説得により、俺も王様と謁見することになった。


近衛兵の案内で城の最上階付近にある謁見の間へと赴く。

豪華絢爛な扉が両側へと開き、広間には真赤な絨毯が玉座まで続いていた。


アルバート様、俺、リアの三人は煌びやかな赤い絨毯を歩いて広間の中央まで行って片膝を着く。


俺達の隣にエルラムが悠然と立っていたりする。


誰にも見えないから、幽霊は気楽でいいよな。


すると既に玉座に座っている王陛下がアルバート様に声をかけきた。


この方がアルバート様が馬車の中で説明してくれたライオネル・エルランド王だな。


「バックランド伯爵、そなたが突然に城まで来るとは、余に急用か?」


「は、まずは、この剣をご覧ください」


アルバート様は膝を着いた姿勢のまま、深く会釈して隣で固まっている俺に合図を送る。


それにぎこちなく頷いて、俺は俯いたまま背中に負っている鞘から宝剣エクリプスを抜いて両手でかかげる。


その宝剣を見て、ライオネル王陛下は興味深そうに目を細める。


「見事な剣だが、この剣に何かあるのか?」


「私は冒険者をしているトオルと申します。先日、レグルス近郊の森でゴブリンの異常発生が確認され、その調査に向かい、そこでゴブリンの巣窟を発見し、隣にいるリアと共に巣穴へと潜入いたしました。地底深くでゴブリンキングと戦闘になり、なんとか討伐に成功しました。この剣はゴブリンキングが持っていた宝剣エクリプスでございます」


「宝剣エクリプスといえば、我が祖先、英雄王子が所持していた宝剣ではないか!」


俺が宝剣エクリプスを持ち帰った経緯を説明すると、宝剣の名を聞いたライオネル王陛下は目を見開く。


すると宝剣エクリプスが空中に浮かび上がり、王陛下の前まで飛翔していった。


「アナタが私の子孫、今のエルランド王ですか? 世間では私のことを英雄王子と呼んでいるらしいですが、私は女性です! 断固、抗議します!」


「宝剣が喋っているぞ! これはどういうことだ!」


「王陛下、どうか落ち着いて。宝剣に憑依している女性は、リーゼ・エルランド様。エルランド王家に連なる方です」


リーゼ様が突然に声を出したことで驚いている王陛下に、アルバート様が彼女の素性を説明する。


すると、それを聞いた王陛下は、真剣な表情になり目を鋭くした。


「バックランド伯爵、貴殿の用件は理解した。別室にて二人で話をしよう」


今、謁見の間には、俺達の他に貴族はいない。

しかし、近衛兵も控えていれば文官達もいる。


リーゼ様についてはエルランド王家も絡むことだから、ここでは込み入った話はできないよな。


なんとか王陛下との謁見は、俺の営業スキルで乗り切ったけど、いつ下手を打つかわからない。


これで俺とリアの役目は終わったわけだから、早く報酬を貰ってレグルスの街に帰りたいよ。

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